石井潤追悼公演──山本隆之、吉田千智、佐々木大、石川真理子などレベルの高いダンサーたちによる『マニフィカト』『カルミナ・ブラーナ』

石井潤追悼公演

『マニフィカト』『カルミナ・ブラーナ』石井潤:振付

舞台を観た後、1週間以上、音楽が頭の中にうずまいて、そのシーンが目の前に繰り返し蘇る──そんな舞台はもう何年ぶりだろうか。石井潤の作品の素晴らしさをあらためて痛感する公演だった。
2015年に惜しまれながら他界した石井潤の追悼公演。永く作品を残していきたいという遺族の思いから、できるだけ多くのダンサーに作品に触れてほしいと、女性ダンサーを募集して行われた。男女ともに実力派ダンサーが揃い、長年、石井の作品を踊ってきた寺田みさこ、中村美佳は指導にまわって創り上げた。

代表作2作品の上演で、はじめに『マニフィカト』。聖母を讃えるこの作品の中心を踊ったのは吉田千智と山本隆之。清らかで輝くような美しさの吉田、穏やかで深みを感じさせる山本ともに、この作品にぴったりのキャスティング。大人の魅力が上手く出た中西孝子、伸び盛りのダンサー、幸村恢麟の踊りもそれぞれのキャラクターが活きて印象に残った。群舞も含めて、踊りを観ていると、祈りが天に自然に届いているような気がした。

『マニフィカト』吉田千智、山本隆之 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『マニフィカト』吉田千智、山本隆之
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『マニフィカト』吉田千智 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『マニフィカト』吉田千智
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

後半は『カルミナ・ブラーナ』、初めてこの作品を観た時の、寺田みさこの踊りが、今も脳裡に焼き付いている衝撃的な作品だ。今回は石川真理子が、その中心のパート、女神を踊った。人間のさまざまな欲望──愛、食、酒、性......が、生き生きと描き出される。人間が生きるということはこういうことなんだと繰り返し目の前に突きつけられて、"人間"というものの本質を考えなおすきっかけをもらような......。バレエ、ダンスというものは、そういった根本的なことを言葉を使わずに直接、観客の心に刺すように提示することができる芸術なんだと強く感じた。もちろん、質の高い作品だからこそ可能なことで、そんな作品はそうそうあるわけではないけれど。石川は、迫力を持って様々な顔を使い分けて熱演。佐々木大も複雑な感情を存在感たっぷりに踊り、引きこまれた。また、ソリストで、食べられる食材の白鳥(?)の吉田旭は、中性的な魅力を活かして良かった。群舞も良いダンサーが揃っており、なかでも井澤照予が花が咲きほこる喜びを身体全体で表現し、目を引いた。
石井潤の作品は、この2つだけでなく、いつまでも良いダンサーによって引き継がれていって欲しいと心から思う。
(2018年2月10日 京都府立府民ホールアルティ)

『カルミナ・ブラーナ』佐々木大 撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』佐々木大
撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』
撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』石川真理子、佐々木大 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』石川真理子、佐々木大
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』石川真理子 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』石川真理子
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』
撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』石川真理子 撮影:田中 聡(テス大阪)

『カルミナ・ブラーナ』石川真理子 撮影:田中 聡(テス大阪)

ワールドレポート/大阪・名古屋

[ライター]
すずな あつこ

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