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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.11.10]
From Osaka -大阪-

女性振付家が振付けた『ロミオとジュリエット』の新鮮な感動、野間バレエ団

野間バレエ団
『ロミオとジュリエット』野間康子:演出・振付、『パキータ』野間景:改訂振付、マリウス・プティパ:原振付

大阪の野間バレエ団が毎年恒例の公演を開催した。今年は22年間公演を続けてきた堺市民会館が立て替え工事中なので、会場をソフィア・堺ホールに移して行われた。演し物は野間景が改訂振付けした『パキータ』と野間康子演出・振付による『ロミオとジュリエット』。このうち『ロミオとジュリエット』は16年ぶりの再演だと言う。

osaka1411a_2316.jpg 「ロミオとジュリエット」撮影/(有)テス大阪

私は初見だった。周知のように『ロミオとジュリエット』には、ラヴロフスキー、マクミランを始め、クランコ、グリゴローヴィチあるいはナチョ・ドゥアトなど数え切れないほど様々なヴァージョンがある。しかし、今回、野間バレエ団の公演を観て初めて気が付いたのだが、それら既存の作品は、すべて男性の振付家によるものだったということ。世界的に男性の振付家の数が圧倒的に多いのだからそれは当然なのかも知れない。しかし、女性の振付家が振付けた『ロミオとジュリエット』の舞台を初めて観たことにによって、私には新鮮な発見があった。
『ロミオとジュリエット』といえば、まず、キャピュレット家とモンタギュー家の長く続く対立と、その仲の悪い両家の娘と子息の愛の悲劇、ということが、創る側にも見る側にも思いが至る。最近こそ少なくなったが、米ソ冷戦が続いた時代には家同士の対立が国家の対立へと敷衍されて捉えられることが多かった。パワーポリティクスといわれ、力と力による対立が否応なく背景に意識されたのである。その時代は既に過ぎ去ったが、どうしても男性振付家の場合は、闘争本能を刺激されるのだろうか、両家の対立による剣戟シーンが見せ場として創られている。
多くのヴァージョンは冒頭か、マキューシオとティヴォルトが死ぬヴェローナの広場のシーンでは、キャピュレット家とモンタギュー家の華々しい剣戟が繰り広げられる。ところが、野間康子が振付けた『ロミオとジュリエット』には、サーベルを振り回す剣戟シーンが全くないのだ。
物語はほとんど変更を加えていないから、ティヴォルトはマキューシオを後ろから短剣で差す。それに怒ったロミオは衝動的にティヴォルトを差す。その間のやりとりはすべてアクションを舞踊的に処理している。佐々木大(ロミオ)、山本隆之(ティヴォルト)、碓氷悠太(マキューシオ)、山本庸督(ベンヴォーリオ)という男性ダンサーたちの息の合った演技があってこその演出でもあるだろう。サーベルの剣戟シーンはどうしても対立する両家の問題をきわだたせるが、闘いのアクションは、個人的なドラマを顕在化する。ここに私は女性振付家のたくまざる視点を観た。両家の対立という政治的・社会的なリアリティからは遠ざかるが、その状況を越えた男と女の愛の情念は、深く燃え上がり、観客の胸を射ったに違いない。
野間景(ジュリエット)はもちろん、愛の悲劇を悲しく生きて、男性ダンサーたちの鋭い闘争と鮮やかな対比をなした。キャピュレット夫人を演じたユリア・レペットも乳母を演じた真鍋恵子も女性たちが生きる姿の一景を演じて印象を残した。
『パキータ』ではタイトルロールを踊った荒瀬結記子が主役デビューを果たし、初々しい踊りで新鮮な息吹きを感じさせて好演だった。今後に大いに期待したい。
(2014年10月4日 堺市 ソフィア・堺ホール)

osaka1411a_0106.jpg 「パキータ」荒瀬結記子 
撮影/(有)テス大阪
osaka1411a_0609.jpg 「ロミオとジュリエット」
野間景、佐々木大 撮影/(有)テス大阪
osaka1411a_0439.jpg 「ロミオとジュリエット」
碓氷悠太、佐々木大、山本庸督
撮影/正路隆文(テス大阪)
osaka1411a_0663.jpg 「ロミオとジュリエット」山本隆之
撮影/岡村昌夫(テス大阪)
osaka1411a_0893.jpg 「ロミオとジュリエット」
撮影/岡村昌夫(テス大阪)
osaka1411a_1149.jpg 「ロミオとジュリエット」撮影/(有)テス大阪
osaka1411a_0369.jpg 「パキータ」
中西智美、宇多田采佳 撮影/正路隆文(テス大阪)
osaka1411a_2082.jpg 「パキータ」撮影/岡村昌夫(テス大阪)