ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2011.10.11]
From Nagoya -名古屋-

Dance Emotionalシリーズ vol.1 「モダンダンスエクステンション」

3夜連続企画「モダンダンス エクステンション」の初回が名古屋の千種文化小劇場で開催された。この企画は、現代舞踊協会中部支部の主催により、名古屋市内の3会場を回りながら、8月から来年2月までの3回にわたって、中堅舞踊家による作品発表が行われるもの。
全国に多々見られる小品ばかりのショーケース公演よりも、一歩突っ込んで、本格的に作品創造に取り組もうという意思の見えるこの企画。最初の会場となった円形劇場の特殊な空間をどのように使いこなすのか、最も関心のあるところだったが、すべての出演者がこの舞台と客席をも含めた空間に正面から取り組んでいてたいへん好感がもてた。

nagoya1110b01.jpg 『おむすび』©TOKAIPHOTO

初回公演は5作品。野田ますみ、福田晴美の『おむすび』は、福田が最近一緒に共同制作を行っている音楽家・広沢純子をパフォーマーとしても巻き込んだアコーディオンの音色軽やかな作品。天井からは3色の布がぶら下がり、時折、その布を結んだり、絡んだりと終始布を意識した構成。ダンスの中心となるのは2人のダンサーの関係性だ。バッハの荘厳な音楽に合わせて、ただ身体を引っ張り合ったかと思えば、ラジオ体操的な身振りを行うなど、動きと音楽のずらしが愉快だが、そこをさらに徹底してフォーカスするともっと求心力をもつだろうと思われた。
木方要作品『GO』はアヴェ・マリアの音楽に合わせ、白の衣裳を身に纏った女性デュオから始まった。少し高くなった円形の舞台周囲には、円内に入ろうともがく女性がひとり。ようやく円内に侵入すると、暗転して次の場面に転換。レゴのようなブロックを組み合わせたかに見える大きな人形が1体1体運び込まれて、前半の滑らかなダンサーの動きも一転する。CGを想起させるような幾何学的な動きと格子状の灯りが、異次元空間を作り出す。ラストは客席に座っていた木方要の母・今日子がふいに立ち上がる。ショッキングピンクの鬘を被り、同色の靴を履き、やはりピンクのカートを押して舞台に登場。カートに人形を乗せて舞台を横切ると、無表情で観客席に続く通路へと消えていく。空虚感残る幕切れとなった。
『フォー・W』は、ヒデ・ダンス・ラボに所属する4名のダンサーによる共同振付。暗転のなか、いくつもの足音だけが響きわたる印象的な幕開け。灯りがつくと、中央には1足の長靴。4名のダンサーはみな片足だけゴムがついた長靴をはいているが、ゴムの反発に逆らい、一足の長靴を取ろうと試みる。丸いお盆にピンクの長靴を乗せた少女が登場したり、様々なテイストの音楽の変化に伴って目まぐるしく場面が変化する。時折、ユニークな動きや場面に遭遇するが、作品全体の中での、個別の場面の位置づけが、もっとクリア見えてくればいいと思う。
篠田侑子作品『潜』は、愛娘の篠田志緒によって踊られた。母と娘、2人のつながりについて、「継がれゆく 因子が 私を 支配する」との副題がついている。円形舞台の中央にしゃがみ床に這い蹲る篠田志緒。黒のシフォンの布の中から誕生するように這い出てくる。何かに取り付かれ怯えているように、揺らめきながら、空間を後ずさったり、戻ったり。タイトルどおりのイメージを伝えることには成功しているものの、そこからさらに飛躍する動きの意外性が欲しいところ。
最後は、山本祐実振付の『点・点』。9名の若手ダンサーを起用して、アンサンブルに挑戦した。白のタンクトップに3分丈の白のスパッツで初々しい少女が登場し、ひとりずつ無表情にポーズを作っていく。まるでオブジェのように置かれた身体は情緒を感じさせることなく、肢体を幾何学的に屈曲させる。やがてこれらの身体<点>は、時間の流れの中で繋がり、視覚的な線をなしていく。楚々としてニュートラルな身体の繋がりによって空間の動きが紡がれていくさまは興味深い。ただ若手ダンサーたちの身体の弱さが若干残念だった。
5作品共通して音楽への依存度の高さが気になった。音楽の変化に動きを同調させて構成を行っている場面が多くみられ、それは繋ぎ合わされたパッチワークのようで、作品のテーマや一貫性がみえてきにくい。とはいえ、このような創作する機会が生み出されたからこそ、じっくりと取り組めたことも多かったと推測する。そのきっかけを作った成果は大きいだろう。こうした公演をきっかけに、さらなる経験を重ね、東海圏において若手の振付家を育成していっていただきたいと強く感じる公演であった。
(2011年8月25日 名古屋市千種文化小劇場)

nagoya1110b02.jpg 『GO』©TOKAIPHOTO nagoya1110b03.jpg 『フォー・W』©TOKAIPHOTO
nagoya1110b04.jpg 『潜』©TOKAIPHOTO nagoya1110b05.jpg 『点・点』©TOKAIPHOTO