ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2009.07.10]
From Nagoya -名古屋-

名古屋モダンダンスの歴史とガロッタの下で踊った倉知可英の現在

<KAYAKU NIGHT Vol.2>『カラダ ダカラ ダカラ カラダ』
奥田敏子 振付『3つの薔薇ノタンゴ』(「タンゴ」「ここに薔薇あらば」)
倉知外子、倉知可英 振付・出演『la memoire de la rose』
倉知可英 振付『鏡の中で・・・』  
倉知可英、ヤニック・ヒューゴン 振付・出演『if time pass』 
「 RAOUX 1998」振付・出演:倉知可英 
倉知可英 振付・出演『Untitled』
KAYAKU PROJECT   

異なるジャンルのアーティストが集まり、実験的なコラボレーションを行うアートイベント<KAYAKU NIGHT>と、コンテンポラリー・ダンスとモダンダンスの凝縮された公演<DANCE YARD >が、2夜連続、小劇場の円形舞台を会場に上演された。いずれも、ジャン・クロード・ガロッタの下で主要メンバーとして活躍をしてきた名古屋出身、在住の倉知可英が企画、振付、出演までこなした舞台。ご存知のとおり、ガロッタはコンテンポラリーダンスの普及の先駆けとなったフランス・ヌーベルダンスの旗手だ。

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倉知は2006年に帰国してからは、大叔母の奥田敏子の創設したオクダモダンダンスクラスターで活動しながら、07年には、ガロッタのカンパニー、エミュール・デュボワのヤニック・ヒューゴンとKAYAKU PROJECTを結成、様々な試みを行ってきている。
今回の公演は、奥田敏子の30回忌を記念した公演であると共に、この30年のカンパニーの軌跡と、そこからの新しいチャレンジを宣言するかのような意欲的なプログラムだった。
初日の<KAYAKU NIGHT>は、昨年からスタートした新プロジェクトで、異ジャンルのアーティストがヒエラルキーのないフラットな関係性のもと、ジャンルの境界を越えて、ひとつの作品を創りあげる実験の場を目指しているという。
今回の公演でも、名古屋市立大学芸術工学部の学生たち、Class de MIZUNOのメンバーが音楽、映像、空間デザインなどで参加したほか、舞台経験のない彼らが、パフォーマーとして、サイボーグを想像させるようなラバーの総タイツを頭から被って、舞台に登場し、ギコチナイ動きをみせるなど、斬新な試みが満載。上記の学生以外にも昨年に引き続き、昆野孝、松村遼、Mineya、Kana  Sonodaなど、多くの地元のアーティストたちが参加している。どのシーンもきっと彼らの希望をなるべく否定することなく、尊重しているのだろう。ゆえに作品としての一貫性がみられないところもあるが、それはこのプロジェクトの意図どおりというべきだろう。もし60年代のポストモダンダンスの時代であったらならば、ダウンタウンの小さなスタジオで行われているようなスタジオパフォーマンスだったのかもしれない。

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目まぐるしく移り変わる映像や様々な種類の音楽と声、質の異なる身体、そして、動き。なかでも強烈な印象を与えたのか、一畳分のスクリーンに映し出された映像の中の女性と三味線によるコラボレーションだ。スクリーンの中の年老いた異国の女性が一枚づつ服を剥ぎ取り、下着姿で自らの肌を擦りながら滑らかで美しい踊りを見せる。そこに重なる三味線が奏でる「いい日旅立ち」のメロディーが、不思議に調和する。数々の実験の中から時々きらりと光る創造の原石を発見したような印象的なワンシーンだ。
総合芸術としての舞台芸術の原点を探るかのごとく、拡げるだけ拡げた世界を、次にどこまで深く掘り下げていくことができるのか、その深化のほどを見届けてみたいと思う。

続く2日目は、倉知の大叔母、奥田敏子が築いた名古屋の現代舞踊の歴史を、現代まで手繰り寄せる試み。奥田のインタビューに応える声がスピーカーから流れてくる。そこに重なる若き日の彼女の写真。奥田が日本で初めてドイツのモデルネタンツを学んだ江口隆哉に弟子入りするいきさつが淡々と語られていく。そんな中、弟子入りから2年後に初めて創作をした奥田の代表作『タンゴ』を再現した倉知外子の「ここに薔薇あらば」が上演される。踊りの楽しさを発見したばかりの若き日の女の生き生きとした想いが蘇ってくるようだ。
続く『la memoire de la rose』は、さらにこの同じ音楽を使って、自分なりの作品に取り組んだという倉知可英の現代のタンゴ。外子の真っ赤なドレスとは対照的な黒のドレスで、現代の女性の苦悩も感じさせる。踊ることが純粋に楽しかった遠い時代と、望むと望まないとに関わらず、踊りの世界に生まれてしまった彼女自身の心の内を覗き込んでいるようだ。

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また、倉知の振付作品『鏡の中で・・・』と『Untitled』は、明瞭なリズムにシンプルな動きを重ねていきながら円形の舞台を生かした構成で工夫をみせる。
『if time pass』は、国内外のフィルム・フェスティバルで上演され、多くの賞も受賞しているくろやなぎてっぺいディレクションによる映像作品。倉知可英、ヤニック・ヒューゴンの踊りの軌跡を頭上から捉え、多様に加工を重ねることによって、ダンス空間の膨らみや空気感が鮮やかに浮かび上がってくる。ここでは、映像の後に、実際に2人が登場、映像との明瞭な対比を見せた。ほかに、ヤニック・ヒューゴンが演出に加わった『RAOUX』が再演された。
コンテンポラリーの本場フランスと日本、ひたすら身体と向き合うダンスと様々なジャンルが関わり合う複合芸術としてのダンス。この30年で得た時には相反する倉知のダンスへの想いを、追体験しているような2日間の公演だった。この地でダンスと向き合うことに決めた倉知可英の、驚きに満ちたこれからを期待していきたいと思う。
(2009年6月19日、20日 千種文化小劇場/写真(C)Kamu)

 

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【KAYAKU NIGHT Vol.2】
作品:「カラダ ダカラ ダカラ カラダ」
出演: 倉知可英、ヤニック・ヒューゴン、Mineya、永井涼太、赤池征範、阿部友紀子

【DANCE YARD 3】
3つの薔薇ノタンゴ 「タンゴ」「ここに薔薇あらば」「la memoire de la rose」
振付:奥田敏子、振付・出演:倉知外子、倉知可英
「鏡の中で・・・」振付:倉知可英   
「if time pass」振付・出演:倉知可英、ヤニック・ヒューゴン 
「 RAOUX 1998」振付・出演:倉知可英   
「Untitled」振付・出演:倉知可英ほか