ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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安井 友美 text by Tomomi Yasui 
[2010.11.10]
From Nagoya -名古屋-

荷捌き場という劇場ではない場所で繰り広げられたまことクラヴの動き

振付・ダンス/まことクラヴ 振付・演出/遠田誠『長者町線維街の日常』
あいちトリエンナーレ2010
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今回のまことクラヴの作品タイトルは『長者町線維街の日常』。婦人服などの企画・製造・販売を行っている繊維総合商社・丹羽幸(株)の荷さばき場が会場として選ばれた。
16時、愛知芸術文化センターのオープンスペース、フォーラム2で開演。約20分のパフォーマンスのあと、「次の会場は丹羽幸(株)荷さばき場」というビラを撒いて、まことクラヴの部員はフォーラムを飛び出していった。丹羽幸(株)は30分ほど前から開場し、荷さばき場に観客は案内された。
しかし入場してみると、そこにはまだ社員が残っていて作業をしている。服の検品や箱詰めなど、男性社員と女性社員が談笑しながら作業をし、客が入場しても急ぐ様子がない。「会社見学へようこそ」という社内アナウンスがあり開演を迎えるも、二人はそのまま動く様子もない。そこへ別の社員たちが、台車やコンテナにまことクラヴの部員を乗せ、荷物のように荷さばき場に運び込んだ。ここで丹羽幸の社員もこのパフォーマンスの演者だということに気づかされる。スーツ姿の社員とジャージ姿の部員とが同じ「会社」にいる違和感を、充分に活用したパフォーマンスがスタートした。
まことクラヴの部員と社員は一緒になって丹羽幸の社歌を合唱。社員が商品を詰める作業を淡々とこなす中、部員は人間には見えない妖精であるかのように、手伝いをしたり邪魔をしたりする。笑いの絶えない楽しい時間が過ぎていった。最後には、社員がまことクラヴの部員全員を、ダンボール箱に一人ずつ梱包してトラックに積み込んだ。トラックがクラクションを鳴らして出発すると「本日の業務終了」とばかりに演技が終了。部員が運び出されたため、残ったのが丹羽幸社員のみという異例のカーテンコールで幕が下りた。

丹羽幸の毎日の業務(=日常)に、まことクラヴのパフォーマンス(=非日常)が入り込んで出来る空間の歪みのようなものは、観客(もしかしたら丹羽幸(株)の社員の方々)、パフォーマーであるまことクラヴのメンバーそれぞれに新たな発想をもたらしたのではないだろうか。
社員が段ボールに商品を詰める手慣れた作業の様子は、正しいフォームがあるかのような無駄のない綺麗な動きで、荷詰め作業を見慣れない私にとっては「非日常的なパフォーマンス」に思えた。しかし、パフォーマンスを観ることを期待してやって来た人にとって、荷捌き場という劇場ではない場所で繰り広げられたまことクラヴの動きは、かえって「日常に近い当り前のこと」のように感じられたかも知れない。「日常」と「非日常」とが転換される場の中で、まことクラヴのメンバーたちは飄々と踊っていた。彼らにとっては、私たち観客の非日常である行為が日常である。「日常と非日常」の区分があいまいに感じられた不思議な時間だった。
(2010年9月4日、5日 愛知芸術文化センターフォーラム2~丹羽幸(株)ミクス館荷さばき場)

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撮影:上田和則、丸山武久
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