ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2014.07.10]
From Osaka -大阪-

中村美佳、寺田みさこが踊った、石井潤の新作『PERSONA』の濃密な表現

石井アカデミー・ド・バレエ、京都芸術センター
『PERSONA』石井潤;演出・振付

振付家・石井潤が新たな作品を発表してゆく企画の第一弾、石井潤創作集Vol.1『PERSONA』を観た。踊ったのは、寺田みさこと中村美佳の二人、共に多くの実績を持つレベルの高いダンサー。

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幕開け、暗めのライトの中、二人が背中合わせに身体をぴったりとつけて、お互いを意識し合いながら動く、二人は赤や緑、黄などのカラフルなゴムで縛り付けられるように繋がっていて、顔には仮面、金髪のウィッグ──生身の二人とでも言えば良いのか、何か生き物そのもののエロティックのようなものを感じる。繋がっていることで、片方がマリオネットになったり、関係性が少しずつ変わっていき、やがて仮面を外し、繋がっているゴムも外し、それぞれが個別に動くようになってゆく。それからはタンゴ風のショーダンスのような場面があったり、『牧神の午後への前奏曲』で二人のアンニュイなダンス、ドビュッシーの曲で中村のソロ、『カルミナ・ブラーナ』の曲で寺田のソロなど、それぞれのパートを抜き出しても濃密な見応えのある踊りが繰り広げられた。
繊細な透明感を持った美少女──中村美佳、射すくめられそうな凜とした意志の輝き──寺田みさこ、その二人が、愛、敬意、ライバル心……などなど、さまざまなお互いへの感情をにじみ出しながら踊る。明確なストーリーはなく、抽象的。これを観ることで、観た観客それぞれが、このダンスを鏡のようにして自らの内面をのぞき込めるような……。
そしてラストは、『アダージェット』で聴き慣れたマーラーの曲で、二人が穏やかに深く愛し合いながら死に近づいていく。お互いの首に手をあてて。それが“死”という結末で終わったのかどうかは明確ではない、“死”の香りのするラスト。
心に響く良い作品だと思った。そしてこの作品は、再演を重ねることでさらに磨かれていくのではないだろうか、と、そんな印象を持った。ぜひ、そんな機会も楽しみにしたい。
(2014年5月24 京都芸術センターフリースペース)

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『PERSONE』photo: 草本利枝(すべて)