ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2011.12.12]
From Osaka -大阪-

地球に生を受けた尊さをうったえた『GATE』

振付:石原完二『GATE』、他
国民文化祭・京都2011『洋舞フェスティバル』

国民文化祭・京都2011の一環として行われた「洋舞フェスティバル」、全国各地から舞踊団体が参加して作品を発表した。

osaka1112d04.jpg 『SOMEWHERE IN BETWEEN』
撮影:清水俊洋

私は、あいにく10月30日はどうしてもスケジュールの都合がつかずに断念したものの、10月29日と11月3日は鑑賞することができた。多くの演目が上演され、興味深いものが多々あったのだが、今回は29日のオープニングアクトと京都企画に絞ってご紹介する。写真では、他の作品もいくつか見ていただけると思うので、雰囲気を想像していただけると嬉しい。

まず、最初のオープニングアクトとして上演された京都造形芸術大学 花柄パンツの『オンナオンナノコ』。最初、舞台の前に走り込んできて、ポップな音で激しく踊るポッチャリした女の子2人、そのお祭りのような迫力に圧倒された。その後、オンナのコのセキララな告白のセリフとともに繰り広げられる動きは、正直なところダンサーとしての訓練を重ねたとは思えないもの。ダンサーとして観客の前に立つ以上、それなりの訓練を経ていなければいけない──そう普段から思っている私の頭には「これはダンスと言えるのだろうか?」という思いがよぎる。だが、ダンスかどうかはともかくとして観ると、なんだかとにかく目が離せなくて、クスッと笑ってしまう作品なのだ。これは、ダンスではなくて、コメディか何かだと言えるのかも知れない。けれど、たとえば、身体はしっかり踊れるけれど、何も表現していない、伝わってこないダンス(そういうものは世の中にけっこうたくさんあると思う)と比べると、この方が観ていて楽しいことは確か、とそんな気がした。

osaka1112d01.jpg 『GATE─開かれるべき扉』
撮影:清水俊洋

そして、同じ日の最後、京都企画としての『GATE』、石原完二氏振付の作品だ。こちらは、クラシックの基礎が入った上に表現力のある“プロ”と言えるダンサーが多く出演したレベルの高い作品だった。これは、石原完二がベルリンの壁の崩壊後、世界の平和を祈って振付けたもので、数年前に創られ今回は再演。今回、3月の東日本大震災や福島原発事故から感じたことをプラスして、創りなおされたものだ。戦争という人災と自然災害は違うのではないかと考えそうになるが、「この地球に生を受けた尊さをあまりにも軽んじ、地球環境に大きな問題を突きつけられているような気がする」と、石原はプログラム冊子に書いている。問題の根はどちらも同じなのかもしれない。
壁を越えようとして、射殺されてしまう人々の姿に始まる舞台、民族舞踊的な踊りや、命からがらの男女によるパ・ド・ドゥなど、さまざまな場面を経て、多くの人によって叩かれた壁が開き、喜びの歌が響き渡る。
なかでも良いダンサーによるシーンがやはり心に残っている。塚本士朗と井澤照予による、透明感のあるピュアな“鳥の歌”の場面に心洗われるような気持ちになり、今回新たに加えられた原美香のドイツ人マダムのような意志の強い眼に射すくめられ、佐々木大と藤川雅子の緊迫感溢れるパ・ド・ドゥが大きく心に響いた。佐々木大と原美香は、今回、この作品に新たに加わったダンサーだが、彼らの存在感はとても大きなもので、確実にこの作品をパワーアップしていたように感じた。
また、最後の喜びのシーンはたっぷりと繰り広げられ、明るい気持ちでホールを後にすることが出来た。
(10月29日、11月3日 京都府立府民ホール“アルティ”)

osaka1112d02.jpg 『僕と何かの物理的な行為の関係』
撮影:清水俊洋
osaka1112d03.jpg 『Outgoing』
撮影:清水俊洋
osaka1112d05.jpg 『地図~fadeless~』
撮影:清水俊洋
osaka1112d06.jpg 『...to have』
撮影:清水俊洋
osaka1112d07.jpg 『Bolero』
撮影:清水俊洋
osaka1112d08.jpg 『オンナオンナノコ』
撮影:清水俊洋