ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2011.02.10]
From Osaka -大阪-

神戸に根づく貞松・浜田バレエ団の『くるみ割り人形』 

演出:浜田蓉子『くるみ割り人形』
貞松・浜田バレエ団
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1998年から毎年クリスマス・シーズンに神戸市と神戸文化ホールが主催、2005年からは従来の「お菓子の国ヴァージョン」に加え、「お伽の国ヴァージョン」を一日ずつ上演している。貞松・浜田バレエ団の『くるみ割り人形』は、いまや神戸の冬に欠かせない。
さて、2010年は、12月18日が「お伽の国ヴァージョン」で19日が「お菓子の国ヴァージョン」。どちらも大きな物語の流れは変わらないが最終幕のグラン・パ・ド・ドゥを、前者ではクララと王子ではなく、お伽の国の王女と王が踊り、後者では、金平糖の精の王女となったクララと王子が踊る。19日を見た。
長年上演しているこのヴァージョンは、見どころが満載。まず一幕では、パーティの客人たちのダンスまでも飽きさせない。少年たちも全員本物の男の子(という表現もヘンだが、日本では、女の子が男の役を演じことが多い。もちろん少年不足のため)。その少年たちが何とも可愛らしいのだ。医事顧問官であるドロッセルマイヤー(原典のプティパ台本の下敷きとなったデュマ版に沿っている。ちなみにホフマンの原作ではドロッセルマイヤーは裁判官。貞松・浜田バレエ団では、デュマ版の訳本を出版している)役は、長身の川村康二。少々不気味だが優しそうな紳士を好演していた。

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子供たちを喜ばせるフランス人形役、佐々木優希は愛らしく、騎士人形役の恵谷彰は、メカニックな動きを魅力的に見せていた。真夜中の戦いでは、ネズミはセリ(舞台下)から登場、天井から吊られたロープにぶら下がって大暴れ。大人の観客でもワクワクするシーンだ。ネズミの王様に部下は、キラリと光る刃を向けて刀を手渡す。それを掴んだ王様は「イタッ!」。小ネタが散りばめられているのは、関西人が創り上げる舞台ならでは。サービス精神が溢れている。クララは、この役を久々に演じるという竹中優花。愛らしく好奇心旺盛な少女を表情豊かに演じ、観客を物語に引き込むことに成功していた。
やがて、くるみ割り人形は、お菓子の国の王子に変身。王子役は、ぴったりの容姿の持ち主である武藤天華。絵本から出てきた王子さながらのエスコートで、クララを雪の国に案内する。雪の王女と王役、廣岡奈美&エルフィンストンの歯切れの良いステップは心地良い。
特筆したいのは、雪のコール・ド。その軽やかさとスピード感、そして幻想性は何度観ても見飽きない。2011年の干支に因んでか今回は、可愛いウサギも登場していた。

第二幕の冒頭はクリスマスの森。天使たちが二人を歓迎する。ここも試行錯誤を経て、素敵なシーンに仕上がっていた。
天使役の少女たちは床を滑るように移動することで宙に浮かぶよう。イチゴやブドウなどの可愛い衣裳のフルーツの精が登場し、いよいよお菓子の国へ。中国の踊りには再び恵谷が登場、シャープ&正確な動きで場内を沸かせていた。フランスの踊りは、エルフェンストンが活躍。ローズ色のパンツにストライプの上衣という派手で甘いコスチューム、優しい笑顔、スマートな踊り、すべてに調和がとれている。この人のために作った役のように思えた。
ロシアの踊りは、このバレエ団出身で、このナンバーの振付者である秋定信哉自らが芯をダイナミックに踊っていた。花の女王は、小柄ながらまさにプリマの威厳を身につけた上村未香。王子役の若手、水城卓哉をさりげなくリードし、物語を盛り上げていた。竹中&武藤のグラン・パ・ド・ドゥは華やか。だが、ここでは少女と王子ではなく、王女と王子としての重厚さがもう少し欲しいところ。竹中はもっと陶酔感があっても良いし、武藤はもっとクラシック・バレエの規範に沿う事で王子らしさは増すはず。全体レベルが非常に高いため、主役への期待や要求も自ずと高くなる。このバレエ団は、そうして全体水準とともに個々のダンサーのレベルも向上させてきた。若い二人にもそれを大いに期待したい。
(2010年12月19日 神戸文化ホール)

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撮影:古都栄二 / 正路隆文(テス大阪)
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