ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

亀田 恵子 text by Keiko Kameda 
[2011.07.11]
From Nagoya -名古屋-

音楽とパフォーマンスが描き出す、無限の可能性

『One Day Café #2』 パフォーマンス・セッション
鈴村由紀&堀嵜ヒロキ、平尾義之+杉町明子、石川泰昭、フィリップ、 Kaeline&1980円(イチキュッパ)

昨年夏に開催された『あいちトリエンナーレ2010』が終了して、早くも1年近くが経過しようとしている。厳しい猛暑が話題の夏だったが、連日多くの観客がトリエンナーレ会場に足を運んでいたようである。本格的に取り入れられたパフォーミングアーツに関しても、状況は同じように大きな盛り上がりをみせていた。
「ジャンルを横断する」作品が選ばれた数々のパフォーマンスは劇場のみならず、街なかや美術館のギャラリースペースでも行われた。その場では観客も「美術ファン」「パフォーマンス・ファン」という垣根を越えて楽しんでいた姿が印象深い。こうした土壌を踏まえ、愛知では美術とパフォーマンスが一体となったイベントが定期的に開催されようとしている。それが『One Day Cafe』である。定期開催の2回目となったこの日、パフォーマンスの出演者は5組。今回の特徴は「音楽」とのコラボレーションが意識されていたところだろう。

nagoya1107c01.jpg

鈴村由紀&堀嵜ヒロキのペアは、最初からドラム演奏とソロダンスの正面対決のような様相を呈していた。音楽とのコラボレーションは鈴村の得意とする分野だが、彼女の場合、パフォーマンスの立ちあがりは自分のペースでウォームアップすることが多い。しかし今回は、客席に自分の体側を向けるような格好で堀嵜とドラムセットに対峙。音の源と正面から向き合うような姿でパフォーマンスをはじめた。堀嵜の激しく挑みかかるような打音を腹で受け止めるように、重心を低くしながらステップを踏み続ける鈴村。やがて身体に抱え込んだ音のエネルギーを放出するような爆発的な動きや、怒涛の如く押し寄せる音の連続を振り払うような旋回を見せた。その踊りには、彼女がブラジルで学んだというカポエイラのような動きが感じられた。格闘技とダンスの中間にあるといわれるカポエイラ。堀嵜とのコラボレーションは正にそんなイメージだ。

nagoya1107c02.jpg

平尾義之+杉町明子のペアはサックスと即興ダンスのコラボレーション。自身の身体の中で起きていることに関心が強いという杉町は、ミニマムな動きで場の空気を感じ取ろうとする。動きは彼女の中に想起されるものによって生まれ、断続的。サックスの音とともに「場」にある何かを探り出しては身体から放出するというような作業だった。
石川泰昭はキーボードを使ってのソロ演奏。静かに沁み渡るような透明感のあるピアノの音で会場を落ち着かせた。プログラムを見たときの印象としては、パフォーマンス企画の中にポツンと置かれたソロ演奏が不思議に思えたが、プログラム全体で考えてみれば音楽とパフォーマンスが1つの企画の中でコラボレートしているのだと理解出来た。石川の演奏をもって、プログラムには自然と前半から後半へという流れが出来ていたように思う。

フィリップは名古屋を拠点に活動する独自なダンサーだ。自らを「ワラビモチ愛好会・会長」と読んでいる通り、彼女のパフォーマンスは「ワラビモチ」をつくるところからはじまることが多い。今回のパフォーマンスは時間の制約もあって、出来たてのワラビモチを持参するかたちで行われた。パック詰めされたワラビモチをプレゼントすることを条件に、自作の音楽にあわせて振付けた「ワラビモチタイソウ」を踊ってくれた参加者にプレゼントするパフォーマンスを展開。このパフォーマンスは『ワラビモ長者』というプロジェクト名で彼女が取り組んでいるもの。「ワラビモチタイソウ」の動きはシンプルで、観客がその場で覚えることも出来る。新しいタイプのコミュニケーションアートと呼びたくなる、個性的なパフォーマンスだった。

nagoya1107c03.jpg

Kaeline&1980円(イチキュッパ)は、名古屋で活動するダンサー倉知可英ことKaeline(カエリーヌ)と、男性二人組の音楽ユニット1980円(イチキュッパ)とのコラボレーション。「フランス・モンサンミッシェル出身のダンサー・ パフォーマー」という仮想のキャラクターKaelineは、抜群のスタイルを活かしたセクシーな衣装で登場。厚底のブーツ、パンタロンの片方の裾をまくりあげて出された脚、黒いサングラス、プラチナブロンドでショートボブのカツラなどに加え、フランス語でしか話さないというキャラクター設定もユニーク。
1980円(イチキュッパ)は自分たちを「サイケデリック白物家電音楽グループ!」と呼んでおり、クリエイションの源泉は「家電量販店売り場」から得ているという。掃除機をエレキギターのように肩から提げて演奏したり、蛍光色のライトを取りつけた扇風機で回転する光のイリュージョンを浮かび上がらせたり、量販店のポップ広告のように煽り立てる映像を使ったりと、彼らの演奏は驚きの連続だ。その驚きがKaelineのセクシーさと相まって、会場には独特の世界観が漂う。仮想のキャラクターと家電量販店という組み合わせは、異種格闘技のようにも思われるが、今の日本を象徴する組み合わせでもあり、興味深いと感じた。海外の観客の反応も見てみたい。
「音楽とパフォーマンスのコラボレーション」の中にも、さまざまな広がりがあると感じたパフォーマンスイベント、今後も継続して欲しいと思う。
(2011年5月25(土)万勝S館(元ATカフェ))

  • Check