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星野 聖子 text by Seiko Hoshino 
[2012.12.10]
From Nagoya -名古屋-

演技派ダンサーの表現力が光った5年ぶりの深川秀夫版『シンデレラ物語』

テアトル・ド・バレエカンパニー
『シンデレラ物語』塚本洋子:制作・監修、深川秀夫:振付・芸術監督

2012年芸術の秋に私たちを魅了してくれたテアトル・ド・バレエカンパニー公演は、深川秀夫(同カンパニー芸術監督)による『シンデレラ物語』だった。1995年に「ナゴヤ・テアトル・ド・バレエ団」として設立されて以来、『白鳥の湖』や『ジゼル』などの作品を上演してきたカンパニーは2007年に初めて『シンデレラ物語』を披露。今回で2度目のシンデレラ公演となった。主役シンデレラを踊ったのはテアトル・ド・バレエアカデミーで講師も務める山有紗。王子役はカナダGoh Ballet Companyゲストアーティストであり、現在は名古屋を拠点に活躍している梶田眞嗣。音楽はプロコフィエフ。オーケストラはセントラル愛知交響楽団によるものだった。
さまざまな演出方法や振付の種類がある中、深川秀夫はクラシックの性質を舞台の最後まで保ちながら、彼独特の表現方法と新しいスタイルで観客を楽しませてくれた。

osaka1212b01.jpg 撮影:岡村昌夫

第1幕はシンデレラの家の場面。灰色の服を着て掃除をしているシンデレラに明るい様子はない。しかしそこへ父親がやってくる。シンデレラにとって、父親と会話できる時が唯一笑顔に戻れる時間であるようだ。山有紗のこの「暗」から「明」への変化にめりはりがあり、気持ちがよく表されていた。しかし父親との時間も束の間、シンデレラに対して嫌味たっぷりな義母と義姉妹が現れる。彼女たちの表情は険しい。グランバットマンのように足を高く上げてから一気に振り下ろしたり、パ・ド・ブレなど足先の強く小刻みな動きで威嚇したりと、心優しいシンデレラを徹底的にいじめ抜くシーンを細かく表現した。この時のシンデレラの健気で寂しげな態度が痛々しかった。しかし奇跡的に仙女が現れ、妖精たちによって舞踏会に着ていくドレスや靴、ティアラが用意され始める。可愛い妖精たちがこの衣装と小物をひとつずつ運んで登場する場面にも深川秀夫のセンスが光り、見ている側の心を躍らせた。
第2幕の舞踏会で王子とシンデレラが出会うシーンはドラマチックだった。王子役の梶田眞嗣は技術レベルも高い演技派のダンサーである。シンデレラにひと目惚れする際の感情の込め方が巧みで、説得力があった。シンデレラ役の山有紗との息はぴったりで、ふたりは水のようにピュアで流れるようなパ・ド・ドゥを披露。特に山有紗のアラベスクが滑らかで、上品さを表していた。リフトは高く鮮やかに決まり、見つめ合いながら寄り添ってポーズする瞬間は素晴らしく、観客から大きな拍手とブラボーの声が上がった。
舞踏会での幸せなひと時にもピリオドが打たれ、一時は王子と離ればなれになったシンデレラだが、第3幕にてハッピーエンドを迎える。ここでも義母と義姉妹の意地の悪さが際立ち、ダンサーの表情の作り方が印象的だった。彼女たちの役柄の性格上、舞台上でのあらゆる動きはシャープで激しく、観客に訴えるものが大きかった。ただ、場面によってはコメディになり過ぎない程度に愉快な部分があってもいいだろう。王子とシンデレラのペアと言えば、最後まで甘くやわらかい雰囲気を漂わせた。少しも揺るぐことのない正確なフィニッシュを決め、深川秀夫作品『シンデレラ物語』を美しいフォルムで締めくくった。
(2012年11月14日 愛知芸術文化劇場)

osaka1212b02.jpg 撮影:岡村昌夫 osaka1212b03.jpg 撮影:岡村昌夫
osaka1212b04.jpg 撮影:岡村昌夫