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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2010.10.12]
From Tokushima -徳島-

福岡雄大が清水洋子振付『ジゼル』でアルブレヒト・デビュー

演出・振付:清水洋子『ジゼル』 振付:矢上恵子『Couver』
清水洋子バレエスクール
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主宰の清水洋子は、牧阿佐美バレエ団で数多くの主役をつとめ、ケヴィン・マッケンジーらと共演したこともある。1983年に渡欧しドイツなどで活躍後、1997年に郷里の徳島でバレエスクールを開いた。
『ジゼル』は、19歳のときに第二幕を踊り、東京バレエ協議会公演や、さらにドイツ・ボン市立劇場でも主演するなど清水にとって思い出深い作品。ボン市立劇場で踊る際には、パリ・オペラ座で、名プリマ、イヴェット・ショビレから個人レッスンを受けたという。その経験や知識、そして彼女自身のセンスが若いダンサーに注入された今回の公演は、「学校公演」とは思えないほどのプロフェッショナルな舞台に仕上がっていた。

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ジゼル役の住友諒子は2007年にボリショイ・バレエ学校に留学、今年卒業したばかりの20歳。第一幕は、清水直伝であろう細やかな演技を正確にこなし、ドラマを的確に伝えていた。アルブレヒト役は福岡雄大。新国立劇場バレエ団のソリストとして『ドン・キホーテ』『椿姫』などで主役を演じているが、この役は初挑戦である。
登場したときから貴族とわかるノーブルな雰囲気を持ち、サポートは住友を守るように優しい。二人が、より濃密な空気を醸したのは第二幕。住友の、か細い身体は浮遊するように、しかし不思議な存在感を放っていた。福岡の高いジャンプも、連続して足を打ちつける技も、すべてに隙がなく、力みもなく、彼の意識の及ばぬところで可能になったかのような伸びやかさを見せた。その形象は美しく、まさに「ミルタに踊らされている」という状態を冷静に伝え得た。
清水の演出、そして恐らくその指導は、表層的なドラマ性を求めていない。たとえば歩き方、首の傾げ方、手の差し出し方など動作の一つ一つに感情を込め、それを丁寧に行うことで登場人物の心情や状況が見えてくる。それが観客に感動を、じわりじわりと与えていった。ペザントの福田圭吾、ヒラリオンの郷原信裕、バチルドの清水麻衣子、さらにクーランド公爵役ダンサーも、ヨーロッパの雰囲気を良く伝えていた。住友、福岡両ダンサーにとって恵まれた『ジゼル』デビューだったと言えるだろう。

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矢上恵子の『Couver』は、幼いジュニアクラスから大人のレディースクラスの生徒までが出演。学校公演ならではの陣容だが、ジュニアにはジュニアらしい可愛らしさを大事にしながら矢上ならではのシャープな動きを求め、生徒たちはそれを見事にこなしていた。レディースのダンスからは必死さは伝わるが、そこにありがちな「素人臭さ」はない。両作品に共通していたダンサーの「真摯さ」が、舞台を充実させていた。
(2010年8月29日、徳島市文化センター)

撮影:岡村昌夫(テス大阪)
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