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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2015.05.11]
From Osaka -大阪-

オスカー・ワイルドの『しあわせの王子』に基づく新作ほか──カンパニーでこぼこ13回目の公演

カンパニーでこぼこ
『しあわせの王子』ほか 脇塚力:振付

脇塚力率いるカンパニーでこぼこの公演、今回はオリジナル新作『しあわせの王子』を中心とした4演目の組み合わせ。

osaka1505a_2129.jpg 『エスメラルダ』
撮影:波片一乃(テス大阪)

まず、最初に上演されたのは『ベニスの謝肉祭』。『サタネラ』のグラン・パ・ド・ドゥとしてもお馴染みのこの踊りを今中亜莉沙と趙載範を中心に上演、今中のニコニコとした笑顔が良い。続いて、『エスメラルダ』のグラン・パ・ド・ドゥを佐藤智美と脇塚力が踊った。元スコティッシュ・バレエのプリンシパルで、今もヨーロッパを拠点に活躍する佐藤は、テクニック、表現力ともにさすが。小柄で華奢なのに、この踊りの魅力の一つである強さが自然に出て、とにかく“粋”。ダイナミックさと繊細さが同居し、すべてがスムーズ。最後のスピード感のあるトゥールにも目を奪われた。

3つ目の演目は『ラ・バヤデール』から婚約式の場。ガムザッティの岡田倖奈は身分高く何不自由なく育ったお嬢様というこの役を、輝くような華やかさ、大きな存在感で好演、高須佑治のソロルも自然。金の仏像の榎本心は、最後に少し惜しいところがあったものの力強い踊りで目を引き、壺の踊りのソリストも軽さを持った動き、優しげな表情で良かった。

osaka1505a_0126.jpg 『ベニスの謝肉祭』撮影:岡村昌夫(テス大阪) osaka1505a_0203.jpg 『エスメラルダ』撮影:岡村昌夫(テス大阪)
osaka1505a_0623.jpg 『ラ・バヤデール』撮影:波片一乃(テス大阪)
osaka1505a_0880.jpg 『しあわせの王子』
撮影:波片一乃(テス大阪)

そして4つ目、ラストは、脇塚力が今回のためにオリジナルで振付けた『しあわせの王子』。子どもの頃に絵本で読んだことがある人も多いだろうオスカー・ワイルドの童話の舞台化だ。アメリカの古き良き時代のミュージカルのような幕開け、町のさまざまな人たちが登場し、みんなで踊るところから始まり、コミカルさも持って舞台に引き込む。場が進むにつれ、やがて、王子とツバメの優しさが心にしみるように広がり、それに気づかない人間たちがはがゆく見えてくる。ものがなしく、どうようもない思いになったところに、神様(榎本心)が天使(佐藤智美)に、「もっとも美しく、尊いものを二つ持ってきなさい」と。神様と天使だけはきちんと見ている。人間というものは、いつの時代も愚かなのかもしれない──そんな思いが頭をよぎった。ツバメ役の中山恵美子はじめ、それぞれのダンサーがそれぞれの役を自然に表現していて、温かい仕上がりに好感が持てた。
(2015年4月5日 いたみホール)

osaka1505a_2492.jpg 『しあわせの王子』撮影:岡村昌夫(テス大阪) osaka1505a_2466.jpg 『しあわせの王子』撮影:波片一乃(テス大阪)
osaka1505a_1005.jpg 『しあわせの王子』撮影:波片一乃(テス大阪)