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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2012.11.12]

ポリーナ・セミオノワ、ラスタ・トーマスが際立った「21世紀のエトワール・ガラ」

Théâtre des Champs-Elysées シャンゼリゼ歌劇場
Gala des Etoiles du XXIème siècle 「21世紀のエトワールガラ」

シャンゼリゼ歌劇場の第15回「21世紀のエトワールガラ」がシーズン明けに開催された。
世界の檜舞台で活躍するエトワールたちが、わずか三日間だけ一堂に会するガラだが、参加者の顔ぶれが変わるとともに公演の雰囲気もがらりと変わってしまう。
一つ一つの出し物は長くても10分は超えないだけに、きわめて短い時間で観客に印象を与えることが求められる。また、前後に粒ぞろいのダンサーが登場するから、それなりに優れた踊りでは周囲の輝きによって埋没してしまう。好き嫌いは別として圧倒的な拍手を観客から集めたのはラスタ・トーマスだった。
舞台に姿を現しただけで、その周囲にエネルギーが立ち込める。前半は有名なリムスキー・コルサコフの『熊蜂の飛行』の音楽をバックに蜂に追いかけられる男を演じ、文字通り舞台を飛び回って、そのコミカルな所作で笑いと誘うとともに、見事な跳躍を見せた。
後半の『Love The Way You Lie』は、振付家で私生活でもパートナーのアドリエンヌ・カンテルナが直前になって渡仏できなくなり、パ・ド・ドゥがソロになってしまったが、それでも平然と圧倒的な身体能力を見せ付け、独自のショーマンシップを発揮した。「ありふれていて、表面的なショーに過ぎない」という批判もあったが、身体一つで圧倒的な存在感を示せればダンサーとして成功したことは間違いない。
フランドル王立バレエ団の齊藤亜紀、ヴィム・ファンレッセンのカップルは息がよく合い、特に後半の『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴィテッド』でフォーサイス振付ならではの危ういバランスの妙がくっきりと浮かび上がった。
技術的な完成度と表現力、それに気品が加わったカップルとしてはハンブルク・バレエ団のエレーヌ・ブーシェとティアゴ・ボルダンの二人が挙げられる。ノイマイヤーの『Illusions-like Swan Lake』から、白鳥が跪いた王子の懇願を振り切って去って行く場面は秘められた哀しみがあたりにさっと広がった。誰もがこの作品をぜひこの二人で通して見てみたいと思ったろう。
かつてパリ・オペラ座バレエ学校にいたファブリス・カルメルズは長身でダイナミックな踊りを見せ、小柄な艶やかさそのもののヴィクトリア・ジャイアニ(グルジア出身)と男女の情感が濃厚に感じられるカップルを構成して、観客の目を放させなかった。この男性がパリに残っていたら、という思いが念頭を掠めた。
最後になったが、当夜の花は予想通りポーリナ・セミオノワだった。きりっとした身体と高雅な立ち振る舞い、そして折々ほおをかすめる微笑はエトワールの中のエトワールだろう。
(2012年9月21日 シャンゼリゼ歌劇場)

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9月21日と23日公演のプログラムは以下の通りだった。
1『Les Ames Frères』音楽/アート・ゾイド、振付/ジュリアン・ラステル、
ダンサー/ジュリアン・ラステル、ジル・ポルト(ジュリアン・ラステル・バレエ団)
2『ソナタ第5番』音楽/ヨハン・セバスチャン・バッハ、振付/モーリス・ベジャール ダンサー/齊藤亜紀、ヴィム・ファンレッセン(フランドル王立バレエ団)
3『Age of Innocence』音楽/フィリップ・グラス、トーマス・ニューマン、振付/エドワード・リアング、ダンサー/ヴィクトリア・ジャイアニ、ファブリス・カルメルズ、ジェフリーバレエ団
4『Bumble Bee—ソロ』音楽/リムスキー・コルサコフ、振付/ミルトン・ミヤーズ、ウラディミール・アンゲロフ、ダンサー/ラスタ・トーマス
5「アダージェット『第5交響曲』から」、音楽/グスタフ・マーラー、振付/ジョン・ノイマイヤー、ダンサー/エレーヌ・ブーシェ、ティアゴ・ボルダン(ハンブルク・バレエ団)
6『海賊』パド・ドゥ 音楽/リッカルド・ドリーゴ、振付/マリウス・プティパ、ダンサー/ポーリナ・セミオノワ(アメリカン・バレエ・シアター)ディミトリ・セミオノフ(ベルリン歌劇場バレエ団)
<休憩> 
1『Sacrifice』(世界初演)音楽/ストラヴィンスキー、振付/ジェイソン・ジャナス、ジュマーン・テイラー 、ダンサー/ジェイソン・ジャナス、ジュマーン・テイラー (ニューヨーク・タップスターズ) 
2『Méditation  』パ・ド・ドゥ『 Illusions-like Swan Lake』より 音楽/チャイコフスキー、振付/ジョン・ノイマイヤー、ダンサー/エレーヌ・ブーシェ、ティアゴ・ボルダン (ハンブルク・バレエ団)
3『Alles Walzer』ソロ 音楽/ヨハン・シュトラウス、振付/レナート・ツァネラ、ダンサー/ポーリナ・セミオノワ(アメリカン・バレエ・シアター)
4『After the Rain』 音楽/アルヴォ・ペルト、振付/クリストファー・ウィールドン、ダンサー/ヴィクトリア・ジャイアニ、ファブリス・カルメルズ、ジェフリー・バレエ団
5『Love The Way You Lie』パ・ド・ドゥ(世界初演)音楽/エミネム・リアナ、振付/アドリエンヌ・カンテルナ、ダンサー/ラスタ・トーマス
6『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴェイテッド』音楽/トム・ウィレムス、振付/ウイリアム・フォーサイス、ダンサー/齊藤亜紀、ヴィム・ファンレッセン(フランドル王立バレエ団)
7デフィレ 振付/ナディア・ヴェセォヴァ 全員出演