ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2009.05.11]

ヴァルナ金賞の金子や横内が活躍した地主薫エコール・ド・バレエ

地主薫 演出・振付『コッペリア』ほか「HARMONIE SUR SCENE'20」
地主薫エコール・ド・バレエ

このところ話題の多い地主薫エコール・ド・バレエ。昨年、ヴァルナ国際コンクールでは、所属の金子扶生がジュニア金賞を受賞、『ロミオとジュリエット』の舞台は、大阪文化祭グランプリを受賞している。
加えて、金子扶生がヴァルナの祝賀パーティで、ハンガリー国立歌劇場バレエの団長ガボー・ケヴェハジからオファーを受け、昨年末にハンガリーで2日間『くるみ割り人形』を主演した。彼女はまだ17歳で、日本でも全幕の主演経験はない。ソロでのコンクール優勝はあるが、パ・ド・ドゥの練習も最近始めたところだという。にも関わらず、きちんとした基礎が身についている強さだろうか。クリスマス前の満員の劇場で彼女のデビューは盛大な拍手を持って迎えられたのだそう。
終演後、今シーズンから正式にプリンシパルとして迎えたいというガボーからのオファーを受けたことでも、その出来の良さがうかがえる。しかし「まだ学生なので」と辞退した金子、しばらくは日本の地主のもとでレッスンを重ねるという。冷静に自分を見つめる眼も伸びる理由なのだろう。その後もさまざまなオファーを受けている彼女、この4月28日、ラトビア国立オペラ座で行われる14th  Baltic Ballet Festivalに奥村康祐とともに出演。ポーランドからも出演のオファーがあるという。実力をさらに磨いて、これからどこまで伸びるのか、とても楽しみなダンサーだ。

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さて、そんな金子扶生も出演した地主薫エコール・ド・バレエ「HARMONIE SUR SCENE'20」。多くの演目が上演されたこのコンサートを観て、良いダンサーが育っている理由が少し分かったような気がした。
特に印象に残ったものをご紹介しよう。まずは、奥村唯と奥村康祐の『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ。それぞれさまざまな舞台で活躍しているが、なんと、兄妹でのグラン・パ・ド・ドゥを舞台で踊るのは今回が初めてなのだという。2人ともパが正確で観ていてとても気持ちが良い。喜びが体から溢れるようで滑らかな奥村唯の踊り、回転も美しくて、とても良いパ・ド・ドゥだった。
金子扶生と足立まどか、川口紗希と3人の伸び盛りのダンサーが踊ったのは『MASK』。もともと倉永美沙がモスクワ国際コンクールで踊った地主の作品。ソロだったものをアレンジしての上演だ。イスを使い、マスクをつけた3人が踊る、体の可動域の広さが素晴らしく広く自由自在という感じ。はじめマスクを顔につけているのかと思っていたら、それは頭で後ろ向きだった……そんな意外性も面白く見入った。

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最後は『コッペリア』全幕。スワニルダの横内芙美は、明るい魅力で演技もスムーズ、好感が持てた。フランツの佐藤航もにこやかで優しく、今時の男の子っぽい茶目っ気も上手く出て良い感じ。さまざまなプログラムの後に全幕というのは、それなりに長い発表会になるわけだが、ここでは、毎年全幕を上演することにしているのだという。小さな時から、その隅っこであっても、全幕に触れている生徒たち──だからこそ、物語のなかの表現というものが体に染みついて、ヴァリエーション1曲のなかにも深みを加えられるようになるのだろう。そしてまた、金子が突然のハンガリーからの全幕オファーをこなしきれたのも、このあたりに基があるのだろう、そんな気がした。
(2009年4月2日 大阪国際交流センター)

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