ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu  
[2008.12.10]
From Nagoya -名古屋-

ナゴヤ・テアトル・ド・バレエ公演 深川秀夫版『ドン・キホーテ』

 バレエ団の枠を超え、愛知で活躍しているダンサーたちで創り上げるナゴヤ・テアトル・ド・バレエの今年の演目は、人気の『ドン・キホーテ』。愛知が生み出した世界の深川秀夫が、このナゴヤ・テアトル・ド・バレエ公演に振付けるようになってから今回で10回を迎えたというが、今回の作品も深川独自のエスプリやスピード感満載の華やかな舞台であった。
 プティパの振付をベースにしながらも、随所に深川らしいアイデアや組み込まれており、まさに深川秀夫版というのが相応しい。それを塚本洋子バレエ団はじめ、オーディションによって選ばれた深川の踊りを愛してやまないダンサーたちが踊るのだから、パワフルでないはずはない。

 キトリを演じたのは、主役デビューとなった塚本洋子バレエ団の青木里英子。恋人のバジルは、凛々しいセルゲイ・サボチェンコ。バレエ版の『ドン・キホーテ』では、ストーリーはキトリとバジルの恋物語を中心に展開し、ドン・キホーテ(岩本正治)やサンチョ・パンサ(幸田律)は旅の途中で彼らに出会った目撃者のような存在なのだが、この深川版では、さらにプロローグからラストまでキューピットが随所に登場し、全体を通じでキトリとバジルの恋を見守る重要な役どころとなっている。
 陽光溢れるバルセロナ。色彩豊かな舞台では、深川お得意のアクセントの効いた振付が連綿と繋がっていく。流れるように次々に連なっていく動きで息つく間もないダンサーたちも、与えられた振付を十分に自分のものにしている。キトリの父ロレンツォ(阿部隆)が娘の婿にと薦めるガマーシュ(高宮直秀)、人気者のエスパーダ(大寺資ニ)、そして踊り子メルセデス(南部真希)もダイナミックかつ個性的な踊りで好演、名古屋を代表するソリストたちの踊りが映える。キトリの友人を演じた植杉有稀、中村真子などの若手の成長も著しい。

 第2幕ジプシーのキャンプでは、ジプシーの男女(アンドレイ・クードリャと山本美樹子)が妖艶な踊りを舞い、大人の存在感で作品を引き締める。一方、ドン・キホーテがキトリを愛しのドルシネア姫と思い込む「夢の場」では、ドルシネア姫を山崎有紗が清楚かつ優雅に舞い、キューピッドの和田紗永子がコケティッシュでチャーミングな魅力を振りまく。ダンサーとその役柄のイメージがぴったりと重なり合う。ダンサーに合わせた振付と躍動感のある舞台を作ることに長けた深川の腕が冴え渡る。
 主役デビューとなった青木だが、心配はご無用。テクニシャン青木のバネの効いたジャンプやスピード感のある回転技はキトリのおてんば娘ぶりをさらに強調。演技も堂に入ったもので、ラストまでキトリの華やかさをアピールし、落ち着いたセルゲイ・サボチェンコのスマートなエスコートにも支えられ、キトリの大役を見事に果たした。
(2008年11月21日 愛知県芸術劇場大ホール)