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原 桐子 text by Hara Tohko 
[2017.09.11]

楠本理江香の清楚な踊りに魅せられた、本田道子バレエ団の深川秀夫版『シンデレラ』

本田道子バレエ団
『シンデレラ』深川秀夫:振付

本田道子バレエ団が3回目の公演に選んだ演目は『シンデレラ』。『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』に引き続き深川秀夫による演出振付。ペローの童話に忠実で全編にプロコフィエフの音楽を使ったザハロフ版がベースとなるものの、他の振付作品と同じく随所に深川らしいエッセンスが見受けられる。ソロ、パ・ド・ドゥの部分、群舞によるディヴェルティスマンがバランス良くそれぞれの幕に配置されている。凝った仕掛けはなくとも、美術や衣装も欧州のバレエ団にひけをとらないセンスの良さなど、最後まであきることなくおとぎ話の世界へ連れて行ってくれた。

osaka1709e_6538_2.jpg 楠本理江香、麻生川薫、入口舞、堀川賀代
撮影:OfficeObana-尾鼻文雄(すべて)

1幕1場はシンデレラの家の居間。他の版では男性が踊ることもある、いじわるな義理の姉は女性ダンサー(入口舞、堀川賀代)によって踊られる。マイムなどは少なめで、継母(麻生川薫)とのパ・ド・トロワが踊りでいじめる様子が表現される。
1場をシンプルにした分だけ、2場の仙女(木岡多真美)や四季の精、妖精たちによるシンデレラを変身させる場面がより際立ってきらきらしていた。

2幕はお城での舞踏会。王子の友人や招待客が繰り広げる踊りはコミカルな要素もかなり入っている。バレエを初めて見る観客も多かったのか、1幕では静観していた客席からリラックスし、拍手やくすくすと、しのび笑う声が聞こえ始める。
この2幕のハイライトは他でもない、王子(青木崇)とシンデレラ(楠本理江香)のパ・ド・ドゥ。シンデレラが恥じらい、不安を抱き、恐る恐る王子と踊るが、王子のしなやかなサポートによって徐々に身を委ね、心許して恋に落ちていく。ふたりの盤石な踊りによって物語は厚みを増し、説得力があった。
魔法がとける12時を告げる場面は小道具で実物の時計は出てこない。音楽と、ダンサーが上体を折り曲げカクカクと動き時計をモチーフとした振付がユニークだ。
これより前の場も、シンデレラがお城へ出かける際も群舞のフォーメーションや振付が時計や時計の振り子を連想させるものがあり、印象に残っている。

osaka1709e_2008.jpg osaka1709e_2056.jpg
osaka1709e_7895.jpg 青木崇、吉田旭、武藤天華

3幕冒頭は地球儀を前に王子は友人たちとあれこれ思案している。そして友人たち(吉田旭、武藤天華)と旅に出る。背景はいたってシンプルで王子、王子の友人たちがスペイン、エチオピア、インドへ出かける。『ロミオとジュリエット』のモンタギュー・トリオ(ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオ)のような組み合わせ。せっかくの男性ダンサーの見せ場なので、ただ走る、という演技をもう少し減らしてたっぷり踊ってほしかった気もするが、各国のエキゾチックな踊りはガラっと雰囲気を変え、ピリリと辛いスパイスのように効いて舞台がひきしまる。
王子がシンデレラの家へやってくる。右往左往の末、落としていった靴にぴったり合う足の持ち主、シンデレラをついに見つけた王子。フィナーレは群舞に乱れがあったのが惜しまれるが、華やかで美しい幕切れだった。
楠本は、シンデレラという役柄に求められる美徳が見える、一貫した清々しい踊りで好感が持てた。
次回公演は『コッペリア』を予定しているそうだが、公演を待つ楽しみがひとつ増えた。
(2017年7月31日 大阪フェスティバルホール)

osaka1709e_2077.jpg osaka1709e_6538.jpg 木岡多真美
osaka1709e_7131.jpg 楠本理江香 osaka1709e_7746.jpg 楠本理江香、青木崇
osaka1709e_8000.jpg 青木崇、吉田旭 osaka1709e_8057.jpg 鳴橋実加、梶原将仁、青木崇、武藤天華
osaka1709e_8428.jpg 『シンデレラ』本田道子バレエ団 撮影:OfficeObana-尾鼻文雄(すべて)