ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.10.10]
♪バレエ昔も今も♪BALLET OLD AND NEW♪
今年の夏は特に暑かったので、秋がきてもまた暑さが復活してくるのではないか、と不安にだった。その暑さにもめげず、夏休みには多くのバレエの発表会があり、海外で踊るダンサーたちの帰国公演もあった。今、海外のカンパニーで活躍しているダンサーたちも、子供時代には発表会で特別の気持ちを味わって成長していったのだろう。ダンサーが踊れる期間は短いから、若い頃から多くの先生や友だち、支援者と出会いドラマティックな出来事に遭遇することもある。
『ファースト・ポジション』に出演し、多くの国際コンクールで入賞して一躍有名になったみこ・フォーガティ。彼女はYAGPのニュ-ヨーク選考の会場から出てきたところで、偶然、後に映画『ファースト・ポジション』の監督をするベス・カーグマンと出会った。それからホームビデオの制作へと話がすすみ、さらには映画出演へと膨らんだ。みこと出会った時のベスは、何か新しい仕事をしようとは思っていたが、それがまさか映画監督デビューになるとは夢にも思っていなかったのだった。
人は人と出会って様々な道を歩んでいく。そこにはまた、もうひとつのドラマティックな運命が待ち構えているかも知れない。

From Osaka -大阪-

動きの流れの中に踊る歓び、楽しさそして優しさを織り込んだ堀内元のバレエ

堀内元バレエ USA IV 兵庫県立芸術文化センター
” Vivaldi Double Cello Concerto " " Save the Best for Last " " Romantique " 堀内元:振付

2010年から始まった「堀内元バレエ USA」も今年で4回目を迎えた。今回のゲストダンサーは吉田都。堀内と吉田は、ともに日本人ダンサーとして世界の舞台で活躍し盛名を馳せたが、拠点がアメリカと英国であったためにあまり同じ局面で話題になったことはない。この点について「ビデオ・プレゼンテーション」で堀内元が語ったところによると、若い頃はバレエコンクールのライバル。そしてミュージカル『キャッツ』では、唯一3都市(ブロードウエイ、ウストエンド、東京)を踊ったダンサーである堀内元は、ロンドン公演に訪れた際に吉田都のステージを観ている。さらにセントルイス・バレエの芸術監督になってからは、吉田都をゲストに招いて堀内元版の『くるみ割り人形』を踊った。しかし、同じ作品で共演するのは今回が初めてということであった。大陸は異なってもお互いに敬意をもって、その活動を見守っていたという関係だったのだろう。

osaka1310a_01.jpg 「Romantique」撮影:岸隆子

プログラムは3作品。どれも堀内元振付作品だった。
ダンサーはセントルイス・バレエ団のファーストアーティスト、森ティファニーを中心として海外のバレエスクールなどで学んだ経験のある者が選ばれている。アメリカで学んだ人が多いようだが、ヨーロッパ、ロシアで踊っているダンサーもいた。
まずは ” Vivaldi Double Cello Concerto " 。2004年にセントルイス・バレエ団に振付けた作品である。
女性4人2組と男性4人1組の3組のグループがペアとなったり、偶数を基本単位として分裂したり、組み合わさったりしつつ速いテンポで踊った。これ見よがしのフォーメーションの変幻には無関心で、ヴィヴァルディの音楽の雰囲気をしっかりと捉えた動きの流れが印象的なダンスだった。
そして「堀内元によるビデオ・プレゼンテーション」が行われ、セントルイス・バレエ団での活動が映像で紹介された。コンテンポラリー・ダンスも盛んに上演されている様子や、堀内元振付の『ロミオとジュリエット』の舞台映像の一部も披露された。
続いて上演されたのは " Save the Best for Last " で、1994年に東京で初演されている。バッハの音楽を使ったデュオ(川端千帆、末原雅弘)で、ライヴのピアノ演奏とともに、男性がクラシック・バレエ、女性はコンテンポラリー・ダンスというそれぞれのスタイルで踊った。おもしろかったのはそれぞれの動きが音楽と同調しているというよりも、2つの動き自体がだんだんと共振していき、やがては独特の一体感が感じられたことだ。振付家が二つの動きを同時に創っていく息遣いが見えた、と言えばいいのだろうか。音楽は振付家が創る動きをただ伴奏しているに過ぎず、動き同士に芽生えた関係が発展していく様子が感じられたのは興味深かった。94年の作品なのでコンポラリーの動きは少しズレた感じがしたが、そのズレがまた一つの味わいとなってダンスに滋味を加えていた。

osaka1310a_02.jpg 「Romantique」撮影:岸隆子

最後は " Romantique " 。2008年にセントルイスで初演された。Claude Bolling作曲によるクラシック、バロック、ジャズなどを織り込んだ音楽にのせて、様々な愛の姿を描いている。吉田都と堀内元がプリンシパルを踊り、ソフィストケイトされた軽快な雰囲気を醸している。特に吉田都は、ロイヤル・バレエのドラマティックなストーリー・バレエを踊るときとは違った、輝くような優しさで舞台を包んでいた。最初のシーケンスで黒いショートパンツと黒いソックスの堀内が、白いドレスの吉田を見て心が乱れる、とその堀内とまったく同じ格好の男性のコール・ドがいっせいに舞台に現れる。まるで孫悟空の分身の術のようでダンスのシーンとしても、とてもおもしろかった。こういったちょっとユーモラスで楽しい場面も随所に挿入されている。
堀内元は、さすがにバランシンから直々に薫陶をうけただけあって、ダンスを踊る心の素晴らしさを表わす術を心得ている。音楽を素直に受け入れて、自身のダンスを踊る心をゆとりをもって解き放っているのである。堀内の振付を良く心得た森ティファニーと男性ダンサーでは上村崇人が良かった。
(2013年8月30日 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール)

osaka1310a_03.jpg 「Romantique」撮影:岸隆子 osaka1310a_04.jpg 「Romantique」撮影:岸隆子