ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2011.12.12]
From Nagoya -名古屋-

川口節子バレエ団創作公演『舞浪漫 My Roman2011』

振付:川口節子、太田一葉、木原浩太
主催:川口節子バレエ団

代表の川口節子が平成21年度愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞した記念として開催された公演。川口自身が振付けて初演した『初恋』をメインに、さまざまな創作作品が上演された。

nagoya1112d01.jpg 『Tea Party Suite』
撮影:MIYABI(脇田博史)

私が観た13日、第1部幕開けは、太田一葉振付の『AQUAREA』。女性はポアントを履いての、動きそのものを楽しむような作品。続いて、ゲストである木原浩太自作自演のソロ『イノナカノ蛙』、人間とは違う生き物になったような普段は思いもよらないような動きが面白い。その後、太田一葉振付作品が『グリーン』『Tea Party Suite』と続いた。『Tea Party Suite』は、子供たちが出演しての可愛らしい楽しいお茶会。フェッテ・アントゥールナンなどのテクニックも入った踊りなのだが、とにかくテンポが速い! それを子供たちがとてもイキイキとした笑顔で踊っていて、観ているこちらも楽しく明るい気分になった。
第1部の最後は、川口節子振付の『HEAVEN(テネシー・ウイリアムズ『地獄のオルフェウス』より)』。
飛ぼうとする普通ではない青年とそれを取り巻く人々があたたかい視点で作品にされている……ヘンな存在であることを肯定するダンス。主のパートを踊った古井慎也が、役にぴったりのとても良い味を出していて、彼のために振付けられた作品かと思いきや、これは再演で、初演では別の人が踊っていたのだという。それには驚いた。だが、とにかく、そう、みんなヘンで良いよねーー、好きなように生きていこうーーと、そんな気持ちにしてくれる作品だった。

そして、第2部が今回初演の川口節子振付『初恋』。ツルゲーネフの小説をダンスにしたものだ。
幕開け、流れるのはバレエファンなら聞き慣れたドビュッシーの『牧神の午後』の音楽。ハンカチーフをひらめかせながら、崇拝者の男性たちを軽くあしらうヒロイン、ジナイーダ(高田美月)、その様子を窓からうかがう青年ウラジミール(木原浩太)。誰もいなくなった部屋に忍び込み、残されたハンカチーフに頬を寄せるウラジミールは、ジナイーダに、やはりもてあそばれる。ジナイーダはウラジミールの父に……という原作通りのストーリーが、センス良くほどよく抽象的に描かれてゆく。そしてラストは、気持ちを爆発させるように恋破れたウラジミールが踊り、ハンカチーフを胸に……。
『牧神の午後』と『初恋』を、ほどよくブレンドしたような雰囲気が、木原浩太というダンサーにとても良くあっていると感じた。実は私は、木原の踊りを何度か観ているが、恋愛感情を表した作品を踊っているのは観たことがなかった。恋や愛とは無縁なような……中性的で、人間とも限らないような……そこが魅力のダンサーだと感じていた。でも、だからこそ、『初恋』の繊細な青年の感情が私たち観客に伝わったのだろう。もし、違うダンサーだったら、“初”の恋には見えなかったかもしれない。そしてまた、音楽が『牧神の午後』であったことも、彼の踊りは人間ではないもののよう……というところで、とてもよく合っていた。もちろん身体能力も高くて。そういったことが合わさって、とても心に響く作品に仕上がっていたのだと思う。つくづく、川口節子はダンサーの個性を活かすこと、ドラマとしてのダンスを創ることに卓越した力を発揮する振付家だと感じた。
(11月13日 名古屋市芸術創造センター)

nagoya1112d02.jpg 『HEAVEN』
撮影:MIYABI(脇田博史)
nagoya1112d03.jpg 『HEAVEN』
撮影:MIYABI(脇田博史)
nagoya1112d04.jpg 『初恋』
撮影:MIYABI(脇田博史)
nagoya1112d05.jpg 『初恋』
撮影:MIYABI(脇田博史)
nagoya1112d06.jpg 『初恋』
撮影:MIYABI(脇田博史)
nagoya1112d07.jpg 『初恋』
撮影:MIYABI(脇田博史)