ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2017.07.10]

ピッツバーグ・バレエはじめ、海外、国内で活躍する実力派ダンサーが集い多彩な演目を上演──World Dream Ⅴ

エリート・バレエ・スタジオ「World Dream 」
『Judgmental 』中野吉章;振付、『Remember When you loved me ─愛の追憶』、津軽三味線『吉─kichi─』中野吉章&ジェシカ・マカン;振付、『The Dream of FLORES -月夜のマグノリア- 』新井誉久;振付、(『仮面舞踏会』中野光子;振付、『Orobroy』前田寛子;振付など

5回目を迎えたエリート・バレエ・スタジオ主催の「World Dream 」。回を重ねるごとに充実していることが感じられる。というのも、こういった様々な所属で活躍するプロダンサーが集うコンサート形式の公演では、それぞれが得意な演目を持ち寄って、順番に上演……といっただけになってしまうこともあるが、この「World Dream」は、毎回、集まったメンバーで新作を創り上げていく。それが、年を追うごとに、この初夏の一時期に出現する一つのカンパニーのように上手く成長しているように感じられるのだ。加えて、今回は日本のバレエ公演では、まだあまり聞かないクラウドファウディングにも挑戦し支援を得たという。作品の創り方だけでなく、制作にも関しても工夫を凝らしているのは、見ていて心強いこと。

撮影:Shin STYLE 高田真、深澤恭子(すべて)
osaka1707b_05.jpg 『Judgmental 』
上杉真由、田中愛子、大久保彩香、日髙世菜、山田承実、高比良洋、新井誉久、出野佑都
osaka1707b_02.jpg 『白鳥の湖』第2幕より
オデット姫:アマンダ・コクレーン、ジークフリート王子:中野吉章

そして、舞台。ジョフリー・バレエで活躍する新井誉久がメンデルスゾーンの曲に振付けた『The Dream  of FLORES -月夜のマグノリア- 』で幕開け。オープニングらしい華やかさの上に、中心のマグノリアを踊った田中愛子と中井嵩人ののびやかな表現力が良い。続いては、ピッツバーグ・バレエのプリンシパルの2人、アマンダ・コクレーンと中野吉章の『白鳥の湖』第2幕よりアダージオ。恵まれた長身の美しいラインを活かしてクラシック・バレエの美しさを観せてくれた。
中野光子振付でミステリアスな女性の魅力を見せた『仮面舞踏会』、作曲の大西早苗が生でピアノ演奏も行った『Judgmental 』は、人をジャッジすること、価値観の違いについて考えた中野吉章振付のコンテンポラリー・ダンス。前田寛子振付の『Orobroy』は、大人のしっかりとした意志を持った女性たちの群舞だった。

osaka1707b_03.jpg 『タランテラ』よりパ・ド・ドゥ
大久保彩香、市橋万樹
osaka1707b_07.jpg 『Remember When you loved me ─愛の追憶』
ジェシカ・マカン、中野吉章、アマンダ・コクレーン、新井誉久
osaka1707b_04.jpg 『コッペリア』より婚約の踊り
ジェシカ・マカン、新井誉久

『海賊』第1幕よりグラン・パ・ド・ドゥは、ギュリナーラを前田奈美甫、ランケデムを吉田周平が踊った。ギュリナーラの役づくりというのは、いろいろな考え方があると思うけれど、前田はとてもていねいに役を組み立てていた。ランケデムと踊るパ・ド・ドゥは憂いや、時にキッとした表情を見せ、ヴァリエーションでは、あの音楽の雰囲気に合う1人で踊ることの喜びが感じられる踊りだった。吉田はイキイキと伸びやかにテクニックを披露してくれていた。『タランテラ』は高テクニックの大久保彩香と市橋万樹が、プロらしく観客を楽しませた。
ジェシカ・マカンと中野吉章が一緒に振り付けた『Remember When you loved me ─愛の追憶』は、ピッツバーグ・バレエの3人、ジェシカ・マカン、中野吉章、アマンダ・コクレーンと、ジョフリー・バレエの新井誉久、アメリカで活躍する4人が踊った。“別れ”、過ぎ去った愛について、良いダンサーたちだからこそメリハリを持って表現された。
第1部の最後2つは日本の楽器とのコラボレーション。実力派ダンサーたちが踊った「津軽三味線『吉─Kichi』」は、津軽三味線の打土井拓の作曲&演奏、ジェシカ・マカンと中野吉章の振付。続いて、打土井の津軽三味線と堀江秀幸の和太鼓、善本和弘のギターの生演奏で、ジュニアダンサーたちが、第1回で公演で上演された『虹色の風』を再演した。
第2部は『コッペリア』第3幕より。スワニルダをアマンダ・コクレーン、フランツを中野吉章が踊り、ディヴェルティスマンは、さまざまなダンサーを適材適所にキャスティングして見せた。アマンダはアメリカ娘らしいチャーミングな魅力で、スワニルダがとても似合っていたし、中野はさすがの高いテクニックで盛り上げた。
(20176月18日 大阪狭山市文化会館 SAYAKAホール)

osaka1707b_06.jpg 『虹色の風』 撮影:Shin STYLE 高田真、深澤恭子
osaka1707b_01.jpg 『コッペリア』スワニルダ:アマンダ・コクレーン、フランツ:中野吉章
撮影:Shin STYLE 高田真、深澤恭子(すべて)