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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2013.11.11]

アルゼンチン・タンゴの黄金時代を再現した「シャントクレール・タンゴ」

Théâtre du Châtelet シャトレ歌劇場
Mora Godoy "Chantecler Tango" モラ・ゴドイ振付『シャントクレール・タンゴ』

舞台が開くと古ぼけた建物の外観が見える。早朝のブエノス・アイレス。人々が行き交っている通りに面したこの建物には1924年から1957年に閉鎖するまでキャバレー「シャントクレール」があった。元のキャバレーは売りに出され、不動産屋と買い手が建物の内部を見て回る。かつてキャバレーが華やかなりしころ「キューバのプリンス」と呼ばれたショーの立役者で、今は建物の警備員になっているアンジェルが一人もの想いにふけっていると、時代がタイムスリップし、突然それまで人気のなかった空間にキャバレーの従業員やお客たちが姿を現す。

pqri1311c01.jpg (C) Federiko DeBartolo
(この記事当日公演の写真ではありません)

コントラバス、ピアノ、ヴァイオリン、バンドネオンという4つの楽器が舞台左上のバルコニーで演奏する現代タンゴ(ゲラルド・ガルデラン作曲)と「リズム王」と呼ばれたフアン・ダリエンツォの当時のタンゴが録音で流れる。24人のダンサーが実業家、与太者、警官、娼婦に扮し、麻薬の取引、トランプ賭博、売春、恋の鞘当がマイムとタンゴだけで演じられる。舞台装置はアール・デコの内装を想起させる洒落たものだ。長いダンサーたちの脚がフロアを滑り、リズミカルで時には激しい腕や全身の動きが周囲に熱気を放つ。
このレヴューはアルゼンチンのタンゴ・ダンサーで振付家のモラ・ゴドイが考案し、振付けた。モラ・ゴドイは今や90歳代になった「シャントクレール」の親族に直接会って思い出話を聞き出し、盛期には120人の従業員が働き、最高級のフランス料理が出され、戦後の「パリ祭」を祝った。日本のように毎年7月14日に「マルセイエーズ」を演奏して特別のパーティーを開いていたキャバレーの夜を見事に再現したのだ。
パリ公演でモラ・ゴドイはキャバレーの女主人でメインのダンサーだったリタナを演じ、伸びやかな肢体とむせ返るような色香、妖艶な視線で観客の目を釘付けにした。アンジェルと「キューバのプリンス」の二役を演じたホラシオ・ゴドイとのデュエットは実にしなやかかつ切れ味がよく、アルゼンチンタンゴの魅力を余すことなく見せてくれた。
(2013年10月13日 シャトレ歌劇場)

『シャントクレール・タンゴ』2幕11場(ヨーロッパ初演、世界初演2012年ブエノスアイレス)
コンセプト・振付/モラ・ゴドイ
筋書き/モラ・ゴドイ、ステファン・レーヌ(演出)
オリジナル音楽/ゲラルド・ガルデラン
装置/ジュリエッタ・アスカール
衣装/チェチリア・モンティ
照明/クリスチャン・タテオシアン
配役
リタナ=モラ・ゴドイ
アンジェル/キューバのプリンス=ホラシオ・ゴドイ
アマドール=マルコス・アヤラ
ロランド=ロドリゲス・メンデス
サルヴァドール=アリエル・ペレス