ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2009.11.10]
From Nagoya -名古屋-

ドラムとダンサーの競演、後藤千花ステップ・ワークスバレエ公演

上田遥:振付『ワークスコレクション』
『フレンチコネクション』『Beat generation』
後藤千花ステップ・ワークスバレエ

個性的な舞台作りで定評のある後藤千花ステップ・ワークスバレエ。今年の公演は、いつも以上にチャレンジャブルな作品が多く楽しい舞台だった。ステップ・ワークスバレエは、1996年以来、2〜3年ごとに上田遥に振付を委嘱してきたが、今年はその集大成と呼べるようなラインナップで、第1部から3部まで多彩な上田遥振付作品のオンパレードとなった。
まず、ステップワークスのダンサーの個性を生かしたという『ワークスコレクション』から。幕開けはバレエ団のプリマ中尾有里とゲスト出演の大貫勇輔による爽やかなパ・ド・ドゥ「ブルースカイ」。続く「2人はスター」では、ハイソックスに短パンの若手ダンサー堀百合と横井歩美がショースタイルのコミカルな振付でコケティッシュな愛嬌を振りまいた。「オーマイダーリン」では、徳山博士が、池田有花演じる新妻に振り回される三枚目のサラリーマンを好演。ラストは後藤が演じる美しい「女神の恋」で締めくくられた。
2001年に初演の『フレンチコネクション』は後藤が特にお気に入りという作品で、フランスのレビュー風の6作品から構成されている。「愛と勇気」は16名の女性ダンサーで踊られる。16脚の椅子と、ダンサーのオールドファッションの水着スタイルが、1920年代のお洒落でレトロなフランスを想起させる。シンプルだが、どこか遊び心のある動きが、女性たちの個性を導き出す。
ダンサーたちはシンメトリーな構成の中に、一体感と爽やかさを感じる上田のコンポラリー風の振付をとてもよく踊りこなしていた。
パリの夜の風景が映し出された舞台では恋人たちの時間が始まる。「うそつきな2人」では徳山博士とゲストの森高子が、「パリのミュゼット」では、12名の女性ダンサーがグレーのレオタードに赤・白・黒といったメリハリの利いたボトムスを纏って軽妙な踊りを繰り広げる。さらに3人の女性による「乙女達の居る風景」、吉村菜奈と梶田眞嗣「恋の季節」と穏やか、かつ清々しい場面が広がる。ラストは全員でのフィナーレ。一見無関係のようだが、どこかでそれぞれの物語が繋がっていて、様々な記憶が引き出されていくような構成にプロの振付家の力量を感じた。

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そして今回のメインプログラムとなった『Beat generation』。上田の息子でドラマーの上田樹が、終始生演奏でダンスと対峙する場面が最大の魅力のひとつ。
「ビートの目覚め」では、シンプルな黒の衣装の5人の女性と1人の男性が椅子を使って踊る。静寂さの広がる緊張感のある舞台に、わずかなドラムだけが響き渡る。身体の隅々にまで神経を張り巡らせていく後藤千花と徳山博士の姿が印象的なイントロダクションだ。
「インスティンクト(本能)」は、ゲストの大型新人・大貫勇輔によるソロ。大貫はダイナミックかつ精緻なダンスで名古屋の観客に身体の無限の可能性を実感させた。サバンナの動物を連想させる変幻自在の動き、素早く切れのある回転と跳躍。まさに身体から湧き出てくるリズムで本能のままに踊っているよう。
「クール」ではタイトルそのままに林葉子と徳山博士がパ・ド・ドゥを踊る。続く「シャーマン」は、中尾有里のソロ。とはいっても、上田のタブラの即興演奏との緊密なデュオとも言えよう。上田の激しく原始的なリズム、様子を窺うように上田に近づいていく中尾からは、ダンサーとしての本能とも感じとれる野生的なきらめきが溢れる。ダンスと音楽、2人の対峙する緊張の糸が目に見えるようで、中尾の新境地ともいえれう作品だろう。
後藤と大貫の「ブレス」は、文字通り静的な後藤と動的な大貫の息の合ったダンスが見所。打楽器とのコラボレーションは、音楽のリズムがダンサーを刺激する部分が表立って見えることが多いが、ここでは、身体とリズムそれぞれが刺激を与え合うその相関関係が視覚化されていて、とてもスリリングな作品となった。
(2009年10月17日 名古屋市芸術創造センター)

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撮影:中川幸作
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