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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2018.02.13]

石井漠、小波作品の復元もあった、佐藤典子舞踊生活70周年プレイベント「アクトの丘にショパンを舞う」

佐藤典子舞踊生活70周年プレイベント「アクトの丘にショパンを舞う」
『ダニューブの漣』『浜辺の歌』石井小波:原振付 佐藤典子:復元再振付、復元指導;石井登『怖がらせる』石井漠:原振付、「谷川俊太郎詩集『絵のない絵葉書』より」佐藤典子:構成ほか

石井小波の内弟子であった佐藤典子の舞踊生活70周年プレイベントとされた公演。師である小波は石井漠とともに、もう95年も前になる1923年に日本人で初めて、ポーランドのワルシャワ市の国立フィルハーモニアで公演し、高い評価を受けたと聞く。1988年には漠の長男である石井歓作曲のオペラが上演され、浜松市長はじめ多くの浜松の人がワルシャワへ観劇に訪問したことから交流が生まれ、1990年にワルシャワ市と浜松市の間に「音楽文化友好交流協定」が結ばれた。ワルシャワというとフレデリック・ショパンの生地だが、1994年のアクトシティ落成時にはワルシャワ市からショパン像が贈られた。そのアクトシティ浜松の大ホールで“ショパンを舞う”として行われた舞台。

1802hamamatsu2533s.jpg 『浜辺の歌』撮影:スタッフ・テス 1802hamamatsu2656s.jpg 『怖がらせる』石井登、熊切香乃羽
撮影:スタッフ・テス
1802hamamatsu1622.jpg 『ボタンの一押し』大柴拓磨、金刺わたる、PIRO
撮影:スタッフ・テス

オープニングは『レ・シルフィード』。森田友紀、森田友理の構成・振付、森田友理と金甫燕の主演、浜松洋舞家協議会の出演で上演された。
続く第Ⅰ部が「先人達の足跡を追って」ということで、まず映像で「石井漠、小波とポーランド─--石井歓 そしてショパン像と浜松の関係」を追った。日本の洋舞の初期に触れる興味深い内容。続いて、佐藤典子が石井小波の子供のための作品を復元再構成し、『ダニューブの漣』、『浜辺の歌』、『証城寺のたぬきばやし』といった可愛らしく素朴な作品を上演。石井漠の孫にあたる石井登が漠の『怖がらせる』や『茶っきり節』を復元指導していたのも興味深かった(『茶っきり節』は佐藤典子が再構成)。日本の洋舞の初期を知る方が、それを消さずに伝えるということは、なかなか大変なことだと想像するが、本当に大切なことだとつくづく思う。

第 II 部では“ショパンを踊る”ということで、ショパンの曲を使ってダンサーたちが見応えのある踊りを観せた。馬場ひかりが「ノクターン第8番変ニ長調27-2」に振付けた『儚きもの』や、米沢麻佑子が「プレリュード作品28  15番」に振付けた『雨音』など、4人の女性ダンサーによる自作自演のソロは、どれも良かった。
最後には、佐藤の構成で、谷川俊太郎詩集『絵のない絵葉書』より「〜Alphact・佐藤典子舞踊団と朗読による舞踊詩〜」ということで、榊原忠美が谷川の詩を朗読するのを導入のように使いながら、ショパンの曲で踊った。佐藤振付で女性のせつなさを感じさせた『追慕』は「夜想曲20番 嬰ハ短調」に、大前光市が大切なものを失った哀しみを踊った『あなたはそこに』は、「別れの曲 練習曲第3番ホ短調」に、Alphactの大柴拓磨、金刺わたる、PIROによる『ボタンの一押し』は、「練習曲革命 ハ短調10-12」に乗せて、危機感を前面に打ち出したもの。身体能力の高い男性ダンサー3人による迫力を持った踊りは、現代の社会の危機をストレートに伝えた。そして、その舞踊詩の最後は、佐藤振付での群舞、「幻想即興曲OP.66」に乗せての『生きる』。前を向いて歩む、ポジティブな決意が感じられる気持ちの良いラストだった。
(2017年12月26日 アクトシティ浜松大ホール)

1802hamamatsu1595s.jpg 『あなたはそこに』別れの曲 大前光市 1802hamamatsu1893s.jpg 『生きる』
1802hamamatsu3051.jpg 『儚きもの』馬場ひかり 1802hamamatsu3252.jpg 『雨音』米沢麻佑子
撮影:スタッフ・テス(すべて)