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原 桐子 text by Hara Tohko 
[2014.12.10]
From Osaka -大阪-

男性アンサンブルによる群舞が圧巻だった『アリ・ババと40人の盗賊』地主薫バレエ団

地主薫バレエ団
『アリ・ババと40人の盗賊』地主薫:構成・演出・振付

地主薫バレエ団、今回の公演は『アリ・ババと40人の盗賊』。代表である地主薫の舞踊生活50周年の記念公演となる。

osaka1412a_6310.jpg 奥村康祐、奥村唯
撮影:OfficeObana-Aoi Obana

構成や演出、振付は地主薫によるオリジナルで、原作はあの「アラビアン・ナイト」。「開けゴマ!」と言えば誰もが知るペルシャが舞台となったお話だ。
音楽はチャイコフスキー、ハチャトゥリアン、ホルストを使い地主薫がありとあらゆる音楽を聴き、選んだ曲を指揮者の江原功が監修したもの。2006年に初演され8年ぶりの再演となる。再演とはいえ、その当時とは著作権なども変わり、編成はやり直しを余儀なくされたと聞く。たいへんに気の遠くなる緻密な作業のすえの音楽は、このバレエとぴったりと融合し舞台を盛り上げていた。
1幕、場面はペルシャの街、アリ・ババ(奥村康祐)と恋人アマーラ(奥村唯)、アマーラの召使いモルギアナ(葭岡未帆)をはじめ、街の人たちと楽しんでいるところから始まる。
アリ・ババの兄カシム、その妻ドニアザード、アマーラの父、ロバに扮した3人など数えるのがたいへんなほど多くの人物が一気に登場する。奥村のアリ・ババは素朴でまじめな人柄といった印象。ジャンプは着地の音がしなくて柔らかい踊り。アマーラの奥村唯はアラビアの昔の女性といったキャラクターにあう清々しさ。どのパにも力みがなくかつ自然でとてもさわやかなデュエットだ。
アリ・ババが飼っているロバの3人(末原雅広、恵谷彰、林高弘)は優れた技術を持ったダンサー。両手は常に握りこぶしでコミカルな動きがユーモラス、胸のすくようなダイナミックな足さばきに惚れ惚れする。
物語はスピーディーに展開していき、蛇使いと蛇や布売りが現れる。間瀬愛美子の蛇は薄いグリーンのタイツ姿。蛇使いにあやつられる様子があやしくて艶かしい蛇そのもの。

osaka1412a_3218.jpg アリ・ババ:奥村康祐
撮影:OfficeObana-Tatsutoshi Niinai

アマーラの父が、アマーラとアリ・ババの結婚に反対している設定が『ドン・キホーテ』の1幕のドタバタ劇を思い出させる。休憩をはさみ次の2幕。
ホルストの惑星の第1曲『火星』のティンパニーと弦楽器による繰り返される5拍子のリズムにのり、客席側の奥から盗賊たちが舞台の岩場を目がけて走りあがる。岩場の影では隠れて薪を集めにきたアリ・ババとロバが盗賊たちを見ている。劇場参加型とでも呼べばいいのか、盗賊たちが客席に現れたことによって観客は、アリ・ババとロバたちと同じく、岩場の影に隠れて固唾をのんで見守らなければならない、といった錯覚を起こしやすく自然と舞台に集中できる。演劇にはよくある手法で好き嫌いは分かれるかもしれないが、これも創作バレエならではの醍醐味ではないかと思う。
盗賊の頭(青木崇)をセンターに盗賊たちがこれでもかとばかりに踊りまくる。古典作品ではあまりお目にかかれない、この男性ダンサーによる群舞は迫力があり圧巻の情景だ。
2幕3場ではアリ・ババの強欲な兄カシムが、アリ・ババから宝が眠る秘密の場所を聞きだし、開けると岩場全体のセットがすべて上げられ、宝石たちの群舞。エメラルド、ルビーは女性ダンサー、ゴールドは男性ダンサー、それぞれの宝石を象るような美しいフォーメーションの数々、スローテンポで踊られる華やかなアンサンブルは女性ダンサーの見せ場であろう。ボストン・バレエの倉永美沙や英国ロイヤル・バレエの金子扶生といった世界を舞台に活躍するダンサーを育てたこのバレエ団、女性ダンサーもレベルが高い。

osaka1412a_0565.jpg アマーラ:奥村唯
撮影:OfficeObana-Naoki Noda
osaka1412a_0811.jpg アリ・ババ:奥村康祐
撮影:OfficeObana-Naoki Noda

3幕は再びペルシャの街、アリ・ババの家。後を追いかけてきた盗賊たちにいちはやく気づいたモルギアナの機転によってアリ・ババは難を逃れる。
アリ・ババとアマーラの結婚式に潜り込んだ盗賊の頭は、最後にアリ・ババと対決し、祝いの宴が繰り広げられる。這う這うの体で岩場までたどり着いた盗賊の頭は前で力尽き果てる、という筋書き。
葭岡は小柄で華奢なプロポーションを生かし、リズミカルなステップで魅せる。
祝宴でのアリ・ババとアマーラのパ・ド・ドゥも滑らかな動きで舞台後半にも関わらずスピードがある。
『アラビアン・ナイト』の世界を、地主薫の手によるオリジナリティあふれる振付で、観客は大いに楽しんでいた様子。バレエはとっつきにくい、と思っている人々にもぜひ見てもらいたいストーリー・バレエだ。
(2014年10月19日 大阪 フェスティバルホール)

osaka1412a_1002.jpg ロバ:末原 雅広、恵谷 彰、林 高弘
撮影:OfficeObana-Naoki Noda
osaka1412a_2014.jpg カシム:渉 将人
撮影:OfficeObana-Aoi Obana
osaka1412a_3002.jpg 撮影:OfficeObana-Aoi Obana osaka1412a_8028.jpg 撮影:OfficeObana-Naoki Noda

地主薫バレエ団『アリ・ババと40人の盗賊』全3幕
構成・演出・振付:地主 薫
音楽:チャイコフスキー、ホルスト、ハチャトゥリャン
音楽監修・指揮:江原 功
演奏:大津フィルハーモニー管弦楽団
キャスト
アリ・ババ:奥村 康祐
盗賊の頭:青木 崇
カシム:渉 将人
アマーラ:奥村 唯
モルギアナ:葭岡 未帆
アマーラの父:岩本 正治
ドニアザード:尾関 夢惟
ロバ:末原 雅広、恵谷 彰、林 高弘

osaka1412a_8077.jpg 撮影:OfficeObana-Naoki Noda