ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2010.07.12]
From Nagoya -名古屋-

バレエ、フラ、朝鮮舞踊、コンテンポラリーなどジャンルを越えた様々なダンスの祭典

2010 DANCE COMPANY UNICORN
ダンス・カンパニー・ユニコーン

毎年6月に開催されているDANCE COMPANY UNICORN公演は、民族や様々なカテゴリーを越えて、純粋に「ダンス」そのものの素晴らしさにアプローチをしようとしているように思える。今年も3部に亘ってバレエ、フラ、朝鮮舞踊、ストリートを発祥としたコンテンポラリーとジャンルを超えた様々なダンスの祭典となった。

第 I 部のメインは、DANCE COMPANY UNICORN主宰の高宮直秀と宗岡雨音によるバレエ『blanche』。日本を代表するプリマバレリーナの渡部美咲、秋定信哉がゲスト出演し、繊細かつ高度なテクニックでバレエ・アカデミックに基づいた厳格なバレエの美しさを見せる。さらに愛知で活躍する各バレエ団の主役級のダンサー、伊勢直美、板垣優美子、大久保睦子など16名の女性ダンサーが出演し、古典バレエの名曲に合せて、軽やかな踊りで、愛知のバレエ界のレベルの高さを示した。

nagoya1007a01.jpg nagoya1007a02.jpg
nagoya1007a07.jpg

第 II 部は、民族舞踊としてのダンスの意味を再考させられる作品が並ぶ。朝鮮舞踊研究所の主宰者である李美南の指導で、ファン・ジョンエは『プチェの舞』を踊った。朝鮮舞踊の中でも最もメジャーとされる扇(プチェ)を使った舞は女性の華麗さを象徴する踊りだ。細身の身体に色鮮やかな衣装を纏ったファン・ジョンエは、朝鮮舞踊特有の摺り足で素早く舞台を左右に移動し、たおやかな身体で流麗に空間にいくつもの線を描く。日本に住む在日朝鮮の女性たちにとって、民族舞踊こそ己のアイデンティティの象徴だ、との郷愁への想いを感じさせる崇高な踊りであった。
レイ・フラ・スタジオからはI ・II 部通して4つの作品が並んだ。特に今年度のフラのジュニア・コンクールで優勝した女子・永峯千尋、男子・森上帆太によるソロは、幼さを全く感じさせない、プロ顔負けの全身のダンスで、客席を大いに沸かせた。
II 部の最後は、名古屋を中心に活躍する男性バレエダンサーによる創作舞踊。自ら「UNICORN ORIGINAL」と呼んでいるように、バレエ輸入国である日本において、男性舞踊手が自らのアイデンティティを探そうとした作品といえるのだろう。『神鷹〜しんよう』というタイトルが示すのは、歴史性に基づく日本男児のイメージか。和太鼓などの伝統的な音楽に、侍の姿を映し出したシルエット映像など、ジャポニズムを感じる演出が随所に見られ、日本オリジナルへのこだわり見て取れる。高い志をもった彼らのこと、次はテーマだけではなく、男性ダンサー自身が感じたオリジナルの振付に挑んでみるのはいかがだろうか。

nagoya1007a08.jpg nagoya1007a09.jpg
nagoya1007a05.jpg nagoya1007a06.jpg

そしてIII部はCAKRA STYLEによる『Chain』。上手前に主宰兼振付のKou、下手奥に11名のダンサーが佇む中、強烈な照明がダンサーを貫く。オレンジ、黒、白を基調にした衣装は忍者を想起させ、CAKRAもまた日本オリジナルのHip Hopを目指しているように感じられる。さらにストリート・ダンスをベースにしながらも、ストリートを越えて劇場での作品を創作しているカンパニーらしく、そこにはいわゆる動きのテクニックを見せることだけに留まらない身体による表現がみえるよう。発散的な外向の動きの中に現われる一瞬の間や内向する溜めの動きには、深い精神性が必要だ。表層的なカッコイイ動きを超えて、独自の表現を目指すダンサー舞踊家たちの今後が楽しみだ。

そして、FIANALは、毎年恒例のお祭り騒ぎ、男性ダンサーによるバラエティショーで観客を楽しませる。観客もまた、この最後のお祭りを楽しみにしているようだ。観客を満足させるのはプロのダンサーの役目だし、創り手独りよがりの作品の多い中、とても貴重な試みともえる。ただこれだけの舞踊家が集まっているのであるから、当然のことながら、それぞれの作品の取組みにも期待がかかる。ファイナルのお遊びが付加価値となるのは、まずは本来の作品があってこそだ。来年もまた、彼らのさらなる挑戦を楽しみにしたい。
(2010年6月13日 名古屋市芸術創造センター)

nagoya1007a03.jpg nagoya1007a04.jpg

撮影:杉原一馬

I 部
OPENIG
出演:秋定信哉、大寺資二、森充生、高宮直秀、水野陽刈、北川優佑、梶田眞詞、
市橋万樹、碓井悠太、瀬田朗
HULA 『Na Lehua Wale O Ka’ana』<指導:澤田真美子>
Ballet 『blanche』 渡部美咲、秋定信哉(振付:高宮直秀、構成・演出:宗岡雨音)
II 部
KOREA舞踊『プチェの舞』ファン・ジョンエ<指導:李美南>
HULA 『Kilakila O Maui』、「Nawiliwili」<指導:澤田真美子>
UNICORN ORIGINAL 『神鷹〜しんよう』
<音楽・構成・演出:岡本京一郎、振付:高宮直秀、衣装・演出:宗岡雨音>
III部
HULA 『Ka Manu ~ Manu’O’O』、『Na Ui Kaua’i』<指導:澤田真美子>
CAKRA STYLE『Chain』 <振付:Kou・ Sound Creater:U-1/ Kou >
FINAL