ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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亀田 恵子 text by Keiko Kameda 
[2012.02.10]
From Nagoya -名古屋-

地元のアーティストが活躍した「パフォーミング・アーツ・ガーデン2012」

愛知で2012年の幕開けを飾ったのは『パフォーミング・アーツ・ガーデン2012』。今年で3年続けての開催となるこの企画公演は、地元のアーティストをクローズアップすることと同時にアーティストと関わる制作スタッフ、フライヤーなどを手がけるデザイナーの育成も兼ねた興味深い企画。主催は愛知芸術文化センター企画事業実行委員会だ。主催者によれば「アーティストと制作側につながりを作り、今後も愛知で公演などを活発に行えるようにすることも目的のひとつ」だという。パフォーミング・アーツに限定されることではないが、舞台作品にはアーティストだけではなく、観客が何より必要であるのと同時にアーティストと観客をつなぐ存在(=制作者)が不可欠。そういった意味でも、この企画は地域のアートシーンにとって意義あるものといえるだろう。そう、まるで「地産地消」のように、地元でしか味わえない生まれたばかりの新鮮なパフォーマンスが楽しめる。また、この企画ではジャンルを牽引するような先鋭的な作品もあわせて味わうことが出来るのだ。
公演は3部に分かれて上演された。1部は大学ダンスと地元で元気に活動する女性ダンスグループ、第2部は演劇とパフォーマンスの境界線に存在するような個性的なカンパニーや個人、第3部は地元から羽ばたき、全国で活躍する女性ダンサー、地元で長年活動を続けるダンスカンパニー、ゲスト出演者として招かれたC/Ompanyらが、それぞれにバラエティー豊かな作品を発表した(1作品の上演時間は約20分弱といったところ)。各作品について、印象に残ったポイントをご紹介したい。

nagoya1202c07.jpg Teckey Nickey  撮影/堀内俊広

<第1部>
中京大学ダンス部『Teckey Nickey』は、1本の樹の周辺でめぐる人間の哀しみを作品化。男性ダンサーが樹の役を演じ、2名の女性ダンサーがそれぞれに関わりを持っていく。不動と思えた樹が崩れるラストシーンへのストーリー展開はわかりやすく、ダンスに馴染みの薄い観客にも受け入れられやすいかも知れない。
至学館大学創作ダンス部『D-connection』は、白い衣装のダンサー1名と赤い衣装のダンサー4名がスピード感あふれるダンスを展開。インド音楽を思わせる旋律は妖艶さを感じさせるが、若さあふれる彼女たちが踊ると清潔感が漂うように感じるから不思議だ。
Archaiclightbody×【exit】は、服部哲郎と杉山絵理、堀江善弘と中西あいの2組のデュオグループによる実験的な試み。先ず服部と杉山が1脚のイスを使い、男女の恋の葛藤をコンタクトインプロビゼーションのテクニックを駆使して表現。抱擁から展開する思わぬ動きなど、互いの動きの質をよく追求してのことだ。堀江と中西は服部と杉山の作品からインスピレーションを得てこの作品に続く物語を展開したという。服部と杉山のラストシーンから連なるシーンでスタートするも、腕を組んでスキップ、微笑ましいシーンを表現するなど演劇的要素が強く、説明的になった印象がある。
太めパフォーマンスは、るっちと鉄子によるダンスパフォーマンスコンビ。地元でも人気が上昇しつつある彼女たちだが、今回は『太めパフォーマンスの酒池肉林』というタイトルで参加した。ワインボトルからこぼされる水や、散らかされるピンク色のティッシュペーパーなどが狂った宴を思わせた。

nagoya1202c03.jpg ARPON 撮影/加藤光

<第2部>
第2部は演劇でもダンスでもないような、個性的な作品が展開。デジタルでありながらアナログな味わいを持つ手描きグラフィックに、パフォーマンスが交錯するフ透明少年×渡邊春菜の『静かな人形』は、どこか懐かしさを感じさせる独自なファンタジー。ARPONはダンス、映像、舞台美術、絵画、衣装などのさまざまな作り手によって構成されるパフォーマンス集団だが、舞台上には、作り手を反映したようにさまざまな要素がカオスのように並んだ。未整理なのか意図された混乱なのかが分かりづらい印象(『Chaos of paradise』)。演劇ユニット,5(てんご)の『ミカミ』は、女2人と男1人がセリフなのかつぶやきなのか判然としない独自な声のトーンで作品を展開、観客の存在を前提にしないような独自性を漂わせた。吉田琢己『toki【時】』は、客席と舞台を往復する照明が時計の振子を思わせる印象的な立ち上がり。映像や歌なども多様な要素を織り込んだ作品だが、要素を絞り込んでも違った魅力が表現出来そうだ。

nagoya1202c04.jpg キャプション

<第3部>
三輪亜希子は愛知県出身のダンサー。2007年に新進アーティストの発見あいち(現アーツ・チャレンジ)に参加した経験を持ち、プロジェクト大山で活動。強さの中に艶やかさと理知的な印象を持つダンサーだ。今回は『マトルの約束』を、ピアノのうえだよう、パーカッションの山澤洋之らとコラボレーションする形で上演した。三輪は生花を縫い込んだ衣装と編込んだヘアスタイルで踊ったが、その優美な出で立ちとは反比例するように、音への反応は緊張感のある動きを見せ、これまでの彼女とは違う印象を残した。
Water Drops Contemporary Dance Companyは、2006年に夜久ゆかりを中心に結成されたカンパニー。今回は『昼から呑む』を上演。街に出て人間観察をして生まれたというこの作品は、セリフを語る俳優的な存在を中心にストーリーが展開。風で新聞や手にした傘がばたつく様子をマイムするシーンなどが盛り込まれ、ストレートなダンス作品というより、物語を通してダンス要素がポップアップしてくる印象。
ゲスト出演したC/Ompanyは、世界的に活躍する大植真太郎+柳本雅寛+平原慎太郎のユニットに、今回特別参加した工藤聡が加わって、新作『そこそこ』の制作過程の一部を披露した。それぞれに高い身体能力を持ち、海外での経験も持つ彼らには独自の哲学がある様子。例えばそれは「説明不要のダンス」や、「ダンスに埋没しないダンス」というスタンスのように思う。幕開け、全身緑色の衣装で奇異な姿をした工藤が「あ」「い」などの平仮名を1文字だけ書いたスケッチブックを手に持ち、舞台袖に立つ。すると、大植真太郎、柳本雅寛、平原慎太郎らが「ああだ、こうだ」と何やら言い合いながら登場し、もみ合ったり突きあったりしているうちに、結果として「あ!」や「い?」という声やしぐさが誘発されるシーンが出来あがる。作品全体は、そうしたシーンがいくつもの暗転によって展開していくという流れだ。客席からは暗転の度に笑い声が湧き上がっていたが、特に男性客からの笑い声が大きかったように思う。彼らのそうしたムーブメントは、スポーツ部の男子が悪ふざけしている、そんな様子にも見える楽しさあふれる作品だが、何気ない動きの中に垣間見える身体性に目を奪われてしまう。「出来れば動いてたらダンスにそれが見えてきた(当日の公演パンフレットから引用)。」という、彼らの仕掛けた罠がそこには隠されているのかも知れない。
バラエティ豊かな作品がズラリと並ぶ舞台の裏で、若い制作者の奔走があるのだろう。舞台の上でも、裏側でも、さまざまな人たちが踊っている・・・もしかしたら、それを見つめる観客の心も踊っているのではないか、そんなことを考えた企画だった。
(2012年1月7日 愛知県芸術劇場小ホール)

nagoya1202c01.jpg archaic light body×exit
撮影/堀内俊広
nagoya1202c02.jpg archaic light body×exit
撮影/堀内俊広
nagoya1202c10.jpg 演劇ユニット ,5 (テンゴ)
撮影/猪熊康夫
nagoya1202c12.jpg 三輪亜希子
撮影/加藤光
nagoya1202c05.jpg C/Ompany 撮影/加藤光 nagoya1202c06.jpg D-connectio  撮影/堀内俊広 nagoya1202c08.jpg Water Drops Contemporary Dance Company 撮影/猪熊康夫
nagoya1202c09.jpg フ透明少年 撮影/麻原奈未 nagoya1202c11.jpg 吉田琢己 撮影/加藤光 nagoya1202c13.jpg 太めパフォーマンス 撮影/加藤光