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星野 聖子 text by Seiko Hoshino 
[2013.05.10]
From Nagoya -名古屋-

シニア・ジュニアダンサーたちの新鮮さと個性溢れるバレエコンサート

川口節子バレエ団
「フレッシュバレエコンサート2013」

名古屋地区には優れたバレエ団が数多くあるが、川口節子バレエ団を見逃してはならない。同バレエ団は独自性が高く、観客の心に響く演出を生み出してくれる。主宰者の川口節子は古典バレエ作品だけにとどまらず、自ら創作作品を振付け、毎回ユニークな演出で客席をあっと言わせる。その川口バレエ団が「フレッシュバレエコンサート2013」を開催した。この「フレッシュバレエコンサート」は、「ジュニア・クラスの生徒たちにも古典ヴァリエーションを踊る機会を与えたい」という川口の思いから1998年に始まった。今回はその16回目。
公演はPart 1とPart 2の2部構成。それぞれの部ではジュニアダンサーたちがヴァリエーションや創作作品を踊り、日々の練習の成果を存分に披露した。同バレエ団シニアメンバーたちももちろん出演。さらに、特別出演として中弥智博(松岡伶子バレエ団)、牧村直紀(ゆかりバレエ)も本公演に参加した。

nagoya1305a_4685.jpg 撮影/ミヤビフォト

出演者全員によるオープニングのパフォーマンスで会場が明るく柔らかい雰囲気に和んだ後、いよいよPart 1が始まった。
『ドン・キホーテ』『眠れる森の美女』『コッペリア』『白鳥の湖』『ライモンダ』など、Part 1だけでも合計21演目のヴァリエーション作品を見ることができ、公演前半ですでに十分な見ごたえだった。音楽に乗って全力で踊るジュニアダンサーたちの表情は笑顔でいっぱい。それぞれの役柄を自分らしく表現したいという気持ちがわってきた。
Part1の最後に登場した宮本直美・牧村直紀ペアによる『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥでは、宮本の初々しさと目映さが全面に表れ、牧村のエスコートによりその美さがさらに際立った。牧村はエネルギッシュなジャンプと回転で観客を魅了。その完成度の高さは見ている側の「もっと見たい」という願望を強く掻き立てた。
Part 2では、『パキータ』『ジゼル』『エスメラルダ』などのヴァリエーションが19作品と創作が2作品発表された。創作作品の1つ目は川口節子振付の『雨に唄えば』。
作品が始まると同時に同じトレンチコートを着た大勢の出演者が一斉に登場したので驚いたが、その後ステージに現れたのは3人のジュニアダンサーのみ。この切り替わりが興味深かった。3人のジュニアたちは、頭に帽子、手には傘、上下ともチェックの衣装を身につけて、なんとも可愛らしかった。アメリカの有名なミュージカル映画「雨に唄えば」の主題歌とともに、手に持った傘を巧みに操りながらリズミカルに体を動かした。そして、もうひとつの創作作品は『Hermione』。同バレエ団で若手ダンサーの指導も行う太田一葉が振付を手掛け、自身と太田沙紀の二人で出演した。作品のタイトル『Hermione』は、名作「ハリー・ポッター」の登場人物に由来するとのこと。会場には「ハリー・ポッター」のストーリーを英語で読み上げる男性の声が鳴り響き、さらにまったくジャンルが異なると思われる音楽をその音声に重ね、全体をブレンドするという、非常に個性的な音楽の使い方が印象的。また、振付にも太田一葉のセンスがいたるところに散りばめられていた。出演者の二人がそれぞれ気の向くままに体を動かしていると見せて実は息が合っており、ジャンプやリフトのタイミングがぴったりだったり、落ち着いたトーンで踊るのかと思えば、本当はとても快活だったり、終始、意外性たっぷりの作品だった。
Part 2最後の演目は川瀬莉奈・中弥智博ペアの『白鳥の湖』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。川瀬は若手ダンサーではあるが、黒鳥オディールとしての十分な妖艶さを出しており、腕の使い方が滑らかで美しかった。中弥は上品で優しい王子役を演じつつも、ソロでは力強くめりはりの効いた回転を披露。二人が最後にポーズを決めると客席からは拍手が沸き起こった。
本公演の内容は豊富なヴァリエーション作品と創作作品が上演され、気分はまるで「ガラ」を見ているようだった。約3時間の公演だったが、あっという間に感じられたのは私だけではないと思う。それくらい各ダンサーや作品によって違ったテイストを味わえる公演だった。
(2013年4月6日 長久手文化の家 森のホール)

nagoya1305a_4816.jpg 撮影/ミヤビフォト nagoya1305a_5221.jpg 撮影/ミヤビフォト