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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2004.02. 5]

話題の若手キャスト パリ・オペラ座『イワン雷帝』


毒殺されたアナスタシア(デル フィーヌ・ムッサン)
の霊と踊るイワン (ジョゼ・マルティネズ)

 年 末年始のバスティーユの舞台を飾ったユーリ・グリゴローヴィチ振付『イワン雷帝』は、前回レポートした、ニコラ・ル・リッシュを中心とした第1キャストに 続いて、クリスマスから、ジョゼ・マルティネズ、デルフィーヌ・ムッサン、エルヴェ・モローのトリオが登場し、印象も新たに盛り上がりを見せた。個人的に は、こちらの組の方が、3人の実力が拮抗しバランスがよく、舞台もドラマティックだったように思える。特に、イワンを演じたマルティネズには、ル・リッ シュには見られなかった、ロシア的な暗い影を感じさせ、入念な役作りの跡を感じさせた。玉座にかけて姿を見せる最初の瞬間から、ミステリアスな皇帝の雰囲 気が感じられ、異色の役づくり。アナスタシアのムッサンは、優美なシルエットで情感のこもった演技が胸を打つ。ヒゲをたくわえ、イメージ・チェンジしたモ ローのクルブスキー公は、苦悩の表現も説得力があり、何より恵まれたプロポーションからくり出されるダイナミックな跳躍が素晴らしい。
  新年の1月6 日には、ステファン・ブリオン、マチルド・フルステー、マチュー・ガニオの若手トリオが登場。 今回、オペラ座がこの作品を取り上げ、最も意味があったのは、若い彼らを思い切って抜てきしたことにほかな らないだろう。イワン役のブリオンは、彼としてはベストを尽くした役作りで、大役をよくこなしたと思うが 、観客を興奮に導くようなテクニックがないので、ル・リッシュやマルティネズの時ほど拍手が多くなかったの は仕方がないことかもしれない。一方、クルブスキー公のガニオは、舞台に立つと、19歳とは思えないスターの 貫禄。踊りには気品が備わり、アナスタシア殺害の命を受けた際の葛藤や、逃走の場の悲愴感の現れなどもドラ マティックこの上なく、グリゴローヴィチがほれ込んだのもよく分かる。

  アナスタシアのフルステーは、まだそれほど舞台経験がないにもかかわらず、 いきなりの大役を堂々と演じて、この人も間違いなく明日のエトワール。ロシアの衣装が黒い瞳の異国 的な顔立ちによく似合い、演技も細やかで、とても新人とは思えない。プルミエールのアッバニャート を凌ぐ出来映えである。オペラ座の次の時代は、今の20代よりも、ガニオやフルステーら10代の世代の 手に委ねられていくのだろうか。そんなことを予感させた清新な舞台だった。

クルブスキー公のマチュー・ガニオ



イワンのステファン・ブリオン/
ナスタシアの マチルダ・フルステー

クルブスキー公のエルヴェ・モロー

ラストシーンよりマルティネズ