ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長)
Text by Mariko OMURA 
[2014.10.10]

オペラ座ダンサーインタビュー ジェルマン・ルーヴェ

Germain Louvet ジェルマン・ルーヴェ(コリフェ)
昨年のコンクールの結果、カドリーユからコリフェに昇級したジェルマン。その直前にはセ・ウン・パークと共にカルポー賞を受賞し、将来が楽しみな若手ダンサーの一人として注目されている。まだコリフェながら大抜擢され、この年末に『くるみ割り人形』の主役ドッセルマイヤーを初役で踊る。相手のクララ役は待望の若手レオノール・ボーラック。フレッシュな舞台となるだろう。

ジェルマン・ルーヴェは『天井桟敷の人々』のツアーで昨春、初来日。ファッションに興味がある若者らしく、東京の表参道での買い物や、原宿・竹下通りのブティック巡りを楽しんだそうだ。整った目鼻立ち、細身で長身という恵まれた容貌の持ち主。テクニック的にも優れ、豊かな音楽性を感じさせ、かつ手足の先まで神経の行き届いたダンスは観客の目にとても快適である。学校公演『コッペリア』でも主役として達者な演技も見せた彼。年末の大役を機に、今後の大いなる羽ばたきを期待したい。

pari1410b_08.jpg 2013年にカルポー賞を受賞
photo Michel Lidvac

Q:オペラ座の今期初の公演の1つである『エチュード』では、スジェのダンサーと共に舞台上で大活躍でしたね。

A:ヤニック・ビタンクールが怪我で降板し、彼の分も踊ることになったので毎晩舞台で踊る結果となりました。

Q:おかげで『エチュード』では、あなたの体が 空に向かって真っすぐと上がる美しいソーを見ることが出来ました。この作品は気に入りましたか。

A:はい。これは僕たちのクラシックのクラスレッスンを舞台上でそのまま見せる、といった感じで、かなり珍しいバレエですよね。スタジオで僕たちが膨大な時間をかけてしていることを舞台上でできるって、快適なことでした。といっても、ストレスを感じさせる舞台だったことは否定しませんよ。シャツにタイツという衣装ですから技術面でごまかしようがなく、それに背景もなく、振付、テクニックを見せるという作品です。グラン・ソーやトゥール・アン・レール・・・音楽もストレスをかきたてるタイプといえます。なんというか、とても堅苦しいタイプです。荘重だったけど、力強いので、同時に士気を高めるタイプ。これまで踊った作品と比べて難しかったのは、 音楽のカウント、位置を守る、という点で男性のコール・ド・バレエに正確さを要求するものだったから。女性のコール・ド・バレエは『白鳥の湖』や『ラ・バヤデール』などで、列をなすことに慣れてるけど、男性コール・ド・バレエはというと、ラインを意識することなく、グループとなって流れるように踊ることが多くって・・・。

Q:公演日によっては、パ・ド・トロワも踊っていましたね。ストレスがありましたか。

A:はい。この部分はシリル・ミティリアンが第一配役で、僕が第二。彼と交互に踊りました。グランバットマン、プチソーを見せるというものです。でも、ユーゴ・マルシャンと交互で踊るパートの方でも、ブリゼ・ヴォレなどあって、けっこうドキドキしましたよ。それに先頭となって舞台にでてゆくので・・・。

Q:テクニック的に何が得意といえますか。

A:テクニックで語るとすると、特にこれといったスペシャリティは僕にはありません。でもすべてにおいて、十分にこなしていると思っています。フランソワ・アリュのようにたくさんピルエットができるわけでも、マチアス・エマンのように高く跳べるわけでもありません。僕のクオリティ、それは正確さやしなやかです。

Q:舞台上で踊るのをみて、足首が強靭なダンサーだという印象を受けました。

A:強い足首を持つことは、とても大切ですね。揺るぎなく踊ることの基本です。それによって、ソーからソーが可能になります。また男性がピルエットをする際にドゥミ・ポワントの支えとなるのですから。足首が強くないと、すぐに捻挫してしまいます。

pari1410b_01.jpg 昨年のコンクールから
Photo Sébastien Mathé / Opéra national de Paris

Q:入団からこれまで3年間、怪我で降板したことはありましたか。

A:幸いなことにゼロ!なんです。ずっとこうあって欲しいです。

Q:それは日常生活で気をつけているおかげですか。

A:正しい生活を送っていると、言えますね。それほどタバコも吸わないし、アルコールも飲まないし。どちらも、仲間うちの集まりでたしなむ程度。怪我がないのは、おそらく正しい仕事の仕方をしているおかげだと思います。正しい方向で仕事をしていると体を乱暴に扱うことがないので、怪我がないのでしょう。ずっとこれが続いて欲しいです。

Q :『エチュード』以前にも、コール・ド・バレエを離れて少人数で踊る機会に恵まれた作品がありましたか。

A:公演数という点で、『エチュード』ほど数をこなした作品はこれまで他にないですね。この3年間、僕が他にどういった興味深い作品があったかというと・・・キャロリーヌ・カールソンの『シーニュ』です。これも、ほぼ毎晩バスチーユの舞台にたっていました。この公演には、僕、とても満足しているんです、というのもキャロリーヌが僕を選んでくれたからです。これはちょっと微妙なことなんだけど、他に予定されていたダンサーではなく僕に交替を、って彼女が希望してくれて。まだ僕、代役がほとんどのカドリーユの時代だったので・・・。

Q:2011年の学校公演では『コッペリア』の主役を踊っていますね。

A:はい、それは最終年の公演です。その前の年、第2ディヴィジョンの時の公演ではモーリス・ベジャールの『ダンス・グレック』で、キャロリーヌ・オスモンと素足のパ・ド・ドゥを踊りました。

Q :『コッペリア』の配役を知ったとき、どのような気持ちでしたか。

A:特に期待してなかっただけに、うれしかったですよ。その年の第1ディヴィジョンには、3人の留年生がいたんです。で、彼らのほうが僕より経験があるわけなので、彼らが踊るんだろうって思っていました。そうしたら12月になって、エリザベット・プラテル学校長から、マチュー・カンタ、ユーゴ・マルシャン、そして僕がフランツに選ばれたと聞かされました。でもまだその時点では、誰が代役なのかは不明。その後ピエール・ラコットが学校に来て、僕が第一配役、そしてマチュー・カンタが第二配役に決まりました。ユーゴは代役に・・・。

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バレエ学校公演『コッペリア』より Photos David Elofer/ Opéra national de Paris

Q:学校公演でも、代役が用意されるものなのですね。

A:僕たちの人生、代役というのは常についてまわります。プルミエ・ダンスールでも、主役の代役をしますからね。エトワールになるまで、ずっと代役という仕事があるんです。例えば10月のカナダツアーの『パキータ』。アルチュール(注/ピエール・アルチュール改め)・ラヴォーとオードリック・ブザールが主人公リュシアンの代役なんですよ。二人ともプルミエ・ダンスールです。もちろん、イニゴ役、パ・ド・トロワなども彼らは踊りますけど。

Q :『パキータ』は作品としてあなたに似合いそうなのに、このツアーには参加しないのですね。

A : 実は参加することになってたんですよ。でもこの年末の『くるみ割り人形』に僕は配役されたので・・・。『パキータ』の男性コール・ド・バレエは大勢いるので、僕はツアーに出ないことになりました。他のダンサーたちのカナダ・ツアー中に、僕は先にドロッセルマイヤー役の準備に入る、というわけです。

pari1410b_02.jpg 昨年のコンクールから
Photo Sébastien Mathé / Opéra national de Paris

Q :『くるみ割り人形』の配役が発表された時、ドロッセルマイヤー役でのあなたの出演日程が決定されているのを見て、正直驚きました。

A:そうですよね。僕だって驚いたくらいなんだから!(笑)。公演があるなんて、僕も全然知らなかったんですよ。どのようだったかというと、まず、メートル・ド・バレエのクロチルド・ヴァイエから、僕がカナダ・ツアーから外れたと伝えられたんです。理由がわからず、がっかりして、「じゃあ3週間、僕は何も仕事をしないの ?」と聞いたんです。そうしたら、「とんでもない、たっぷり仕事することになってるわ、『くるみ割り人形』があるから」っていう返事が来ました。それで僕は代役なんだ、とその時、思ったわけです。代役だってすごくうれしくって・・・。で、その翌週にインターネットで僕が配役されてるのを見て、びっくり。衝撃を受けたというわけです。

Q:この抜擢に恐れを感じたりしましたか。

A:ほんの少しだけ。でも、これにはすごく満足してます。少しぐらい怖いのは当然でしょう。公演がある以上、そうしたことは忘れて舞台を準備します。僕はドロッセルマイヤー役で2日舞台に立ちますが、同時に他のダンサーのドッセルマイヤーの代役でもあります。

Q:クラシック作品に配されることが多い ように感じます。

A:男性ダンサーの場合、若くって快調なうちは主にクラシックを踊ることになりますね。でも、僕、コンテンポラリー作品、大好きなんですよ。それは後にとっておいて、今は肉体的にクラシックが正しく踊れることを楽しんでいます。過去オペラ座では、さっき話した『シーニュ』だけでなく、サッシャ・ヴァルツの『ロメオとジュリエット』でもコンテンポラリーを踊っています。

Q:プリンス的ルックスですが、王子役を踊ることに興味はありますか。

A:もちろん!まず今回『くるみ割り人形』を踊れることになったけど、興味あるのは『白鳥の湖』のジークフリート役、それから『ジゼル』のアルブレヒト役です。アルブレヒト役は男性ダンサーにとって、美しい役の1つですね。2幕の作品ながら、アーティスティックな面でとても素晴らしい役といえます。実は今年の夏に、マリオン・バルボーとモスクワで『ジゼル』の全幕を踊ったんですよ。ボリショイ劇場と同じ広場にある、 800席くらいの小さな劇場で。 モスクワのクラシック・バレエのカンパニーと一緒で、振付はオペラ座の『ジゼル』とほぼ同じでした。

Q:アルブレヒト役の何に特に惹かれるのでしょうか。

A:これはいろいろ混じり合った豊かな役です。コミックな面も最初ありますね、ジゼルを誘惑するところで。それから悲劇。彼女の死に、彼は自分に対し、ヒラリオンに対して怒りを覚えますね。そして愛。彼は彼女が死んで初めて、自分が彼女を本当に愛していたのだと気がつきます。この感情面についての役の深さ。そしてダンスという点でも、あらゆるテクニックが必要とされ、特に第二幕のソロは本当に美しい。この作品は時代を超越したものだ思ってます。とても今日的といってもいい。狂ったジゼルが髪をほどくシーンなど、まるでコンテンポラリー作品のよう。

Q:オペラ座で今後『ジゼル』のようなクラシック作品は、芸術監督が変わることで、どうなるのでしょう。

A:10月4日にブリジット・ルフェーヴル芸術監督のアデュー公演が開催されました。とても感動的でした。ぼくは2011年の入団なので、それほど彼女と多く接触があったわけではないけれど、改めて思ったんです。この女性は、どれほどオペラ座内で時間をすごし、オペラ座のために心を砕いていたのかと。彼女は実に多くのことをオペラ座にもたらしました。彼女がここを去るというのは、まるで誰かの身体から心臓をもぎ取ってしまう、というくらいの感じがあります。でも、同時に、彼女にとっても、オペラ座にとっても、こうした変化は必要なのだとも思います。ページをめくるというか・・・20年のページ。僕は今21歳です。彼女がここで始めたとき、僕、まだたった1歳だったと思うと、奇妙な感じ。彼女とはとても良い関係にあったといえます。ごくわずかですが、彼女と差し向かいで話す機会もありました。とても知的な女性で、あらゆることに目を向けていて・・・。新監督となってもクラシック作品について、僕は何も変わらない、と思ってますよ。オペラ座は300年の歴史があって、そこにアメリカから若いディレクターがきたといっても、この歴史あるメゾンは揺るぐことがない。クラシック・バレエはカンパニーのパワーなのですから。彼だってキープしてゆきたいと思ってるはずです。

Q:バンジャマン・ミルピエ新監督に何を期待してますか。

A:バンジャマンはフレッシュな何かをオペラ座にもたらす、と信じています。彼はカンパニーの機能や管理という点に、アメリカ的アイディアをもちこみます。これによって、より仕事が効果的となり、より物事がスピーディに進むようになる、と期待しています。効率の高さが期待できます。そして、彼はオペラ座にグラマラスな華やぎをもたらすだろう、とも思っています。フランス人の彼はアメリカで成功をおさめ、世界的にも有名。 若く、ダイナミックでモダーンなディレクターというイメージが彼にはあります。彼自身ハンサムな上に、女優ナタリー・ポートマンと結婚していて、という・・・華やぎがありますね。

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2014年に開催された「若きダンサーたち」の公演「カリギュラ」より
(カリギュラはアレクサンドル・ガス、リュンヌはレティティア・ガロニ)
Photos Benoîte Fanton / Opéra national de Paris

Q:出身地のボルドー地方でダンスを習い始めたのですね。

A:いえ、ボルドーではなくブルゴーニュです。どちらもワインの地ですけど・・。バレエを始めたのはとても早くって、4歳でした。なぜなのか説明はできないのだけど、とにかくダンス好きで、音楽が聞こえると踊りたくなって・・・異常にアクティブな子どもだったんで、 エネルギーを発散させる方法となりました。

Q:家族、親戚にダンサーがいたのですか。

A:いいえ、全然。スポーツをよくする家族ではあるけど・・。父は農業関連、母はエステティシャンです。4歳のときに両親に頼んで、ダンス教室にいれてもらいました。この年齢ですからクラシックではなくモダンジャズのクラス。といっても、要するに身体能力の目覚めのダンスです。これが、すごく気に入って、3年続けました。そこの先生が、僕は地元のコンセルヴァトワールに行くのがいいだろうといって・・。車で20分ぐらいの場所でしたけど、クラシック・バレエを習い始めました。7歳のときです。5年の間、費やす時間もどんどんと増やしてって..。それで11歳のときに、先生が両親に、僕にはオペラ座の学校に入れるクオリティが備わってるので、パリに行かせる気があるなら、と言って。それでオペラ座のバレエ学校のオーディションを受けて、12歳で入学したんです。

Q:両親の元を離れ、遠いパリに行くことに不安はありましたか。

A:それがおかしなことに、全然! 僕、独立心旺盛な質で、両親、兄弟、学校の仲間たちから離れることに満足してました。オペラ座学校では、最初の第6ディジヴジョンから始め、飛び級も落第もなく、6年を過ごしました。

Q:昨年コリフェに同時昇級したユーゴ・マルシャンと仲がいいですね。

A:はい。彼はぼくより2年後に、第5ディヴィジョンから始めました。第4のとき、彼は飛び級をして、僕と同じ第3ディヴィジョンになって、その後ずっと一緒のコースを歩んでいるわけです。昨年、二人揃ってカドリーユからコリフェに上がり・・・。僕たちは友だちなので、たとえ、どちらかが上がらなかったにしても、問題はなかったと思うけど、でも、一緒に昇級することが出来たのは気持ちいいことです。

Q:二人の間には、少しばかりの競争心もありますか。

A:まず友情があります。そしてほんの少しのライヴァル意識も確かにあります。でも、そのライヴァル意識というのは、とても昔からのもの。何しろ長いことの知り合いなので・・・。ユーゴだけでなく、マチュー(・カンタ)、ジェレミー・ルー(・ケール)、フロラン(・メラック)が僕と同世代。フランソワ(・アリュ)もクラスは同じではなかったけど、同じ 1993年生まれです。こうした仲間たちとの間には少しばかりの競争心があっても、それも友情の一部となっています。だから競争心が友情の邪魔になる、ということにならないのです。逆に、その競争心がより友情を深める、とも言えますね。それに相手を潰そうというようなものではなく、ポジティブな競争心。それぞれが自分のベストを尽くそうとしているだけなんです。だから僕たち彼らと同時に入団できて、とてもうれしく思っています。互いを比較することはあっても・・・どういったらいいのだろう、互いに力を与え合ってるという感じかな。

Q:次のコンクールが二ヵ月後に控えています。自由曲は何を考えてますか。

A:まだアイディアの段階だけど、『チャコフスキー・パ・ド・ドゥ』。これはダイナミック、スピーディ、そして視覚的効果も強い。去年ユーゴが選んだものです。これでなければ、タイプがまったく異なるけど、『白鳥の湖』のスローなヴァリアシオン...。

Q:いずれにしてもクラシック作品から、ということですね。

A:はい。というのも、今シーズンは『エチュード』に始まり、その後が『くるみ割人形』のプリンスというように、ずっとクラシック作品に配されてるので。


Q:今シーズン、来年に入ってから何に配されるかすでに決まってますか。

A:いいえ、何も。エドゥワール・ロックの『アンドレオリア』のオーディションを受けたところですけど、結果はどうなるか・・。これを踊れたら、嬉しいですね。そうでなければ、ノイマイヤーの『大地の歌』のほうでしょう。これもいい。ただ、クリエーションなので、これ、リハーサル期間がすごく長いです。

Q:過去に何かクリエーションに参加していますか。

A:バンジャマン・ミルピエ振付の『ダフニスとクロエ』。これが初のクリエーション参加です。踊るのがとても体に快適な振付でした。音楽も素晴らしかったし・・。

pari1410b_07.jpg JRのプロジェクト より

Q:最近フランスの雑誌に、アーチストのJRがオペラ座の屋根の上で40名のダンサーを撮影した写真が掲載されました。この中の一人ですね。

A:はい。このプロジェクトはJR(注・アメリカで活動するフランス人アーチスト)からブリューノ・ブーシェに「40名のダンサーでフィルム撮影ができないだろうか」という問い合わせがあったのが、きっかけなんです。男性20名、女性20名のダンサーです。暴動があったパリの郊外を舞台に、単なるドキュメンタリーではなく、芸術的なフィルムを彼は作りたいと。JRはNYCBのピーター・マルチンとコラボレーションで3分のバレエをつくっていて、この暴動についても、すでにその中で語っています。彼はこのバレエをフィルムに盛り込みたいけど、でもNYCBのダンサー40名をそのためにパリに来させることはできない・・それでオペラ座のダンサーに声がかかったわけです。僕たち参加した40名は暴動が実際にあったパリの郊外でアカデミックな衣裳をつけて、映画の撮影をしたんです。本物の撮影クルーと仕事をすることもできて、とても興味深い経験ができました。

Q:オペラ座の屋根の上での撮影も、そのフィルムと関係があるのですね。

A:郊外の撮影と同じ衣裳をつけて、フィガロ・マダム誌用に写真撮影が行われたんです。ダンサーが横並びをすると、人間の眼ができあがる水玉の衣裳です。この写真は彼のフィルムの一種のプロモーションというか・・・。JRのプロジェクトについて広く知らせる、という意味のある雑誌掲載でした。

Q:こうしたプロジェクトの他の予定はありますか。

A:これは多くの出会いがあって、僕には貴重な体験となりました。とりわけJRと知り合ったのは素晴らしいこと。ダンス以外のアーチスティックな世界で何が今起きているのかという好奇心がかきたてられる、良いきっかけとなりました。これまではこの種のプロジェクトは外部からものでしたけど、おそらくバンジャマン・ミルピエが来ることで、今後はオペラ座側から生まれるのではないか、と思っています。彼はこうしたアーティスティクなプロジェクトに重要性をおきたい、と考えてるような気がしています。

Q:ダンサーでなかったら、どのような職業が考えられますか。

A:いろいろあります。そのための研修などを受けることで、本当に好きかどうかがわかるというものです。例えば、弁護士。その仕事に興味あるけれど、法律の勉強が好きかどうか・・。スポーツマンやダンサーのためのオステオパシーやキネジプラティックといった身体に関わる仕事も興味があります。でも、もしもダンサーじゃなかったら、と考えた時に、一番僕が気になる仕事は舞台評論家です。書く事が好きなんです。学校時代もフランス語はかなり良い成績でした。だからそれを深めて、ダンス、音楽、演劇について書けるようになればと思っています。

Q:それは42歳以降の仕事にできますね。それに向けて、今からでも徐々に進めることができるのではないでしょうか。


A:そうですね、試してみなければ。42歳以降、自分がダンス関係を続けているというようには思ってないのです。ダンス以外のこと、といってももちろんダンスとは何らかの関連はあると思うけど.... 。でも、目下はダンスや、キャリアのことなどで頭がいっぱい。30歳、35歳となったら、美術史を学んだりとか、何か学ぼうと考えていますね。シアンス・ポ校に通うとか。

Q:それについては、セバスチャン・ベルトーの良い例がありますね。


A:そうです。いったい彼がどのようにして5年間も通えることができたのか・・・彼なりの方法を打ち立てたのでしょうね、きっと。すごいことに、学校に通っている最中に、スジェにあがっています。今、僕にはこうした両立はとても無理です。

Q:目指すはエトワールですね。


A:はい、もちろんです。でも正確にいうと、僕がキャリアの中で求めているのは、自分が好きなことをし、その仕事において幸福感を味わうこと。僕はダンスという、難しく、身体を疲労させる仕事を選んだですから、舞台上での歓びがあることがまず大切です。エトワールになるというのは頭の中においた目標の1つ。その目標をもつことによって、舞台上で幸福であることができるのだと思います。もちろん、すでに幸せだけど、さらにもっと幸せを感じられるという・・。もし、上にあがれず、コリフェあるはスジェの肩書きで良いキャリアを築け、気に入った役が踊れるのであれば、僕にはそれでもいいのです。そうでなければ迷わずオペラ座を去るでしょう。他のカンパニーに行って、コンテンポラリーな作品を踊ったり、気に入る物が踊れたり、より身体的に自由を感じられるものとか・・・。でも、今のところ、自分の人生はここオペラ座にある、と思っています。

<10のショート・ショート>
1.  本日の朝食:トーストしたバゲット。バターと両親の庭でなったフルーツのジャムとともに。カフェ、オレンジジュース。
2.  好きな香り: 今つけている香水は、セルジュ・ルタンスのFive o’clock au gingembre。
3.  今聞いてる音楽:フィリップ・グラスや、最近発見した昔の歌手ペトゥラ・クラークなども含め、ジャンル様々。
4.  趣味 :映画。
5.  最近見た映画 :『サン・ローラン』。グザヴィエ・ドランの『モミー』。この監督の大ファン。
6  .コレクションしているもの:心の中に種々の思い出をコレクション。
7 . 今年のバカンス : 野生の自然が残り海岸がきれいなイビザ島で、8人の友だちとプールつきの家を10日間レンタル。その後は、ビアリッツに近い大西洋側のブルトン岬で。
8 . 舞台に上がる直前にする儀式:特になし。何かを習慣的にすることで、それに捕われることになるのは嫌。ヘアスタイル、コスチュームがちゃんとした状態かを確認するだけ。そして深呼吸。
9 . 性格の特徴的な点:好奇心旺盛、外向的、ポジティブ、楽観的。怒ったりせず、ネガティブにならず、物事をポジティブにみられるように努めている。
10. 涙を流すことはあるか:なし。もしあるとしたら、悲しみではなく感動や歓びの涙。