ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2012.02.10]

竹中優花と武藤天華が踊った『くるみ割り人形(お菓子の国ヴァージョン)』

振付:貞松正一郎、長尾良子『くるみ割り人形』
貞松・浜田バレエ団
osaka1202d03.jpg 撮影:正路隆文

クリスマス恒例の貞松・浜田バレエ団の『くるみ割り人形』。2日間行われる公演を、「お伽の国ヴァージョン」と「お菓子の国ヴァージョン」、1日ずつ違う演出でみせる形で今回も行われた。
私が今回観たのは、25日のお菓子の国ヴァージョン。昔から、少しずつ手を入れながらこのバレエ団で長年上演し続けられている。クララが金平糖のグラン・パ・ド・ドゥまでを踊るものだ(ちなみに、「お伽の国ヴァージョン」の方は、クララと王子を迎えたお伽の国の女王と王がグラン・パ・ド・ドゥを踊る)。大きな流れは変わらず受け継がれているのだが、ねずみと兵隊の戦いの場面でコミカルに使われる担架に、さりげなく“ガンバレ日本!”という文字が書かれていたり、雪のシーンのはじめにイギリスではクリスマスにつきものの鳥だというコマドリが登場したりと、その年その年ごとの工夫が凝らされているのが、毎年、観る身にも嬉しい。
今回、有望な若手ダンサーの活躍が、何人も目に付いた。特に印象に残ったのは、まずフリッツを踊った水城卓哉のチャーミングな表情と確かなバレエの基礎に基づいた動き(彼は24日には、お伽の国の王子を踊っている)。2人目に雪の王やクッキー(トレパック)の中心を踊った塚原士朗の高いテクニックを爽やかにこなしての踊り。3人目に、お菓子の国の花の王女を踊った川?麻衣の美しく繊細なラインを活かしての踊り。彼女の白いバレエを観てみたいな……と思った。

osaka1202d04.jpg 撮影:岡村昌夫

そして、クララと王子を踊ったのは、昨年に引き続いて竹中優花と武藤天華。やさしく柔らかい動きで、美しいお姫様そのもののような竹中、カッコよくて、だけど王子の堅苦しさのようなものはそんなに感じさせず、やはり優しげな武藤。2人とも、とても高いレベルの踊りを見せてくれた。それを観ながら、この2人なら長い目で見れば、さらにもっと、2人だからこその独特の、もう一味のようなものをプラスした表現ができるのではないかと感じた。『くるみ割り人形』は少女の夢を描いた童話だけど、シンプルな物語であるからこそよけいに、金平糖の精の踊りのなかにミステリアスなものを感じるなど、ダンサーによって違った味が出てくるような気がする。彼ら独特のもう一味進んだ魅力を、今後、期待したい気がした。
とにかく、総合的にとてもレベルが高いと感じたこの公演、なかでも今も頭のなかに焼き付いたように印象に残っているのは雪のシーンだ。堤俊作指揮、びわ湖の風オーケストラ演奏の、バレエ公演としては、とてもスピーディな音楽の中、体型が複雑に変わり、テクニカルな動きが繰り広げられる。とにかく圧巻と言いたくなる鮮やかさで、ゾクゾクした。コール・ド・バレエの隅々までプロと言える踊り手がじゅうぶんに揃っているからこそできる雪のシーンだと思った。
(2011年12月24、25日 神戸文化ホール)

osaka1202d07.jpg 撮影:岡村昌夫 osaka1202d10.jpg 撮影:岡村昌夫
osaka1202d11.jpg 撮影:正路隆文 osaka1202d12.jpg 撮影:正路隆文
osaka1202d14.jpg 撮影:岡村昌夫 osaka1202d20.jpg 撮影:岡村昌夫