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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2017.09.11]

篠原聖一の新作『椿姫』を下村由理恵のマルグリットと佐々木大のアルマンで上演──佐々木美智子バレエ団

佐々木美智子バレエ団
『椿姫』篠原聖一;演出・振付

篠原聖一が新作として、今回のために振付けた『椿姫』。ヴェルディも使いつつ、チャイコフスキーやショスタコーヴィチ、オッフェンバックなど様々な作曲家の音楽を組み合わせて、全幕作品に構成した。

osaka1709c_00109.jpg 下村由理恵 撮影:古都栄二(テス大阪)

プロローグ、マルグリッド(下村由理恵)のまわりで彼女を讃える男たちが照明に浮かび上がるのは、1枚の絵画のよう。そして、マルグリットの館でのパーティーのシーンに。下村のマルグリットは、登場から華やかなオーラに包まれて、深みのある大人の女性の魅力から、アルマンとの田舎暮らしの場面では無邪気な少女のような無垢な魅力、そして、病と戦いながらも愛する人を想う清らかな魅力まで、その場面に応じた魅力で惹き込んだ。アルマンの佐々木大も細やかな心情表現が自然に観ている者に伝わる演技、感情の高まりをそのまま視覚化したようなジャンプなども素晴らしく、さすが、と思わせてくれた。

そして今回の演出で、もっとも印象に残ったのは、マルグリットのパトロンであるヴァルヴィル男爵(福岡雄大)の存在の大きさ。マルグリットとヴァルヴィル男爵のパ・ド・ドゥもアルマンとのパ・ド・ドゥとはまた違った魅力があったのはもちろん、1幕のパーティーでマルグリットの心がアルマンに揺れ始めた時の心情表現にはじまり、後半のアルマンがマルグリットを侮辱した後にはピストル決闘、エピローグのマルグリットの墓地には、アルマンだけでなくヴァルヴィル男爵も訪れる。さまざまな『椿姫』を観る中で、こんなに男爵役が主役に近い扱いになっていることはなかった気がするが、福岡という良いダンサーを得たからこそとも言えるのだろう。

osaka1709c_00164.jpg 下村由理恵、福岡雄大 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1709c_00250.jpg 佐々木大 撮影:古都栄二(テス大阪)

また、マルグリットのライバルのクリティザンヌ、オランプ役に佐々木夢奈。若く、その世界で伸びて行くライバル像を、テクニックも活かして伸びやかに演じた。そのオランプの館の場面(田舎からマルグリットが去った後の、アルマンが裏切られたと侮辱するパーティーの場面)、オッフェンバックの音楽に乗せて華やかにフレンチカンカンの群舞が踊られる。関西らしい楽しさと言えばそうなのだけど、フランスの物語とは言え、『椿姫』でカンカンはちょっと驚いた。とはいえ、この団体のダンサーの勢いには合っていていて、踊りとしては楽しめた気がする。
最後の寝室から墓地は、下村、佐々木、福岡が、本当に良いダンサーたちだからこそ、と思える仕上がり。しみじみと引き込まれた。
(2017年8月13日 八尾プリズムホール)

osaka1709c_00469.jpg 下村由理恵、佐々木大 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1709c_00691.jpg 下村由理恵 撮影:古都栄二(テス大阪)
osaka1709c_00942.jpg 佐々木夢奈、福田紘也、豊永太優 撮影:古都栄二(テス大阪) osaka1709c_00124.jpg 撮影:古都栄二(テス大阪)
osaka1709c_00838.jpg 佐々木夢奈 撮影:古都栄二(テス大阪)