ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2011.06.10]
From Osaka -大阪-

なにわ芸術祭で新人賞を受賞した堤靖子、森田玲子作品ほか

全日本洋舞協会合同公演

なにわ芸術祭の一環として行われた全日本洋舞協会合同公演。18の演目が上演され、その中から「なにわ芸術祭新人賞」に2人が選ばれた。舞踊作家部門で『irreplaceable』を振付、大前光市とともに踊った堤靖子と、ダンサー部門で『片翼の堕天使』を、加藤きよ子指導のもとで自作自演した森田玲子。2人の作品が良かったのはもちろんだが、他にも印象に残ったものがあるので、ピックアップして写真でご紹介するとともに、いくつかだけになってしまうがレポートする。

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Y's Dance Art Companyの『風がふくとき』(振付:岡田康恵)は、ゴムひもを伝うように現れたダンサー4人(長井久恵、松尾美季、富田佳世、工藤茜)が、そのゴムひもが取り払われた舞台で、ピアノの音色にのった優しくナチュラルな歌声の中で自然に踊り始める。後半は「上を向いて歩こう」のアレンジバージョンの流れる中で、それぞれが上を向き、上に手をやり、上を志向して踊る。気負わない前向きなものを感じた。
続いての瀧口順子舞踊研究所の『心は一人ぼっち』(振付:山下薫)は、よく伸びる服を着たダンサー達が服をひっぱり“他人との関わり”を求め合って踊る。この今の時代に蔓延している心の空虚感を描いていたように思えた。
北海道から参加したビィ・ボディ・モダンの『100%の〜』(振付:大前光市、坂見和子)は、坂見が血縁について思ったことをもとにした作品。大前が義足を外した状態で、坂見が演じる一族の長のような存在からヒモで繋がれて苦しくても逃れられない状態を描く。加えて若い女性ダンサー・見上珠恵と前山香奈が首を赤いリボンで繋がれた状態で、4人があやとりのように絡まるなどしてのダンス。逃れようのないしがらみへのどうしようもなさが視覚的に表され、その恐さに思いを馳せさせる作品だった。

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この公演中で、もっとも迫力を感じたのは、ダンサー部門の新人賞に輝いた森田玲子の『片翼の堕天使』。片手を身体に赤いロープでしばった状態で、自由を求めるように、いや、それ以上の何かを求めるように激しく踊る。身体が自由ではない状態で踊るからこそ出る不思議な感覚。そして、後半、爆発するようにロープを身体から荒々しく取り払うと、地を叩き、天を扇ぐようにさらに激しく踊る……。心にストレートに響くものがある踊りだった。その次に上演されたのが舞踊作家部門で表彰された堤靖子の『irreplaceable』。タイトルを訳すと“かけがえのない”といった意味の、振付者本人と大前光市の男女のパ・ド・ドゥ。落ち着いた大人の男女の関係を思わせる、ちょっとせつなさも感じさせるダンス。美しい作品だった。
他にも数々の作品、クラシック・バレエやフラメンコも上演、盛りだくさんなラインナップで楽しませてくれた。
(2011年5月15日 サンケイホールブリーゼ)

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撮影:尾鼻文雄
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