ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2011.10.11]
From Osaka -大阪-

キエフ出身の気鋭の振付家イワネンコによる『白雪姫』

振付:ヤロスラフ・イワネンコ『白雪姫』
子供の城アートセンター
osaka1110c01.jpg 撮影:高須克之(テス大阪)

主催は、NPO法人子供の城アートセンター、出演は京都バレエシアターとその母体である寺田バレエ・アートスクール。寺田バレエアートはキエフ国立バレエ学校と35年以上も前から姉妹校提携を結んでいて、京都バレエシアター芸術監督の寺田宜弘は、キエフ国立バレエ学校を卒業しキエフ・バレエのソリストとして活躍中。振付のイワネンコは寺田の友人である。
この『白雪姫』のプロジェクトは、キエフ・バレエ出身のイワネンコがハンブルグ・バレエ在籍中に話が進んだ。イワネンコの振付の才能を見込み、寺田は全幕の創作を依頼、エレーナ・フィリピエワを主役に迎えての、昨年、びわ湖ホールでの初演は大成功。それを受けて今年は、ウクライナ独立20年、京都・キエフ姉妹都市提携40周年を祝して京都会館で再演した。
イワネンコは振付の才が認められ、今年からドイツ・キール州立歌劇場バレエの芸術監督に就任、多忙を極めている(この秋にはキールで『くるみ割り人形』を発表予定)が、やはり、彼にとって初めての「子供のための全幕作品」、しかも京都の地での再演には、特別な思いがあるようで、今回も来日、自ら王様役も演じた。

子供も楽しめる童話のバレエでありながら、大人も感動できたのは、音楽のセンスが良いから。モーツアルトとベートーヴェンの曲から編まれた楽曲は、この作品のために作られたかと思うほど自然に場面を彩っていく。第一幕の宮廷のシーンはロココ調。その時代風の巻き毛のカツラをつけた王や貴族たちの姿は絵本から抜け出たようだ。王に幸せそうに寄り添っていた王妃(太田那豊美)が急に倒れ、次のシーンには、幼い白雪姫を連れ、うなだれたような王だけが登場する-というように、ドラマ展開はスピーディでわかりやすいが、決して説明調ではない。白雪姫は、少女からキエフ児童劇場のプリマ川崎亜香里まで3人が、成長過程を見せつつ「リレー」して演じ、王子も同じように3人が踊り継いだ。王子と白雪姫は幼なじみで、二人はやがて愛し合うが、継母は、その交際を認めない、という設定にしたことは、「王子のキスで目覚める」ラストに説得性を強めた。
川崎は、長年プロとして数多くの舞台に立っているだけあり、さすがの安定性。愛らしい白雪姫を表情豊かに演じた。王子役、キエフ・バレエ団のコンスタンチン・パジャルニツキーも、基本に忠実な動きで「王子像」を創り上げた。継母役の岩崎純子も難しい役に真摯に取り組んでいた。演出はもちろん、豪華な舞台美術にも感じられた「こだわり」は、キエフのシェフチェンコ劇場という大舞台で踊り続けている寺田と、ヨーロッパでセンスを磨いてきたイワネンコの「本物志向」の表れだろう。
(2011年8月21日、京都会館)

osaka1110c02.jpg 撮影:高須克之(テス大阪) osaka1110c03.jpg 撮影:正路隆文(テス大阪)
osaka1110c04.jpg 撮影:高須克之(テス大阪) osaka1110c05.jpg 撮影:高須克之(テス大阪)