ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2010.03.10]
From Osaka -大阪-

『韃靼人の踊り』の群舞、自然な物語の流れ『ジゼル』

田上世津子:演出・振付『韃靼人の踊り』、石川愉貴:演出・振付『ジゼル』
日本バレエ協会関西支部バレエ芸術劇場

37回目を迎えた日本バレエ協会関西支部主催のバレエ芸術劇場。今年の演目は『韃靼人の踊り』と『ジゼル』、ガラっと雰囲気の変わる2演目だ。

まず上演されたのは、オペラ『イゴール公』からのバレエシーン『韃靼人の踊り』。ロシアのワガノワメソッド教師研究科に留学してライセンス修得後、バレエ協会関西支部でセミナーや舞台を通してワガノワメソッドと常に向かい合っている田上世津子が、その経験を活かし演出・振付を担当した。当初、少女役を予定されていた逸見澄子が怪我のため山下摩耶に変更。明るい笑顔で無邪気な少女を踊り、対して奴隷の女役の高木志保は大人の憂いたっぷりに妖艶な魅力を見せた。この演目でなんといっても印象に残ったのは、荒々しい男性群舞とその中心である隊長を踊った青木崇。関西の男性は荒々しい踊りで力を発揮するダンサーが多い。なかでも青木崇は、いつも甘いマスクで王子役も好演するダンサーなのだが、髭をつけて踊る姿は別人かと思うほどの迫力。ワイルドな魅力と確かなテクニックに惹きつけられた。

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後半は『ジゼル』。石川愉貴による演出は、脇役を含めたそれぞれの役柄の立場や心情に留意して、物語を自然な流れにするよう細かい工夫が多々凝らされており、初めてこの作品を観る観客にも分かるようにという配慮がうかがえた。ジゼル役は法村珠里、登場から主役の華を持つダンサーであることを実感した。
1幕のヴァリエーションでは高く上がる脚をとてもきれいに使い、ゆっくりとしたアチュチュードターンのコントロールも良く清純さも感じられて良かった。良いダンサーだからこそ敢えて欲を言えば、狂乱から2幕への深みがもっと欲しいところではある。とはいえ、まだ若い彼女、それは世界中のプリマが何度踊っても満足しきれない難しいことだから、これからの課題といえるだろう。アルブレヒトは奥村康祐、彼は日本人には珍しい貴公子らしい雰囲気を持つダンサーだが、加えて内面表現も出来る人だと実感した。彼は単なる王子役も良いけれど、こういった深みが出せる役の方が、より力を発揮できるのではないかという気がした。
また2幕のミルタ(楠本理江香)の凜とした大きな踊りも良かったし、コール・ド・バレエが交差するアラベスクの高さはゾクッとするほど揃っていて、多くの団体が集まっての公演でありながら、ここまでに仕上げられていることを素晴らしく感じた。
(2010年1月30日 グランキューブ大阪)

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撮影:岡村昌夫(テス大阪/田中聡(テス大阪)
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