ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.07.10]
From Nagoya -名古屋-

ダンスユニット「太めパフォーマンス」の身体をはった処女公演『乙女』

太めパフォーマンス
演出・振付:乗松薫『乙女』

2人組みのダンスユニット、太めパフォーマンス。岡山大学ダンス部出身の鉄田えみと乗松薫の2人は、ちょっぴり太めの自らの身体をキャッチーな武器として、パワフルかつキュートで魅力溢れるパフォーマンスを行ってきた。岡山から愛知に移住した2年前から、愛知芸術文化センターの「パフォーミング・アーツ・ガーデン」をはじめ、愛知県下の屋外やライブハウスのイベントなどにも参加、コツコツと小品を創り続けてきたが、今回はそれらの集大成となる初の本格的ダンス公演となった。

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舞台右手前には手作り感ある舞台セット、木のペイントが施された小さなスクリーンを張った脚立が置かれている。恥らいながら後ろ向きで登場。何気ない動作で舞台を動き始めると、突然、空間のあちらこちらにたくさんのバナナの映像が投影される。彼女たちはそれを金魚すくいのようにうちわで掴まえようと試みる。演出的にもチープ感満載だ。金魚を掴まえようと跳ねたり跳んだり、ちょっぴり太めの身体が躍動することで、空間は一転、生々しさが際立ち、現実のリアリティが増幅していく。
タイトルの「乙女」にも象徴されているように、太めパフォーマンスの心情的背景には、自分たちと同じ女性たちに向けられた鋭くかつ温かな眼差しを感じることができる。それはフェミニズム的に厳しく言及するでもなく、乙女の無邪気さで終わることもない。無邪気さを装う少女たちの戯れと、商品化されていく女性の身体との狭間を見事にすり抜け、そこに存在することで、ふくよかで温かな女性的身体から芳醇さも醸し出してしまう。しかし驚いているのもつかの間、いつも間にか彼女たちの身体の振動は流麗な動きとなり、見事なダンスに昇華しているのだ。
さらにバナナを皮ごとミキサーに突っ込んだり、ケチャップをつけたバナナを食べたりと、観客は気持ち悪さも同時に体感することになる。これらの体験が、観客自身の身体へと回帰させずにおかないのはいうまでもない。
パンツからはみ出したお腹のお肉を高尚なクラシック音楽に合わせて揺らしたり、互いに激しく叩き合ったりと、身体をはったパフォーマンスも、ミキサーの音にクラシック音楽を被せたり、自らの身体と小道具や情景を微妙にずらし、異化することで、より客観的に見せてしまう。しかし最も重要なことは、彼女たちのダンスが空間の波動にのって、劇場内に楽しさを振りまいてしまうこと。女性の原初的身体と現実の切実さを感じる身体、女の幼稚さとしたたかさの隙間に滑り落ちてしまうスリリングな快感を味わうことのできた楽しい一夜だった。
(2012年6月10日 名古屋市青少年交流プラザユースクエア)

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