ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2011.04.11]
From Nagoya -名古屋-

ジャンルを超えた挑戦的作品を募ったパフォーミング・アーツ・ガーデン

パフォーミング・アーツ・ガーデン2011
愛知県文化情報センター

「パフォーミング・アーツ・ガーデン2011」は、東海地方を中心に活動を行っているダンスや音楽などのパフォーマーによるショーケース公演。
第一回目の開催となった昨年度と本年度の大きな違いは、公募による参加形態と小劇場を使用したこと、当日の制作運営だけではなく、初期段階からアートマネジメント講座生が企画制作に積極的に関わってきたことの3点である。リハーサル室と公共スペースを使用した昨年に比べ、劇場を使用できた今年度は、照明や舞台美術などのヴィジュアル面についてもより丁寧に創作された作品が増え、観客に向けてもより見せることを意識した公演になっていたと感じている。
また公募要綱に「ジャンルを超えたより挑戦的な作品を募集」としたことによって、ダンスという枠にとらわれないより幅広い身体表現を追及した作品が多くなったと思う。
企画制作を行ったアート・マネジメント講座では私自身が講師を務めたこと、この講座では、公演の制作部門だけではなく、レビューやブログ執筆にも取り組む広報部門も開始したことから、この公演についてはアート・マネージメント講座生に執筆してもらうことにした。公演は全17作品で計6時間、4部構成の長時間公演であったため、3人の受講生で担当してもらった。

第1部
1 Geonori(ジオノリ)『音さんと一緒 2011』

2007年、愛知にて様々なバックグラウンドを持つ若手音楽家により結成された即興バンドGeonori。今回は声(松井阿美)、コントラバス(戸田裕之)、鍵盤楽器(山田亮)、打楽器(依田拓)を使用した即興パフォーマンスを披露した。冒頭より緊張感のあるフレーズでの即興演奏が続き、ステージだけでなく客席通路も舞台とした自由なパフォーマンスで観客を驚かせた。

2 Kino Kugel(キノクーゲル)×関谷友加里トリオと田中ゆうこ『ハリネズミのワルツ』
Kino Kugelは演出・振付のコマツアイを中心に2008年に結成されたダンスユニット。ここでは、Kino Kugelのコマツアイと三好友恵の2名に、関谷友加里によるピアノ、コントラバス(森定道広)、ドラムス(橋本達哉)とボーカルの田中ゆうこによる音楽家とのコラボレーションという形で発表された。とあるカフェを舞台として演出されており、心地よい演奏とダンスによるパフォーマンスであった。

3 Bonds(めんどルズより)『いつも心に太陽を』
愛知芸術文化センター15周年記念公演『愛知と青春の旅立ち』(振付:近藤良平)で集まった地元のダンサーで結成したユニート「めんどルズ」より、ちは、アディ、musicaの3名が出演。明るい曲調の音楽で幕が開き、ダンサーによる動きも自由で開放的。途中、観客との絡みもあり、終始客席から笑いがこぼれていた。後半では、一般の男性2名が音楽で加わったりと極めて自然体な作品で、心に元気を与える作品を作りたいという思いがよく伝わっていたパフォーマンスであった。

4 至学館大学創作ダンス部A 『視野の幅-広げてみたり、狭めてみたり、見えた世界』
神戸ダンスコンクールで入賞するなど、活発に活動を行っている至学館大学(旧中京女子大学)のダンス部選抜メンバーによるステージ。つば広の帽子を被ったダンサーたち、1人1人の動きが美しく、日々の努力からくる質感のそろった動きは、完成度が高い。電子的な音楽に合わせ、人間の内面的感情を表しているかのようなしなやかな動きが印象的であった。

5 石原弘恵+田中三奈代『いつかの出来事』
女性ダンサー2名によるパフォーマンス。ヒップホップの音楽にのせ、コミカルな動きのダンスではじまる。曲想が変わってからは客席へ飛び出してのパフォーマンスもあり、会場から笑いが出る場面も多かった。1人だけでは出来ない、2人にしか出来ない個性を生かした掛け合いなどの動きには最後まで目が離せなかった。

6 Precious Jewel『在りたい姿』
ベリーダンスと日本舞踊をベースにしたパフォーマンス。前半は女性ダンサー5名によるベリーダンス。ノリのよい中東系音楽にあわせ、女性らしいしなやかな動きを取り入れている。後半はPrecious Jewelの代表である武藤有架によるソロ。着物をイメージしたような衣装と、日本の伝統芸能を思わせるような動きにより、日本女性としての柔らかさや優雅さ、日本人としてのアイデンティティを表現していた。(榊原裕美)

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第2部
7 ヒフプロジェクト『hifu-nuno 幽かな身体』

上部から吊るされ、霧のように舞台全体を覆う大きな布は、とても薄く繊細なものだ。頭部を落とし、身体だけになったダンサーのすう。寝転がったり、倒立したりした後、布にそのシルエット映し、二つの赤い目玉が光る巨大な顔を出現させる。ラストは、青白く照らされ輝く布の内部を、一心不乱に踊り回る。静寂の中、息遣いだけが響き、そして消えていく様子はとても美しく、幻想的。服装は自己拡張であるとも言われているが、まとう服(布)をも含めて身体と捉えるというヒフプロジェクト。「服と体」「布と皮膚」というテーマ、身体と布の関係を、ダンスパフォーマンスで見事に表現した。

8 至学館大学 創作ダンス部B『Origin vol.2 あなたがあなたでいるということ』
波打ち際に、白い波が打ち寄せるように始まったダンス。時おり、きらっと光る個人のダンス。振付の相馬秀美によると、今回は振付を与えるだけではなく、どのように踊るかのイメージをダンサーの裁量に任せたという。その結果、ダンサーたちのモチベーションがあがり、驚くほど動きがよくなったとのこと。全体的にまとまりもよく、学生らしい溌剌さが引き立つ、生き生きとした作品だった。

9 魂宮時・加藤雅規・たけし『1+1+1=0』
客電もすべてつけ、照明や音楽を一切使わないシンプルさ。本来の自然な姿を素材とする魂宮時の作品を引き立てる。初の共演となる加藤雅規と、たけし、個性の違う三人。身体と身体が触れ合う瞬間、重さや力とともに、意思さえも受け渡し合っているようにもみえる。身体を組み合うたびに生まれてくるリズム。まるで、武道家が楽しんで組み手をしているようにもみえてくる。体がほぐれると、さらに動きに磨きがかかる。ところどころで冗談も飛び出し、観客から笑い声がもれる。思いがけない運動の展開をショーとしてみせてしまうのは、身体の働きや動きを知り尽した魂宮時ならではのパフォーマンスだと思う。

10 オブジェクトパフォーマンスシアター『ピタゴラスの乳』
演出家の木村繁の動く現代美術と評されるオブジェクトパフォーマンスシアター。銀色に光る棒で作られたオブジェのピラミッドは、ピタゴラスの図形、遊具であり、女の唇と変容を繰り返す。カチコチ時計の音、ぴよぴよヒヨコの鳴き声、艶めいた誘惑のメロディーなどたくさんの音が使用されている。衝立が閉じたり、開いたりすることで展開していくシーン。個性の強いダンサーたちは、表情が豊かで、台詞がなくても、ストーリーが思い浮かべることができる。引きずられても、舞台にたたきつけられても、ビクともしないオブジェの精巧さにも目を見張らされた。

11 生き音『DiDi』
明かりがつくと、ジングルベルを奏でるピアニストと、サンタ、サンタ!? そこに現れる七面鳥、女子たち、侍。気づけばバーチャル世界の真っ只中。唐突に始まるゲーム「DiDi」。舞台上を四方八方に飛び回り、「ディディディディディディ…チェスッ!にんじん!鶴舞!」一対一の勝負。次々とはき捨てられる関連性のない言葉。敗者たちは、舞台を降り、観客と同化する。彼らの笑い声は、客席の雰囲気も支配する。体感型パフォーマンスの後は、精神世界をさ迷うようなソロダンス。「DiDi」が意味する「死が解決する孤独」を相反するパフォーマンスで表した。(古田雅子)

<第3部>
12 鈴村由紀・杉町明子・pakistan brain/『サガスシマ』

電子音が混ざり合うステージで、鈴村と杉町は互いを意識しながら即興でパフォーマンスを披露する。さらに映像とノイズが空間の広がりを演出していて、ダンスとのコラボにおける不思議な場を完成させた。同じ動作をする二人の距離が少しずつ縮まってゆく。すると二人はおもむろに白いテープを床に貼り始めた。黒い床に次々と現れる白い線は、その線を境に空間を二つに分断してゆく。しかし、それを突き詰めていくと、今度は分断されたそれ自体がまた空間として立ち上がる。彼女たちのダンスはメビウスの輪のように思考を繰り返させる体験だった。そしてpakistan brainとのコラボは、これまでの二人のパフォーマンスとは異なる新しい方向性を見せてくれていた。

13 太めパフォーマンス『太めパフォーマンスのパヤパヤー』
ちょっぴり太めな二人は、重量感と軽やかさの相反する質感を持ち合わせた素敵なダンサーだ。緊張感が続くステージの中で、時折見せる彼女たちの笑顔は、会場の空気をふんわりしたものに変えた。日頃のガールズトークを思わせるような二人の動きは、恋する乙女という表現がぴったり。もちろんお化粧だってするし、お姫様だっこにも憧れるけど「重い!もうムリ」みたいなリアルさも持ち合わせていて面白い。これからどんな風に彼女たちが変化していくのか、ビジュアルも含めて期待したい。

14 はるみぶし&ひろ『一緒』
アコーディオンの静かな音色のなかで、パフォーマンスは始まった。彼女がいとおしそうに抱えていた大切なものは、彼女が手を広げた瞬間白く宙を舞い、ばらばらになった。愛する人との別れを連想させるストーリー展開。思い出をたどりながら、彼女は感傷にひたっている。失ったものへの悲しみにくれながらも力強く生きていこうとする彼女の姿にはとても惹き付けられるものがあった。

15 Water drops Contemporary Dance Company 『Birth』
コンテンポラリー色の強いダンスは、映像を盛り込むことでさらに視覚的要素を強化していた。生きるということ、泣けるということ、声を出さずに叫ぶということ、いのちということ・・・メッセージ性の強い言葉が続く。言葉が介在すると、どうしても意味やストーリーを求めてしまうが、そんなことはまず脇において、とにかく「感覚」で何かをつかんで欲しいという彼らの気持ちがよく伝わってきた。

16 afterimage『VHSとだけ印字されたFUNAI製ビデオデッキとそこから流れるイギリス人を母に持つハーフの女の子の刺激的スマイル』
あらわれた3人組の男たちは、黒のパンツにひざサポーターという姿で、いきなり私達をびっくりさせた。舞台上に持ってきた鞄の中に、衣装を入れ忘れてしまうというハプニングもさりげなくカバーするチームワーク。コンタクトインプロとエアロビに、コントの要素をたくみに織りまぜた楽しいパフォーマンスは、これまでのアフターイマージュとは違った新しい方向性を垣間見せた。(加藤さとみ)

第4部
17 タバマ企画『Tower』

地下二階にあるフォーラムIIは、吹き抜けになっていて、上の階から覗きみることができる。小ホールから、本日トップバッターを務めたGeonoriが観客を引き連れてやってきて、しばしタバマ企画のメンバーとセッションしている。彼らの演奏が落ち着くと、淡いオレンジのドレスを着た田畑真希が、地下一階からの階段を、風に揺れる花びらみたいに、ふわふわ舞い降りてきた。
善戝和也の生演奏に合わせて、道化のようにマスクを被ったダンサー田村嘉章が、コミカルな動きで登場。飛び跳ねたり、地面を転げまわる田畑。踊ることが楽しい、踊れることが嬉しいという純粋な気持ちが伝わってくるようだ。劇場とは違い、ダンサーの表情や、顔の角度、目線、指先やつま先の動きまで、間近で見ることができる公共スペース、フォーラム。田畑の振付の細部にまで及ぶこだわりが見てとれる。自然に心がウキウキ、リズムに乗って一緒に踊りたいと思われていた観客も多かったのではないだろうか。
カーテンコールでは、再度Geonoriの演奏も加わり、フォ-ラム全体が、明るく心地よい空気に包まれ、観客たちはいつまでもいつまでも拍手を送り続けた。(古田雅子)
(2011年2月19日 愛知県芸術劇場小ホール、愛知芸術文化センター地下2階フォーラム II)

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撮影:加藤光
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