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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2014.05.12]
From Osaka -大阪-

アルティ・アーティスト・プロジェクト第10回記念公演、望月則彦遺作『心中天網島』

アルティ・アーティスト・プロジェクト
『心中天網島』望月則彦:、河邉こずえ:振付・指導

昨年12月に亡くなった望月則彦の最後の作品。望月は、谷桃子バレエ団芸術監督として多くの作品を演出・振付、最近では2010年に手がけた『レ・ミゼラブル』が文化庁芸術祭大賞を受賞している。日本を代表する振付家として多くの作品を手がけており、新国立劇場開館間もない時期の『舞姫』が印象に残っている方もいらっしゃるかもしれない。
望月はまた、京都府立府民ホール“アルティ”を拠点に所属を超えたダンサーが集い公演を行う、「アルティ・アーティスト・プロジェクト(以下、AAP)」の芸術監督でもあった。彼の最後の作品はこのAAPでの『心中天網島』となった。病床の望月から託され、最後の仕上げを行ったのは河邉こずえ。

osaka1405a_0023.jpg 京都府立府民ホール“アルティ”提供

近松門左衛門原作の『心中天網島』は、大阪・天満の若旦那・紙屋治兵衛と遊女・小春の心中事件という実話に基づいた物語。これを、三味線や箏、尺八などの和楽器、パーカッションなどの和ではない打楽器も加えた音楽の中、花道に模した下手、黒子を使った人形ぶりなど和のエッセンスを効果的に活かし、優れたダンス作品に仕上げていた。和と洋が上手く融合したという形だ。
特に良かったのは、老舗の主でありながら恋におぼれる紙屋治兵衛(中田一史)と遊女・小春(福谷葉子)の踊りがクラシック・バレエに基づいたもので、地に足の付かない天を志向する──現実のあれこれから完全に目を離してしまっている二人ということを実感させ、それに対して、治兵衛の妻・おさん(山口陽子)の現実的な苦しみを大地を踏みしめるようなモダンダンスで表現したこと。中田、福谷、山口ともに優れたダンサーであり、その対比が際立ったことが、この作品のキーになったと感じる。おさんの父・樫野隆幸、治兵衛の恋敵太兵衛・桑田充、遊郭の女将・吉田ルリ子などのダンサーもよく脇を固めていた。
群舞も含め、作品制作中の望月の死という重い現実の中、心を一つにして作品に取り組んだことが想像できる。だからこその質の高さを感じる良い舞台だった。 
(2014年4月5日 京都府立府民ホール“アルティ”)

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osaka1405a_9911.jpg 京都府立府民ホール“アルティ”提供(すべて)