ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2012.12.10]
From Osaka -大阪-

向井華奈子の初リサイタル、振付作品を披露し4作品を踊った

藤田佳代舞踊研究所 向井華奈子モダンダンスリサイタル1
向井華奈子:構成・振付・演出(『SAND LOT』寺井美津子、金沢景子、菊本千永、かじのり子、平岡愛理:振付、『開く』藤田佳代:振付)

藤田佳代舞踊研究所のダンサー・向井華奈子の初めてのリサイタル。自作自演など多くの振付作品を披露、4つの作品を踊った。
最初に上演されたのは再演だという『柘榴』。坂本龍一の曲に乗せて、この地球上でのあらゆる災害や受難、そこからの再生、復活をと創ったもの。傷ついて倒れたように見える動きから始まる集中度の高い踊りに彼女の想いが詰まっているようだった。

osaka1212e_02.jpg 撮影:中野良彦

第2部のはじめに上演された『Phenomenon 私たちという現象』は、ゲストダンサーに堤悠輔、文山絵真を迎えて創られた新作で、向井と3人で踊られた。音楽はアルカンジェロ・コレッリ、KUMIKOによる映像とともに構成された。3人が自分の内面に向き合いながら、それぞれが関わり合う。“現象”というと、自分が他から感じるもののように思えるが、それがそうだとしても、3人いれば他の人に取っては自分も、その人に取って現象のひとつ。そして、その3人だって、さらに外側から観れば現象……そんな風に“現象”というコトバについて、しばし考えた。音楽にインスピレーションを得ながら組み立てた作品かと思うが、堤の動きの説得力が目を引くなど動きの面白さもあり、さらに練り直すともっと良くなるのではないかと思う。続いての『SAND LOT』は、舞踊団内の複数のダンサーがともに創った砂にまつわる3つのオムニバス。生と死、思い出、平和などを砂とからめて描いたものだった。
第3部ラストは、恩師である藤田佳代振付の『開く』。フェリックス・メンデルスゾーンとアウシュビッツ収容所のガス室で殺害された作曲家ヴィクトル・ウルマンの曲に乗せての反戦への想いを込めた作品。河内仁志のピアノ生演奏とともに上演された。抽象的だがゆるやかなストーリーを持った作品だ。鳥や魚といった役をダンサーたちが群舞で踊り、戦争が人間だけではなく全ての生き物にとって悲しいものであることを思い出させる。向井は恋人を戦争で亡くした女性を演じた。抑えた表現が、静かに戦争の悲惨さを浮きだたせ、作品を引き締めた。
全体を通して観て、師弟の作品ともに共通するものに気づいた。それは、表現方法が違っても“想い”を持って作品を創ろうとしていること。世の中をみて、その中で生きることから感じること、そこからスタートする作品づくり。いろいろな舞踊作品があるが、やはり、そういった作品の方が観客の心に響くと私は思う。ぜひ、これからも。
(2012年11月10日 新神戸オリエンタル劇場)

osaka1212e_01.jpg 撮影:中野良彦 osaka1212e_03.jpg 撮影:中野良彦
osaka1212e_04.jpg 撮影:中野良彦 osaka1212e_05.jpg 撮影:中野良彦
osaka1212e_06.jpg 撮影:中野良彦 osaka1212e_08.jpg 撮影:中野良彦