ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.12.10]
From Oita -大分-

首藤康之振付『くるみ割り人形』の動きの軌跡が描いた美しい躍動感

演出・振付:首藤康之『くるみ割り人形』
笠木啓子バレエ研究所
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九州、大分市の笠木啓子バレエ研究所は創立50周年を迎えて、首藤康之振付の『くるみ割り人形』全幕を上演した。
首藤は9歳でこの笠木啓子バレエ研究所でバレエを始め、15歳の時に東京バレエ団に入団。その後はベジャール、ノイマイヤー、キリアン作品からマシュー・ボーンの『白鳥の湖』の主役を踊り、近年ではシティ・ラルビ・シェルカウイの『アポクリフ』を世界初演して各都市をツアーするなど、国際的に活躍していることはよく知られている。
バレエダンサーとして多くの舞台経験を重ねてきた首藤康之が、今回、初めて古典バレエの全幕を演出・振付けた。

首藤康之振付の『くるみ割り人形』は物語に大きな変更をくわえず、オーソドックスに創られていた。
当初、クララ役は西田佑子が予定されていたが怪我のため、バレエシャンブルウエストのプリマ、吉本真由美に代わった。王子はライプツィッヒ・バレエ団で活躍した横関雄一郎、ドロッセルマイヤーはウズベキスタン出身のワレリー・グーセフ、雪の女王に佐藤香名、雪の王には東京バレエ団で踊った後藤和雄、お菓子の国の女王に又見友紀、お菓子の国の王には牧阿佐美バレヱ団の今勇也が出演した。
笠木啓子バレエ研究所は1961年に創設され、古典バレエ全幕物を中心として活動しているが、創作バレエや『レ・パテヌール』『牝鹿』なども上演している。また、児童バレエにもたいへん力を入れていることを活動年表からうかがい知ることができる。
そうしたことからか、首藤の振付を踊る子供たちはじつにしっかりとした踊り。シュタールバウム家に集まった子供たち、ねずみたちやおもちゃの兵隊、そして2幕冒頭に登場する天使たち、みんなきちんと踊られていて感心した。そしてそれは首藤振付の群舞の優れたフォーメーションにも感じられたこと。

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雪のシーンはキラキラ輝くだけでなく、舞い散る様をダンサーたちの動きの軌跡によって表して、美しい躍動感があった。花のワルツも活き活きとした生命力を感じさせる見事な振付。平面的でない動きのある動線を使ったというか、ただ形通りに図形から図形に移動するだけではなく、一瞬一瞬の動きの軌跡が美しく感じられる。幾何的にコール・ドが描く図形の変化の面白さではなく、動きの塊が創るリズミカルに呼吸するフォーメーションと言えばいいのだろか。まるでバランシンの『ラ・ヴァルス』を観ているかのようで、魅力的な近年出色のワルツだったと思う。
物語もきちんと解釈がとうっているし、背景に暗幕を多用したり、幕開きにタイトルを映像でみせる演出も気が利いている。吉本クララも横関王子もコール・ドとよく調和して明快な踊りをみせたいい舞台だった。ドロッセルマイヤーが多彩な魔術を駆使するわりには人のいい叔父さんに過ぎなかったという気がしないでもないが、初めての試みにも関わらず観客の期待を裏切らずに新鮮な振付を披露した実力は、今後、大いに期待できる。
(2010年11月21日 iishikoグランシアタ)

写真提供:笠木啓子バレエ研究所