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岡元ひかる text by Hikaru Okamoto 
[2017.11.10]

法村友井バレエ団が『赤き死の舞踏』ほか、カンパニーの歴史と関連のある3作品を上演した

法村友井バレエ団
『未来へ』法村圭緒:振付、『騎兵隊の休息』マリウス・プティパ:原振付(ユーリ・ペトゥホフ:再振付)、『赤き死の舞踏』篠原聖一:振付

10月15日の夜、創立80周年を迎えた法村友井バレエ団が、カンパニーの歴史と関連のある三作品を上演した。

osaka1711a_01.jpg 『未来へ』
撮影:尾花文雄

一作目の『未来へ』では、バレエ団の歴史がシンプルな振付とシーン構成で描かれた。ところどころ、スクリーンに創立者である法村康之と友井唯起子のスナップや過去の舞台写真が映される。これは、ダンサーの身体を使って記されたバレエ団の自叙伝としてみると、また趣の異なった面白さがあった。
二作目の『騎兵隊の休息』は、一幕のコメディ・バレエである。原振付はマリウス・プティパだが、このバレエ団は2001年以来ユーリ・ペトゥホフの再振付版を上演し続けている。
農家の娘マリアとテレーザは、どちらもピョートルに恋をしている。そこへ騎兵隊がやって来るが、美しいテレーザに心を寄せた連隊長は、三角関係を収めるためマリアとピョートルを結婚させる。テレーザはこれに不満を抱くが、最後には気を取り直し結ばれた二人を祝福、連隊長と睦まじくなる。やがて騎兵隊の出立の時が来ると兵士たちは去り、村に平和が再来するという筋である。
マリアを演じた中尾早織は、コントロールの効いた身体で一つ一つのテクニックの正確に踊った。一方テレーザの中内綾美は、長い四肢を活かした大輪の花のような華やかさで、小柄な中尾との好対照を成した。ピョートルの今井大輔は、柔らかい腕使いが印象的であった。
全体を通して特徴的だったのは、作品中の会話部を担うマイムと、純粋な踊りとしての動きが互いに融合していたことだ。身振りとしての動きもそうでない踊りも、エネルギッシュだがはっきりとした動線を描き、共通してコンパクトな印象を与える。このこととシーン展開のスピーディーさとが相まって、一筆書きを一気に駆けぬけるような疾走感が生まれていた。

osaka1711a_02.jpg 『未来へ』撮影:尾花葵 osaka1711a_03.jpg 『騎兵隊の休息』撮影:尾花文雄
osaka1711a_04.jpg 『赤き死の舞踏』舞踏会のナポリの踊り
撮影:尾花文雄

最後の演目は、1956年に法村と友井が創作した『赤き死の舞踏』の蘇演である。エドガー・アラン・ポーの怪奇小説を題材とするこの作品の再振付にあたり、初演時のプログラムや楽譜などを資料としたそうだが、振付を知る手がかりはほぼ残っておらず、今回は篠原聖一による新振付で上演された。作曲は戸田邦雄である。
物語の舞台は、赤死病の蔓延する中世ヨーロッパ。感染を恐れた領主プロスペロ公は、仲間と宮殿に閉じこもり仮装舞踏会を開くのだが、ここでは『白鳥の湖』さながらに道化やナポリの踊りが登場する。他にも「オリエンタル」な国々のイメージを表象する女性の踊りが順にでてくるところなど、古典バレエ作品の舞踏会や祝典のシーンを彷彿とさせる構成だ。
終盤、「赤き死の精」やその手下たちが舞踏会に乱入すると、モダンダンスを思わせる動きが使われる。そんな中、「赤き死の精」を演じた法村珠里は、バレエ団のプリンシパルとして群を抜く実力を見せつけた。彼女は、どこかファム・ファタルの妖艶さを思わせる雰囲気を持って登場した。そこから死という観念的な存在が現れ、迫力とシャープさを併せ持つ法村珠里の動きが際立った。ラストシーンで、肌色のユニタード姿の彼女がひとり佇むという篠原演出は、万人に訪れる死の普遍性を強調したようにも感じられた。 
舞踊のレパートリー作品は、上演され続けなければ未来に残らない。こうしたカンパニーの歴史に関わる公演は、その作品の継承・再創造という観点からみても意義深い試みだったと思われる。
(2017年10月15日 フェスティバルホール)

osaka1711a_06.jpg 『赤き死の舞踏』撮影:尾花文雄 osaka1711a_07.jpg 『赤き死の舞踏』法村珠里 撮影:尾花文雄
osaka1711a_05.jpg 『赤き死の舞踏』舞踏会のアラビアの踊り 撮影:尾花文雄