ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2015.04.10]
From Osaka -大阪-

廃墟をモチーフとした曲を踊り繋ぐ『忘れ去られた町』ほか、サイトウの様々のスタイルのダンス

『ベンセレモス〜サイトウマコトの世界』
フレンテ・ダンス・ジュエルズ♯3 サイトウマコト:構成・振付

観終わった時、大きな満足感を覚える公演だった。
関西を拠点にコンテンポラリー・ダンスの振付家として活躍するサイトウマコトの作品を集めての舞台を上念省三がプロデュースした。20年以上前に振付けられたニューヨーク・スタイルのジャズダンスの要素を含んだ作品から、この公演のための新作まで、初演時期もさまざまな多彩な作品が並んだ。

osaka1504a_0112.jpg 『The Rain』森恵寿
撮影:山下一夫(すべて)

まず、幕開けは『A Medley』ということで、4つの作品を順に。ビートルズの『Yesterday』に乗せた針間恭子のソロダンスに始まり、1992年に振付けられた群舞『Eleanor Rigby』、ベテランダンサー・森恵寿が美しい筋肉を活かし大人の男の切なさを感じさせ踊った『The Rain』。そして、男(サイトウ)の抱えた大きな鞄から女(関典子)が現れる『鞄女』。どこかオドオドとした暗いものを内面に抱えるように見えるサイトウ演じる男を観ていると、こういう人の暗部を垣間見せる世界を描けるということこそ、芸術の最大の意味なのではないかと思えてくる。その抱えた鞄から、手が出て、脚が出て、またファスナーが閉じられ、脚で蹴飛ばし転がされる……。その後に、まるで物体のような女、関典子が出てくる。高い身体能力で、常識的な人間の形から離れたオブジェ、衝撃的で目が離せない作品だった。

後半は、『Abandoned City 忘れ去られた町』。チェルノブイリ原子力発電所事故で無人の町になった“Pripyat(プリピャチ)”、18世紀にニシン漁で栄えた“Stromness(ストームネス)”、それに日本の“Fukushima(福島)”など、廃墟と化しているトポス、場所をモチーフに創られたドイツのアーティストHauschkaのアルバムからの曲で踊り繋いだ作品。ほとんどが新作だが、“Fukushima”=“福島”をテーマにした『IN MY ROOM』というピースと公演タイトルにもなっているラストの『Venceremos』は再演。『IN MY ROOM』は2013年の作品で、今は使うことがほとんどなくなったカセットテープの中の録音するリボンのようなものを長く引き出して(最初は、このリボンは何かと思った)、会津木綿や民謡も使ってのしみじみとした哀愁を感じさせる作品。ほかのピースも、それぞれダンサーたちが振付家の想いを的確に表現しようと丁寧に踊っていることが感じられた。
『Venceremos』=『ベンセレモス』は“我々は勝利する”という意味のチリの革命歌で、クーデター時、死ぬまで歌い続けたハラの最後の曲と言われているそう。1990年に斎藤が振付けた作品ということでジャズダンス、ショーダンス的な群舞。25年も前の作品なわけだが、不思議な迫力に引き込まれた。
(2015年3月12日 西宮フレンテホール)

osaka1504a_0137.jpg 『鞄女』関典子、サイトウマコト osaka1504a_0173.jpg 『鞄女』関典子
osaka1504a_0231.jpg 『鞄女』関典子、サイトウマコト osaka1504a_0237.jpg 『鞄女』
osaka1504a_0585.jpg 『Abandoned City 忘れ去られた町』 osaka1504a_0681.jpg 『Abandoned City 忘れ去られた町』
osaka1504a_0925.jpg 『Abandoned City 忘れ去られた町』 osaka1504a_0982.jpg 『Abandoned City 忘れ去られた町』
撮影:山下一夫(すべて)