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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2004.02. 5]

パリ・オペラ座、バランシンの『愛のワルツ』を中心とした ミックス・プロ






  年末年始のオペラ座バレエ団は、既報の通り<バランシン/ロビンス>プロとグリゴロ-ヴィチ振付『イワン雷帝』 のほか、バランシン記念プロの第3弾として、ミックス・プ ロを12月17日から1月3日までガルニエで上演。全部で3つのプ ログラムが同時進行という多忙なスケジュールとなった。

この夕べでは、オペラ座初演となったバランシン振付『愛 のワルツ』(60年)が、時間的にも1時間弱の長さで、メイ ンとなった。音楽はブラ-ムスの歌曲。舞台上でピアノ伴奏 に合わせて4人の歌手が歌う、18のワルツ集『愛の歌曲』作 品52と15のワルツ集『新・愛の歌曲』作品65に乗せて、4組 のエトワ-ル・カップルたちが優雅にワルツを披露していくもの。 バランシンのバレリーナを称えた典型的作品で、女性エトワー ルたちは、前半は、サテンのドレスにかかとのある靴で、後半は、 ポワントにはき替え、踊りはより自由な広がりを見せていく。 ルイザ・スピナテッリ監修により再現された華やかなロココ風サロンを 舞台に、ウィーンの古きよき時代の舞踏会が再現されたかのよう。

初日は、アニエス・ルテステュ&ジャン=ギヨーム・バール、オレリー・デュポン&ローラン・イレール、デルフィーヌ・ムッサン&マニュエル・ルグリ、レティシア・ピュジョル&バンジャマン・ペッシュの出演。  とりわけ、あでやかなデュポン&イレールと円熟のムッサン&ルグリの2組の競演が際立っていた。別の日には、スジェ に昇進したばかりの若手ドロテ・ジルベールがルグリのパートナーとしてデビューしたが、大エトワールを相手に、 初めて組んだとは思えない堂々たる舞台姿を見せ、注目を集めた。

なおプログラム前半は、全く対照的なコンテンポラリー作品3本がならび、取り合わせの悪さが指摘された。 考えてみると、 年末年始、オーケストラはオペラ、バレエにフル回転だったので、オーケストラ伴奏を必要としない演目が 並んだだけにすぎないのだが、あまり人気がなく、客席には空席が目立った。

  ミシェル・ケレメニス振付『パヴァーヌ』は、オペラ座から委嘱された『レヴェルシヴィリテ』(99年)から のトリオの2パートを抜粋し改作したもの。音楽は、ピアノ独奏によるラヴェル曲『亡き王女のためのパヴァー ヌ』。出演は、カデール・ベラルビ、ノルウェン・ダニエル、ウィルフリード・ロモリまたはジル・イゾアール、 セリーヌ・タロン、アレッシオ・カルボーネの2組のトリオの日替わり。初演の際は、女性が緑の衣裳でバレエ シューズだったのを、オレンジ系の衣裳とポワントに替えている。タロンのシャープな動きが冴えていたせいか、 二組目の方が、二人の男性の間を揺れ動く女性の微妙な心理が明確に表現されていたように思う。

  トリシャ・ブラウン振付『Glacial Decoy』は、サブタイトルに“無音のバレエ”とあるように、無音楽の中で 繰り広げられる18分の作品で、今回がオペラ座初演。79年の初演当時は、ロバート・ラウシェンバーグによる様 々なモノクロ写真をバックに、やはりラウシェンバーグが手がけた透ける白のネグリジェ風の衣裳がなびく動き の軌跡等が画期的に映ったのかもしれないが、今見ると、取り立てて目新しい点はない。女性5人の出演だが、 ミテキ・クドーの空気のように軽やかな動きには目を引かれたが、他の4人は、まるでスポーツ選手のように力 が入りすぎて、振付の意図に沿っていないようだった。

アンジュラン・プレルジョカージュの『ある関係(トレ・デュニオン)』(89年)は、最初はローラン・イ レールとロモリ、もう一日は、予定のベラルビとジェレミー・ベランガールに替わってバンジャマン・ペッ シュとアレッシオ・カルボーネのペアで見る。密室の中で、ソファを介在させながら、男性二人の緊迫した関 係を描いたものだが、二人の関係は曖昧で謎めいている。2組それぞれ雰囲気が全く異なるが、あくまで端正 に卓越した運動神経を見せたイレールと、コンテンポラリーで新境地を見せたカルボーネを発見できたのが、 うれしい。次回は、ぜひ評判のベラルビの演技を見てみたいものだ。