ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.12.10]
From Osaka -大阪-

深い情感が鼓動し呼吸した野間景、高岸直樹の『ジゼル』

振付:野間康子『ジゼル』
野間バレエ団
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野間バレエ団が第19回定期公演として『ジゼル』を上演した。野間バレエ団にとっては3回目の上演で、1999年にイルギス・ガリムーリンを招いて初演し、2005年には東京バレエ団のプリンシパル、高岸直樹を迎えて上演している。ヒロインのジゼルを踊ったのはプリンシパル野間景で、今回の5年ぶりの上演でも高岸直樹とともにコンビを組んだ。振付は野間康子。

バレエ団の総監督でもある野間康子のステージングは、女性らしく細やかな気持の通った配慮が行き届いている。
1幕はマイムが効果的にロマンティックなドラマの雰囲気を醸した。例えばバチルド姫がジゼルにネックレスを贈るシーンも、通常では初対面の村の少女に自身が掛けていたものを、結婚を迎える女性同士として共感したとはいえ、気前よく渡す展開にはやや違和感を感じてしまうものだが、よく咀嚼された丁寧な表現で登場人物の気持ちを率直に表した。他にもヒラリオンのジゼルの母ベルタへのさり気ない気遣いや、伝説として語られるウィリの森の恐ろしさなどといった、1幕では特に重要な物語のディティールが説得力ある演出で描かれていた。

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そして豪華キャストが生きたぺザントのパ・ド・サンク。ここはパ・ド・ドゥですっきりまとめるか、パ・ド・シスやパ・ド・サンクなどを使って祭りのエネルギーの昂まりを表現するか、この作品の振付家の工夫の見せ所でもある。
野間康子は、ヒラリオンに青木崇、ウィルフリードに今村泰典、クーランド公に岩本正治、ベルタに真鍋恵子を配し、またペザントや村の青年に恵谷彰、奥村康祐、北村俊介、高須佑治などを起用して、オール関西とまでいってはあるいは異論が出るかも知れないが、贅沢なキャスティングを組んだ。
すると旬の男性ダンサーを中心にした闊達な踊りが盛り上がって、収穫祭のシーンはダイナミックな躍動感が溢れたものとなった。その強烈なインパクトが観客の胸に響き、青木ヒラリオンと高岸アルブレヒト、野間ジゼルの愛の悲劇をいっそう深い悲しみに沈めた。
そしてその浮き彫りにされた情感は、2幕で奏でられた婚礼を目前にして命を落としたウィリたちの悲しい歌を艶やかに染める。こうして喜びと悲しみの奥深い感情が鼓動し、呼吸する活き活きとした舞台が演出された。

高岸アルブレヒトは終始落ち着いた踊りで、ドラマティックなシーンでは力を込めて全身で表現するメリハリのある演技と踊りだった。野間景のジゼルはまず、狂乱のシーンでは追い詰められて行き場を失った恋がしだいに色を失い、やがて混乱に陥り、ついにすべてを喪うまで、ヒロインの心理を細やかに表情に表しながら見事に踊った。2幕のウィリとしては常に優しさを湛えた柔らかい踊りで、過酷に踊らされ続けるアルブレヒトを深い愛情を表しながら思いやった。それはまた、ミルタを踊ったワガノワ舞踊アカデミー出身の ユリア・レペットが掟の非情を巧みに表したことによって、さらにいっそうコントラストが際立ってじつに効果的でもあった。久しぶりに鮮烈なミルタに出会った思いである。
野間バレエ団の『ジゼル』は、このようにさまざまな相乗効果が良い方へと作用して優れた舞台を創った。これは野間康子のバレエへ、また『ジゼル』へと注ぎ込まれてきた情熱が結晶したものといえるだろう。
(2010年11月7日 堺市民会館大ホール)

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撮影:岡村昌夫/阿部綾子(テス大阪)
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