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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2004.06.10]

●ジローの初主演でマッツ・エックの『ジゼル』

  オペラ座でマッツ・エック振付の『ジゼル』が初演されたのは、93年のことだった。初演の配役は、ジゼルにマリ=クロード・ピエトラガラ、アルブレヒトに 当時まだ第一舞踊手だったニコラ・ル・リッシュ、ヒラリオンに同じく第一舞踊手のジョゼ・マルティネズという組み合わせで、その時の鮮烈な印象は今でも忘 れがたい(交替はモニク・ルディエール、カデール・ベラルビ、パトリック・デュポンのエトワール・トリオだった)。それから96、98、2001年と再演 を重ね、今回3年ぶりの再演となった。公演は5月18日から6月1日までガルニエで。

ジゼルは、初挑戦のマリ=アニエス・ジローとこの役にはすでに定評あるセリーヌ・タロン、アルブレヒトはル・リッシュとカデール・ベラルビ、マニュエ ル・ルグリの各交替で、ヒラリオンは、ロモリのけがのため、マルティネズが全日踊るという変則的キャスティング。タロンもけがのため、後半ルグリのアルブ レヒトと共演しただけだったため、見られなかったのが心残り。

この作品は、これまで何回も見ているにもかかわらず、初めて見るような新鮮な味わいがあった。まず、コール・ド・バレエは、完全にマッツ・エックの世界 に溶け込んでいるのだが、ダンサーたちの一つの動きもおろそかにしない真摯な取り組みが、作品に新たなエネルギーをもたらしているようだった。ル・リッ シュとマルティネズも、初演以来踊りこんでいる自分の役柄に、新しいニュアンスを加えそれぞれ素晴らしかったが、今回ここにジローという新しいジゼルが登 場するにおよんで、作品がさらに生まれ変わったようだった。ジローのジゼルは、これまで見たどのジゼルとも異なる役作りで、可憐でもなく、正気を失ってい るといった風でもない。どちらかというと、現代女性を象徴するように、知的で自由を求めるたくましい女性のイメージである。そのため、1幕よりも精神病院 のシーンになってからの踊りが、無限の広がりを感じさせ、ジローのダイナミックな魅力が生きていたように思う。ル・リッシュ、マルティネズというスケール の大きな共演者に囲まれたのも相性のよさを感じさせた。コンテンポラー中心の傾向が強い9月からの新シーズンに向けて、新エトワール、ジローの活躍に大き な期待を抱かせた舞台だった。

<ジゼル>第2幕より
マリ=アニエス・ジロー

<ジゼル>第2幕より
ジロー、ル・リッシュ

<ジゼル>第2幕より
ジロー、ル・リッシュ
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