ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.10.10]
From Nagoya -名古屋-

台所の1日を3つのパートにわけ、家族を描いたあべあか音の楽しい『KITCHEN』

コンテンポラリー・ダンス 舞工房 弐
『KITCHEN』『SOSEKI‐無人島の天子』 あべあか音 振付ほか

ロンドンで活躍しているあべあか音が1999年に愛知で設立したダンスグループ舞工房。加入条件を30歳以上としており、人生経験も作品創作の糧と考えている視点がユニークだ。個性的な11名のメンバーはコンテンポラリー・ダンスだけではなく、バレエやミュージカルなどの振付家のほか、制作者も加わっている。
主宰者あべあか音の夏の帰省に合わせて、2年に1回開催しているという舞工房による自主公演は、出演者の誰もが舞台上で伸びやかかつ楽しげ、カンパニーのもつアットホームな雰囲気を反映しているようだ。

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プログラムは、上演順に、加藤ちえと田中りえ振付『あのひと』、瀧瀬麻衣振付『Sacrifice』、emma振付『アネモネ』、小寺亮太振付『(Persona)lity』、田中りえ振付『washerwoman』、あべあか音振付『KITCHEN』と『SOSEKI‐無人島の天子』、Trimmerによるサックス演奏『Mysterium-length6’44”』の2部構成、合計8作品。
加藤ちえと田中りえ振付『あのひと』は、椅子を使用した女性デュオ。シンプルながら細い手足を幾何学的に動かすところから始まる機械的な動きの展開がユニークだ。
瀧瀬麻衣の『Sacrifice』は、小道具の使い方が秀逸。傾いたマネキンや鎖といったシンボリックなアイテムに自らの体を絡め重ねることで、「犠牲」のイメージを瞬時に喚起させる。怪しげかつ流麗に波打つ長い肢体も世界の不条理さを引き立たせていた。
emma振付『アネモネ』は、黒と紫と青の衣装に身を包み鏡をもった女性3人による物語性の高いコンテンポラリー作品。デュオ、ソロ、トリオなど構成の変化もダンスの軽妙さを引き出していたように思う。
『(Persona)lity』は、現在はロンドンで活動中の男性、小寺亮太による自作自演によるソロ。衣裳、照明でモノクロの世界を構築し、仮面をつけて自己の虚実を暗示するシンプルな作品だ。
第1部のラスト、田中りえ振付作品は、多くの画家を引きつけてきた洗濯女をモティーフにした『washerwoman』。日常的な生活の中から洗濯物を畳む、という単調な動作を引き出し、三味線と合わせることで、日常生活に見られる平凡さを躍動的で快活な生活へと転換させた。
あべあか音振付『KITCHEN』は、暖色系の温かい灯りの中、エプロンをつけた女性8名が斜めラインで登場するところから始まった。Morning coffee、Kitchen tango、Dinner is readyと一日を3つのパートに区切り、台所の時間の移り変わりを、そこに住む家族の心情に重ね合わせる。ダンスシアターの形式で、シンプルな動作からタンゴやコンテンポラリーの動きと、場面ごとにテイストを変えてダンスそのものを見せることも忘れない、誰もが純粋に舞台を楽しめる作品となっていた。
Trimmerによる『Mysterium-length6’44”』のサックス演奏の後は、あべ振付による『SOSEKI‐無人島の天子』。夏目漱石の詠んだ俳句「無人島の天子とならば涼しかろ」をモティーフに物語性の強いダンス作品を創作。かにえあきのりをSoseki役に、またMisao役に金澤志保を起用、あべも胃腸薬のタカジアスターゼ役を演じるといった個性的な配役でラストを飾った。
(2012年年9月2日 愛知県長久手市文化の家・風のホール)

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写真撮影:森好朗