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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.01.10]

●パリ・オペラ座、恒例のコール・ド・バレエ進級試験

 パリ・オペラ座では、年末恒例のコール・ド・バレエの進級試験が12月23日ガルニエで行われた。 今年は、各階級に空席が出たため、カドリ-ユからスジェまでの女性舞踊手39名、男性舞踊手37名が出場、審査は朝8時から夕方6時近くにまでおよんだ。

 昇級結果は次の通り

プルミエール・ダンスーズ エミリー・コゼット(23歳)
プルミエ・ダンスール エマニュエル・ティボー(30歳)
スジェ女性 オーレリア・ベレ (24歳)
スジェ男性 ジュリアン・メザンディ(26歳)
ジョシュア・オファルト(20歳)
フロリアン・マニュネ(23歳)
コリフェ女性 ローラ・エケ(20歳)
アリス・ルナヴァン(24歳)
サラ・コラ・ダヤノヴァ(20歳)
シャルリーヌ・ギーゼンダネル(20歳)
コリフェ男性 ヴァンサン・シャイエ(20歳)
ジャン=フィリップ・デュリー(26歳)
オーレリアン・ウエット(24歳)
セバスチャン・ベルトー(22歳)

 

 エマニュエル・ティボーのプルミエ昇格は、ファンや関係者にとって待ちに待ったニュースだった。 実力は認められながらも、なかなか上に上げてもらえなかった彼は、この10年来、進級試験のたびに、”オペラ座の大きな損失”として熱い視線を集める存在だった。 初めて試験で見たのは91年だったと思うが、その驚くべきばねのある跳躍力と抜群のリズム感に、第二のパトリック・デュポンを見い出した思いで、このときからひそかに”追っかけ”を始めた。 コリフェに上がったこの年も、翌年スジェに上がった際も、彼はいつも圧倒一位だっただが、そのあとが恵まれなかった。 空席がないため、試験が行われなかったり、該当者なしという年が続き、その後は、ペッシュ、パケット、ベランガール、カルボーネ、モローら若手にどんどん抜かれていってしまった。 信じられないことにスジェのクラスに12年間も留められていたのだ。

振り返ってみると、93年にシアラヴォラと踊った『パピヨン』の初々しかったこと。96年にロビンスから選ばれた『 四季』より牧神の役ははまり役で、 97年にモランと踊った『バラの精』での素晴らしい跳躍技は忘れられない。そのほか『ラ・バヤデール』の黄金の像や『眠れる森の美女』の青い鳥、ノイマイヤーの『真夏の夜の夢』のパック、 ラコット版『パキータ』のパ・ド・トロワなどを当たり役としたが、昨年の5月23日、ドロテ・ジルベールをパートナーに踊った『ドン・キホーテ』の大成功で、ティボーの人気と実力は誰もが認めるところとなる。

エマニュエル・ティボー
<アザー・ダンス>


 今回、自由曲では、ロビンスの『アザー・ダンス』を踊ったが、ロビンスはかつてしばしば進級試験に顔を出し、ティボーの才能を認めていたようだ。 ティボーのほかにも『アザー・ダンス』や『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』などロビンスの作品を自由曲に選んだ人が目立ったが、最近の傾向として、ロビンス作品を踊って進級する人の確率が高くなっているような気がする。

 『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』を踊ったジル・イゾアール、『ノートルダム・ド・パリ』のフロロを演じたクリストフ・デュケンヌ、『ライモンダ』のアブデラムに挑戦したヤン・サイズなどの健闘も忘れ難い。


エミリー・コゼット
<黒鳥>のヴァリエーション
 プルミエール・ダンスーズには、ドロテ・ジルベールという大方の予想に反して、 エミリー・コゼット(共に自由曲は『アザー・ダンス』)が上がったが、こういった意外な番狂わせは、これまでにも数多くあった。 むしろ、観客の予想通りになったケースの方が少ないといった方がいいかもしれない。今回は、プルミエールに確実視されていた、2003年度AROP賞受賞で、 アイドル的人気を誇るジルベールと、スジェを目指した、2004年のヴァルナ優勝とAROP賞受賞のマチルド・フルステーという将来のエトワールと目される二人がそろって落とされてしまったが、 これは、10年ほど前にアニエス・ルテステュとギレーヌ・ファルーという傑出した才能がともに落選したケースを思い出させる。 スター不足にも拘わらず、才能の芽を摘むようなことをしていてよいのかどうか、懸念される。

コゼットは、98年のバレエ学校の卒業公演で、バランシンの『夢遊病の女』を踊って以来、敷かれたレールの上を進むように順調なコースを歩んでいる。 バレエ団に入団早々、パリ国際ダンス・コンクールに出場、ジュニア部門で優勝しているし、99年の<若手舞踊手たち>では、ジャン=ギヨーム・バールの作品に、彼のパートナーとして出演、 2000年にコリフェ、翌年スジェになるなど昇格も早かった。今シーズンは、開幕にロビンスの『グラス・ピーシズ』に出演し進境を見せ、『眠れる森の美女』では、妖精の第6ヴァリエーションや宝石の踊りに抜てきされた。 大柄で、今のところ現代作品での印象の方が強いので、パートナーと役柄が限られる心配があるのだが、まだ若いので、今後の成長に期待したい。


 新スジェには、女性では、『グラン・パ・クラシック』を鮮やかに踊ったフルステーを押さえて、ベレが上がったが、7月の『ラ・シルフィード』でエフィを演じた時は好感がもたれた。 男性では、メザンディ、オファルト、マニュネの昇格はいずれも順当な結果。とりわけ、バレエ学校時代から逸材ぶりが注目されていたメザンディのスジェ昇進はうれしい。

 新コリフェは、男女ともほぼ納得の行く結果となった。ギエムに面影が似ていると言われるローラ・エケは、規定の『パキータ』のヴァリエーションを6番目に踊り、 それまで全員がミスをした最後の回転の部分を完璧にこなしたため、禁止のはずが、客席から拍手が起こってしまった。 アリス・ルナヴァンも、長年地道に努力してきた人だが、イレールと『メディアの夢』を共演して以来、自信がついたのか好調。笑顔の印象的な実力派サラ・コラ・ダヤノヴァや、 いつもセンスのよい踊りを見せるシャルリーヌ・ギーゼンダネルが上がったので、これからの活躍が楽しみ。 男性では、ジルベール、コルドリエらと学校時代の同期で、以前からベジャールやノイマイヤー作品を踊ってカリスマ的魅力を感じさせたセバスチャン・ベルトーが、今回バランシンの『アゴン』で昇格を果たしたのが特筆される。