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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2012.04.10]
From Osaka -大阪-

アルティ・ダンス・カンパニーの『リア王』を題材とした『風の王様』

演出・振付:望月則彦、振付:河邉こずえ『風の王様』
アルティ・アーティスト・プロジェクト(A.A.P.)ブヨウ部門

京都府立府民ホール“アルティ”を拠点に振付家やダンサーが集うアルティ・アーティスト・プロジェクト(A.A.P.)ブヨウ部門、アルティ・ダンス・カンパニーの8回目の公演は、シェイクスピアの『リア王』を元にした『風の王様』。シェイクスピア作品というと、もの凄い量の言葉の洪水……そんな印象があるのだが、演劇の舞台で長時間にわたるシェイクスピア劇を見終わって、ふと我に返ると、心のなかに残っているのは、意外に抽象的な“人間”や“世の中”に対する想いといったことがよくあるような気がする。今回ダンスとして創られた『風の王様』は、もちろん、言葉=セリフはない、そして上演時間は65分ととてもコンパクト。だが、これがダンスの凄さで、膨大なセリフを聞いたあとに残る抽象的なものを、そのままポンと置かれたような舞台なのだ。

osaka1204b8472.jpg (C)京都府立府民ホール アルティ

リア王を踊ったのは梶原将仁。歳を経ることで、リア王の後悔、無常観のようなものが表現できるダンサーになって来ているようで、他の舞台ではなかなか観ることのできない深みを観せてくれたのが嬉しかった。今後、もう一歩、さらなる深みが加えられるダンサーになってほしいという期待も生まれた。清純な悲劇のヒロインをピュアに踊った宮澤由紀子、利己的な長女ゴネリル(福谷葉子)と次女リーガン(茨木万由里)も存在感が。特に、福谷のゴネリルは、悪役だからこそといえるような妖しい美しさも見せ、とても印象に残った。
この作品、風の吹きすさぶ音の中、後悔に肩を落とすリア王の姿から始まる。そして、抽象的に進む物語のなかで、読経が重なる。この物語を書いたシェイクスピアは西洋人だけれど、リア王の後悔や無常感を表すには、すべてを余所に運んでしまいそうな淋しげな風の音と、東洋的な仏教のお経というものが不思議なほど合っていることを感じた。古今東西、世の中というものは似たもの……人間というおのは愚かで……と、直接、言葉を介さずに私の心に訴えかけてくれた様に思える舞台だった。
(2012年3月10日 京都府立府民ホール“アルティ”)

osaka1204b8147.jpg (C)京都府立府民ホール アルティ osaka1204b8416.jpg (C)京都府立府民ホール アルティ osaka1204b8879.jpg (C)京都府立府民ホール アルティ
osaka1204b8560.jpg (C)京都府立府民ホール アルティ osaka1204b8562.jpg (C)京都府立府民ホール アルティ