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大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長)
Text by Mariko OMURA 
[2011.03.10]

オペラ座ダンサー・インタビュー:フローラン・メラック

Florent Mélac フローラン・メラック(カドリーユ)
入団4カ月後、「ダンサー・コレオグラファー」公演で創作を発表

オペラ座バレエ団員として舞台で踊る傍ら、創作活動をするダンサーたちがいる。今年1月19〜21日、バスチーユ・オペラ座の地下ホールで数年ぶりに「ダンサー・コレオグラファー」の公演が開催された。参加者は10名。ブルーノ・ブーシェ、サミュエル・ミュレーズ、ベアトリス・マルテルなど振付けをすることがすでに知られているダンサーたちに混じって、昨年9月に入団した17歳のフローラン・メラックが9分の作品『メランコリア・スプレニカ』を発表した。

pari1103b01.jpg 「ダンサー・コレオグラファー」
公演のプログラムより
Photo Gala Reverdy
/ OPERA NATIONAL DE PARIS

Q:「ダンサー・コレオグラファー」に参加することになった経緯を話してください。
A:ぼくは昨年9月にバレエ団に入りました。そして、この公演のことを知ったんです。でもすでに登録期間は過ぎていて・・ぼくがまだナンテールの学校にいた時代のことですから。でも、どうしても参加したくって、しつこくお願いしたんです。

Q:ブリジット・ルフェーブル監督にですか。
A:はい。すごくラッキーなことに、参加をとりやめた登録者が一人いたので、ぼくにチャンスが回ってきたというわけです。この催しは数年間なかったので、その年に入団できたのは偶然とはいえ幸運でした。

Q:『メランコリア・スプレニカ』の創作にかけられた期間は他の人より短かったのですね。
A:そうですね。ぼくの場合、特に大きな問題は女性ダンサーでした。オペラ座では12月にガルニエとバスチーユで公演がありますから、2つのグループに分かれます。昨年は『白鳥の湖』と「バランシン、ブラウン、バウシュ」。
ぼくの創作にはカップル2組が必要で、男性はジュリアン・メイザンディ(スジェ)とマキシム・トマ(契約ダンサー)で最初から進められました。でも、女性のほうは2グループに分かれていることによるリハーサル・スケジュールの都合で、シルヴィア・クリステル・サン・マルタン(コリフェ)とシャルロット・ランソン(コリフェ)に落ち着くまで時間がかかってしまい、2週間で仕上げなければなりませんでした。

Q:先輩ダンサーに振付けるのは難しいことでしたか。
A:いいえ。でも、シャルロットとはこれが初めての出会いだったので、確かに少し気後れしました。とはいっても最初だけです。ぼくはもともとシャイなのですが、短期間で進めなければならないのでそんなこといってられません。
ジュリアンとシルヴィアの動き方はとても似ていて、体つきも細長いタイプという組み合わせなので、彼らにはよりネオクラシック的な動きにしました。2組のカップルにしたのは、ソロ、パ・ド・ドゥ、パ・ド・トロワを振付けてみたくって。創作の過程でダンサー側からの提案もあって・・・これは素晴らしい経験でした。こうして仕事をするって、実にエキサイティングですね。

pari1103b02.jpg 「メランコリア・スプレニカ」を踊るシャルロット・ランソン(左)とマキシム・トマ
Photo Gala Reverdy/OPERA NATIONAL DE PARIS

Q:その間カドリーユとしての仕事はなかったのですか。
A:とんでもない。『白鳥の湖』もありましたし、2月の公演『カリギュラ』の稽古も始まっているという時期でした。それに3月のパリ郊外でのバレエ学校の公演の仕事もぼくにはあって・・・。朝のクラスレッスンの前に、ダンサーたちとこの作品の仕事を進めました。

Q:音楽にはDeruの"Goobye"、アルヴァ・ノト+坂本龍一の"Moon"を使っていますね。クラシックより現代音楽が好みですか。
A:iPadの中は、今の曲が多いですね。でも動きはいろいろなタイプの音楽で試してみるのが好きなんです。キリアンもモーツァルトとかも使うでしょう。
自分用のちょっとしたソロの創作には、クラブサン(チェンバロ)のバロック音楽を使ってるんですよ。どんな音楽にも興味があります。ぼくにとって音楽と動きは強く結び付いているんです。今回『メランコリア・スプレニカ』では雰囲気の異なる2つの曲を使いましたが、これに至るまで1か月もかかりました。
音楽からインスパイアーされることが多いんです。見る人にとっても、音楽は大切な要素だと信じています。うるさく感じられる音楽だと、振付の価値まで下がってしまうでしょうから。

Q:バレエの世界に入ったきっかけは何ですか。
A:ダンスはコンテンポラリーから始めました。なぜかはわかりませんけど、小さいときからずっとダンスを習いたくって、両親に何度も何度もお願いしたんです。身体を動かすことによって得られるセンセーションが好きだったんでしょう。ぼくは南のオート・ピレネー地方の出身なんですが、両親はぼくをまずジムに入れました。コンテンポラリー・ダンスの教室にはいったのは、8歳のときです。インプロヴィゼーションの先生につきました。彼は創造性を発展させる指導もしてくれて・・。より上を目指すなら、クラシックも学んだほうがいいと、彼に薦められたんです。

Q:なぜオペラ座のバレエ学校を選んだのですか。
A:クラシックを習い始めて、最初はすごく大変でした。あまり面白くないし・・。ある時オペラ座のことを話してくれた人がいて、世界最高の学校であるというので、試してみたくなったんです。自分がそうした場所に受け入れられるかどうか。ビアリッツの研修でニコラ・カヴァランにつき、ぼくがオペラ座バレエ団に入れるように彼女が指導してくれました。

Q:どのような学校時代でしたか。
A:11歳で入学してから、ずっとクラシックばかり・・・それで、14歳のとき、もういい、他のことしたい! 別のところでコンテンポラリーを踊りたい! って。学校を辞めたくなっていたんです。そんな頃、生徒たちに小品を創作してみるようにという授業がありました。2分のものですが作ったところ、クラスの仲間たちがいい! っていってくれて。先生も。こうして励まされて自分の中でバランスをみつけらて、学校を続けられたんです。

Q:2010年12月のガルニエ宮での「学校のデモンストレーション(公開授業)」で、あなたの創作『A corps, essence』を生徒たちが踊りましたね。
A:はい。これは最初にトロントで発表されたものなんですよ。第二部門のときのことです。プラテル校長が生徒たちを集めて説明したんです。トロント・バレエ学校の50周年記念に世界中のバレエ学校の生徒がトロントに集まり、その参加に際して生徒の作品が1つ必要であると、。誰もこれに反応せず。 で、ぼくがこのチャンスに飛びついた、というわけです。これはやらなくっちゃ! と。どれほど大変なことかなんて、想像もせずに(笑)。

pari1103b03.jpg 2010年学校公演「ギリシャの踊り」
Photo David Elofer / OPERA NATIONAL DE PARIS

Q:結果は上手くゆきましたね。
A:はい。7分程度の短いものです。学校の生徒たちはコンテンポラリーの動きには慣れていないので、スタイルはどちらかというとネオ・クラシックです。トロントでは、シュツットガルトのジョン・クランコ・バレエ学校の生徒たちがこの作品を踊ることが契約されました。それで昨年の夏、ぼくはシュツットガルトまで稽古に行ったんですよ。

Q:『メランコリア・スプレニカ』に対しては、どんな反響がありましたか。
A:ぼくの作品を世間がどう見ているか気になって、批評をすこしばかり読みました。流動的、と表現されてたのがうれしかったですね。正にそれを求めてましたから。動きのセンスがオリジナルとも言われ・・・まだ若いので(注・1993年2月21日生まれ)、こうした言葉には勇気づけられますね。ウェイン・マクレガーに似ているという批評もありましたけど、彼の作品は『ジェニュス』をオペラ座で一度みただけなんです。ただ、踊ったダンサーの一人マキシムはマクレガーと3年いっしょに仕事をした経験があるので、彼のソロ部分にそうした影響がみえたのかもしれません。人間の体の美しさを追求するマグレガーの仕事は好きです。でも、彼の身体を責めつけるようなスタイルはぼくの求めているものではありません。もうじき彼は新作の創作があるのでここに来ます。
そのときはぜひリハーサルに立ち会いたいですね。。彼がどのようにクリエートするか、その過程をぜひ見てみたいんです。

Q:好きな振付家は誰ですか。
A:もしもぼくがインスパイアーされるとしたら、キリアンですね。動きがピュアで本当に美しい。感動、感情に満ちています。ぼくは動きが美しければ何時間で眺めていられますが、物語がないとだめ、という人もいるようですね。

Q:ニコラ・ル・リッシュの創作『カリギュラ』のような複数幕のバレエを創ることに興味はありますか。
A:振付だけではなく、衣装、舞台装置・・『カリギュラ』はすべてにおいて素晴らしい作品ですね。ぼくはこれで、ちょっとした役についたんですよ。カリギュラに殺される元老院議員役で毎回舞台にたちました。また、カリギュラの愛馬アンシタチュスの代役にも突然に。というのも、マチアス・エイマンに次いでオドリック・ベザールがこの役を踊ったのですが、彼にとって長い降板後の初舞台なんです。それで急きょぼくが彼の代役となり、5日間で準備しました。でも、こうしたバレエを作ることには、興味がありません。1つのテーマを巡って、という方がぼくには・・・・いや、いや、まだわかりませんね。
デビューしたばかりですから。一番何をしたいのか、自分に快適に感じられるのは何なのか、これからいろいろ試してみたいと思います。

pari1103b04.jpg 「カリギュラ」右から3人目

Q:「ダンサー・コレオグラファー」の公演では、自作を自分で踊るダンサーもいましたね。
A:ぼくは最初から自分で踊ることは考えませんでした。振付家の視点のみで仕事をし、それに集中したいからです。

Q:衣装、照明も『メランコリア・スプレニカ』では自身のアイディアだったのですか。
A:はい。でもぼくは衣装にはあまり重きをおいていません。それに対して踊り手の身体の価値に関わる照明は、とても重要です。あいにく会場となったバスチーユの地下ホールは舞台が半円のフォルムだったので、思い通りというわけにはいきませんでした。正面だけでなく、横の観客からもよく見えるような照明にする必要があって・・妥協策です。フィルターを通した柔らかな光ではなく、フラッシュのように強い光にしました。床からのスポットが背景にダンサーの影を描きだすようにするなど、写真からの影響がぼくの照明には大きいですね。ぼく、写真にはすごく興味があって、自分でもよく撮っています。

Q:なぜ『メランコリア・スプレニカ』と名付けたのですか。
A:ボードレールの引用をインターネットで偶然みつけたんです。美はメランコリーに比べたら俗悪なものであると。それに同感しなくても、この一文は美しいのでこれを発展させたら面白いだろうって思い、そして自分の振付を見直したところ、ぼくが創った動きや雰囲気にこのタイトルはぴったりだ! と。
タイトルを探してこの言葉に行きあたったのではなく、最後になって、本当に偶然に向こうからやってきたんです。

Q:DVDなどで繰り返し見るバレエ作品は何ですか。
A:キリアンの『小さな死』とカールソンの『シーニュ』。スタイルは異なりますが、2つとも素晴らしい。

pari1103b05.jpg フローラン・メラック
Photo/Mariko OMURA


Q:ダンサーとしていつか踊ってみたい作品は何ですか。

A:先の夢ですが、ソリストになったらクラシック作品がいいですね。『白鳥の湖』のプリンスのような人物を演じるのは興味深いことです。役に入り込むということは、ぜひやってみたいです。現在のコール・ド・バレエという立場からすると、コンテンポラリー作品の方がダンサーとしての価値を見せられるのでクラシック作品より望ましいですけど。

Q:学校時代の良い思い出は何ですか。
A:第一部門のときに、まだ学校の生徒でありながら自分の創作を持ってオペラ座の舞台に立てたことです。また学校公演では『光の罠』に配役されましたが、60年近く踊られなかったこの作品に参加できる機会をもらえただけでも光栄に思います。この公演ではベジャールの『ギリシャの踊り』でも舞台にたちました。ぼくは自分の中に閉じこもりがちで踊りもすごく硬かったんですが、リハーサルコーチのミッシェル・ガスカールが、そこから解放してくれたんです。それでぼくは大きく進歩できたと思っています。この作品に自分のオリジナリティを表現したいと思い、やりすぎない程度にですが、自分のコンテンポラリーな面を上手くもちこみました。そのおかげで自分自身だ! という感じが得られ、とても快適に踊れたんです。

Q:今後の予定を教えてください。
A:3月12、13日にパリ郊外の劇場でバレエ学校の外部公演があり、ぼくの『Acoprs,essence』の新しいバージョンで26分の作品が生徒によって踊られます。
そのリハーサルがあるときは極力立ち会うようにしています。でも、ぼくがナンテールの学校までゆかれないときは、ウィルフレッド・ロモリ(男子第4部門の教師)がリハーサルを進めくれています。カドリーユとしての仕事は、今季はこれから『コッペリア』『ロメオとジュリエット』『天井桟敷の人々』です。

<<10のショートショート>>

1. プティペール:いません。プティット・メールもいません。ぼくはいつも同級生の中で頭2つ飛び出しているというように、誰よりも大きかったせいで・・・。
2. 現在の身長:188.5cm
3. 昨日したこと:映画『ブラック・スワン』を見ました。12月に『白鳥の湖』があったので、それより先にみられたらよかったのにと残念に思いました。
4. 大いなる野望:オペラ座のソリストになること。有名なコレオグラファーになること。外国で暮らすこと。入団したてなので今はここで快適にやっています。でも、いつか外国に暮らし、他の文化に触れ、大勢に出会って、自分を豊かにしたいんです。
5. 趣味:写真、音楽。
6. 性格の良い面:わからない・・・フレンドリーということかな。昔は恥ずかしがり屋だったけど、バレエ学校に入ってからダンスのおかげでだいぶオープンになりました。
7. 性格の悪い面:疲れたときなど、ぶつくさ言う傾向があるようです。
8. 今年のバカンス:友達とイタリアへ。車で2週間かけて回る予定です。運転は友達が。ぼくは免許を持っていません。
9. 2009年の東京ツアーの思い出:東京タワーに行くのにどう行ったらいいかわからないときに、通りがかりの人が乗る線や駅の数を教えてくれたうえに、切符まで代わりに買ってくれました。こうした親切な人にあちこちで出会いました。
10. 模範とするエトワールダンサー:ステファン・ビュリヨン。そしてジョゼ・マルチネーズ。彼は定年近いとはいえ、アーチストとしていまだに素晴らしい。そして振付もするので崇拝しています。