ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2012.06.11]
From Nagoya -名古屋-

名古屋の男性コンテンポラリー・ダンスカンパニーの9年間の総決算となるサ・ベスト

アフターイマージュ
演出:トリエユウスケ、振付:服部哲郎 “the best”『鮨』&FJJS

名古屋在住の若手ダンスカンパニー、アフターイマージュは今年で結成9年。この度その総決算となるベスト版公演が行われた。10代から手打ち公演を行い、コツコツと作り続けてきた数々の作品の欠片と格闘し、再振付を行い、新たな構成、演出を加えることで、今の彼らに相応しい作品に蘇らせたといってよいだろう。

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作品はオムニバス形式で、目まぐるしく変化する16の場面から構成されている。今回は、主宰の服部哲郎や固定メンバーのいかすがい、釈迦、堀江善弘などのほかに、MuDAの辻本佳や名古屋の劇団オレンヂスタの今津知也などの参加もあり、総勢11名の暑苦しい男たちの文字通りの共演となった。
ノリのいい音楽に七変化するムーヴィングライトの光、そこにぶつかるエネルギーに満ち溢れた若き男たちの身体。グルーヴ感のあるダンスを身上とする彼らのイキのいいダンスシーンからの幕開け。そこに様々なコンタクトによるデュオやアンサンブル、服部のソロダンスや多様なネタのコントまでもが続いていく。どの場面も全力で身体でぶつかる姿が清々しい。再構成されることで、前回曖昧だった振付の輪郭が強固なものとなり際立って見えてくる。ダンス公演に初出演となった俳優たちも、決して妥協することなく、きっちりと役割を果たしていたと思う。
プロレスやバレエ、ガンダムなどをネタにしたコントも、じゃんけんや格闘技、シンプルな動作等を巧みに組み合わせることで、身体でコミュニケーションをとり始めようとしている無邪気な少年たちの遊びをみているかのように、ごく自然に身体表現の本質を感じ取ることができ、沢山の観客からも笑みがこぼれていたのが印象的だった。
アフターイマージュは、トリエユウスケと服部が演出と振付を分担することによって、常に観客を意識した作品づくりを行ってきたが、それはダンサーではない俳優の起用でもより明確になった。俳優の身体を活かす配置や構成、照明や音楽。コンテンポラリー・ダンス作品でありながらも、決して振付家の独りよがりにはならない客観的な演出はこのカンパニーの最強の武器のひとつであろう。個別の場面では、よりミクロな目線から動きを追求し、全体ではマクロな視線を投入して、ある種のエンタテイメント性も成立させてしまう。今回の作品ではそのバランスがよくとれていた。

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そして最終日のラストステージでは、恒例のFJJSと呼ばれる、フリー・ジャンピング・ジャム・セッショが行われた。公演さながらにトリエらが即興で操作する音楽や照明の中、誰もが自由にダンスを楽しむことができる。踊るのも観るのも個人の自由。初対面の人ともダンスを楽しみながらコミュニケーションをとることができるという、ダンスの豊かさを感じることができる好企画だ。
これまでも伊藤キム、坂本公成など、たくさんのゲストがFJJSに参加してきたが、今回は、モノクロームサーカスの野村香子、Mudaの合田有紀、名古屋出身のビルヂングの加藤紗季などが参加し、ダンサーもそうでない人も、分け隔てなく踊ることの素晴らしさを堪能していたようだ。また前回より東海地域のダンサーたちの割合が増えているようで、このFJJSがダンスコミュニティの役割を果たしつつあるのかと感じた。

アフターイマージュは、愛知芸術文化センターの開館10周年記念事業のために集まった若手男性ダンサーたちが踊った『愛知と青春の旅立ち』(近藤良平振付)を出発点としている。今年の11月には同センターの開館20周年記念事業として「文化祭(仮称)」(演出・構成:杉原邦生)が開催される予定だ。ここに集まった多様なアーティスト(ジャンルは問わず、ダンス、演劇、音楽などのアーティストを募集中)の中から、また新たなカンパニーの萌芽があるかもしれないと思うと、それもまた楽しみなのである。
来年10周年を迎えるアフターイマージュには、新しく参加してくる若手たちの先を走り続け、東海地域を牽引するダンスカンパニーになって欲しい。
(2012年5月20日、愛知県芸術劇場小ホール)

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