ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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伊藤 寛隆 text by Hirotaka Ito 
[2011.08.10]
From Nagoya -名古屋-

あいちトリエンナーレからの絶え間ない活動、One Day Cafeの最終回

『One Day Cafe #3』
afterimage、魂宮時+加代雅規、太めパフォーマンス
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4月から始まり、月に1度のペースで催されるイベント『One Day Cafe』。3回目となる今回は、『One Day Cafe』のイベントとしては最終回であったが、作品展示、ライブ、パフォーマンス、カフェ、ワークショップなど、様々な企画が用意された盛りだくさんなイベントとなった。ダンス・パフォーマンスでは、名古屋出身・在住の若手ダンサー3組が登場し、三者三様のパフォーマンスを披露してくれた。

1組目は、名古屋を拠点に活動する男性ダンサーのみで構成されたカンパニー“afterimage(アフターイマージュ)”から、服部哲郎と堀江善博のデュオが登場した。『One day cafe #1』と同じく、今回も観客の感想を直に表現させる仕掛けが用意されていた。
観客には事前に、「イイね」(白い球)と「良くないね」(赤い球)を示す投票物が渡され、その場で自分が感じた気持ちのままに、ダンサーに向けて物を投げるよう指示が出された。パフォーマンス序盤、投げるのをためらっていた観客だったが、一度物が舞えば、そこは赤色と白色の物体が飛び交う熾烈な場となった。運動会における玉入れの籠の中のような状況で、観客に立ち向かい、怯むことなく、踊りに取り組むダンサーの姿が印象的であった。

nagoya1108b02.jpg afterimage nagoya1108b03.jpg afterimage

前のめりになった観客をなだめるかのように、リラックスした空気で登場したのが魂宮時+加代雅規のデュオ。まず「用意していた作品とは違うことをやるために、その場で作品をつくる」という旨が語られた。
加代が一人、身体の状態を確認する中、魂宮時は会場を歩きまわり、会場の大きさ、電気の光、音の響き方など、淡々と空間と対話していく。確認を含めた実験を重ね、観客の集中と、ダンサーの集中が合致した時、魂宮時は自身の音楽プレーヤーを観客に渡し、選曲を任せた。そして、計3曲の音楽で踊ったのであるが、音の変移に伴って、その都度ダンスの質感は変わり、音楽との対話を成立させているように見えた。真摯に観客と向き合うことで、観客の空気感を取り込み、作品に反映させていたように感じた。

nagoya1108b04.jpg 魂宮時+加代雅規 nagoya1108b05.jpg 魂宮時+加代雅規

ラストは、愛媛県・熊本県出身の女性が岡山で結成し、昨年から愛知で活動を行っている、ちょっと太めの女性ダンスデュオ“太めパフォーマンス”。彼女たちのダンスのモットーである「楽しく!」がよく伝わる作品であった。ミラーボール、赤いアフロのカツラ、大量のキャンディ、可愛らしい音楽など、登場するマテリアルも、ダンスの質感に合い、愛しさが溢れていた。仲のいい女の子同士のお泊まり会、あるいは修学旅行で消灯時間を過ぎてもおしゃべりしている寝室、それを覗いている感覚であった。観客は、ふんわりとした空気につつまれながらも、時に重量感を感じる洒落の効いた演出に、笑顔をこぼしていた。

nagoya1108b06.jpg 太めパフォーマンス nagoya1108b07.jpg 太めパフォーマンス

普段ダンスを見慣れていない観客も訪れる場所で、今回の3つのパフォーマンスは、ダンスの様々な色を提示していた。劇場やホールとは異なる場所で踊ることは、ダンサーにとって新たな気づきを得る機会であろう。観客にとっては、1日で多くの価値観に出会うことで、ダンスに対する視野を広げることになったであろう。イベントとしての『One Day Cafe』は最終回を迎えたが、今後も残っていくこの場所が、これからどのような展開を見せていくのか、楽しみになるイベントであった。
(2011年6月25日 万勝S館)