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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.04.10]

●賛否両論が巻き起こった、アラン・プラテルの『WOLF』

 ジェラール・モルティエ現オペラ座総監督が以前ディレクターを務めていたドイツのルール地方のフェスティヴァルで、 2003年に初演されたアラン・プラテル演出のスペクタクル『WOLF(『ヴォルフまたはウルフ』が、3月17日から4月5日までガルニエの舞台に登場した。 初演後すでにベルギー、イギリス、オランダ、スイスなどヨーロッパ各地で公演されてきた制作だが(ロンドン便りでもレポートされている。また近々テレビ放映の予定も)、 パリでは賛否両論、終演後は、支持者とおぼしき人々の異様とも思える熱狂的歓声に混じって、強烈なブーイングの声が鳴り響くなど、ちょっとしたスキャンダルを巻き起こした。

 タイトルは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの名前と英語読みした場合の『ウルフ(狼)』をかけ合わせたものだが、プログラムによれば、両者の関係は考えなくてもよろしいということだ。 しかし、舞台を見ていると、関連性が何となくわかってくる。というのは、音楽には、『フィガロの結婚』や『コシ・ファン・トゥッテ』などモーツァルトのオペラや室内楽曲が使われ、 クラングフォーラム・ウィーンの舞台上での生演奏に合わせてインゲラ・ボーリンなど三人の女性歌手が透き通るような美声で歌ったのだが、場末のバラック倉庫のような舞台と、 そこで繰り広げられるとりとめのないパフォーマンスが、モーツァルトのオペラ・アリアを聴くのにふさわしいかどうか、と疑問を投げかけてくるのであった。

 作品には、音楽家たちのほか13人のダンサーとほぼ同じ数の犬が出たり入ったりし、各自の得意技を競うのだが、何のメッセージもなく、 雑然としてただ挑発的としか言いようのない2時間15分は、冗長としか感じられなかった。この舞台を見る楽しみの一つは、オペラ座を去って、 渡り鳥のようにピナ・バウシュやキリアンなど現代振付家のもとで踊っていたラファエル・ドロネの舞台姿を一年ぶりに見ることであった。 無駄のない見事なプロポーションで、ポワントをはいても、奇妙なギャグを披露しても様になってしまう。しかし、彼女はこれで満足なのだろうか。 オペラ座にいれば、ピナでもキリアンでもフォーサイスでも、ドロネの魅力を発揮できる振付家との出会いはいくらでもあったのではないか。 たぐいまれな素晴らしいダンサーであるだけに、今後の動向が気になって仕方がない。